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【30】雪解け
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「俺は初陣より前――この軍に入った時からミラーに気に入られて、昨晩のように戦争日の前日には必ず呼び出しがあった。亮には秘密にしていたが……その時からの付き合いなんだ」
「そう……なんだ」
自分が思っても見なかった現実を知り、頭がついていかなくなってしまった亮は返事もそこそこにただ空を見つめて樹の話に耳を傾けていた。
「それで昨日、いつものように部屋に行ったら――」
「……? 行ったら?」
「――俺には飽きたから亮に……乗り換えるって……そう……」
「ぼく……に?」
亮はドキリとした。
「そう……だ。ミラーは『少尉』だから士官の中でも下の下。まだ常人の部類だ。だからいいってわけでもないが――明日にはどうせミラー以上の脅威を見ることになる」
「もっと上官の――狂人に狙われる可能性があるんだもんね……僕」
「あぁ。だから少しでも俺は亮が危険に関わる時を遅らせたかったんだ……。だから……」
そこで一度深く深呼吸をして樹は息を整えて言葉を続ける。
「だから俺は……それを阻止しようと思ってミラーと――ごめん」
「――ごめんはもうやめよう。終わってしまった事は仕方ないし、僕ももう何も言わない。でも……ありがとう。今までずっと……ずっと」
「亮……。年下だから俺がしっかりしなくちゃいけねぇと思って守ってきたのは俺のワガママでしかなかったのに……。昨晩だってミラーの所に行く前に亮がもう止めてくれって言ってたのに……。そんな俺に『ありがとう』って言ってくれるんだな」
「本気でもう止めてほしいよ。でも樹のお陰で守られてきたのも事実だからね。心の底からありがとうって思っているよ」
「そう……なんだ」
自分が思っても見なかった現実を知り、頭がついていかなくなってしまった亮は返事もそこそこにただ空を見つめて樹の話に耳を傾けていた。
「それで昨日、いつものように部屋に行ったら――」
「……? 行ったら?」
「――俺には飽きたから亮に……乗り換えるって……そう……」
「ぼく……に?」
亮はドキリとした。
「そう……だ。ミラーは『少尉』だから士官の中でも下の下。まだ常人の部類だ。だからいいってわけでもないが――明日にはどうせミラー以上の脅威を見ることになる」
「もっと上官の――狂人に狙われる可能性があるんだもんね……僕」
「あぁ。だから少しでも俺は亮が危険に関わる時を遅らせたかったんだ……。だから……」
そこで一度深く深呼吸をして樹は息を整えて言葉を続ける。
「だから俺は……それを阻止しようと思ってミラーと――ごめん」
「――ごめんはもうやめよう。終わってしまった事は仕方ないし、僕ももう何も言わない。でも……ありがとう。今までずっと……ずっと」
「亮……。年下だから俺がしっかりしなくちゃいけねぇと思って守ってきたのは俺のワガママでしかなかったのに……。昨晩だってミラーの所に行く前に亮がもう止めてくれって言ってたのに……。そんな俺に『ありがとう』って言ってくれるんだな」
「本気でもう止めてほしいよ。でも樹のお陰で守られてきたのも事実だからね。心の底からありがとうって思っているよ」
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