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【26】涙の尋問

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「ちょっ……亮?」

 ボタボタと流れる涙を見て樹はオロオロとするだけだった。

「僕だって樹の事を守りたい! だけど、何でも秘密にされると……僕……どうにもできないじゃないかっ!」

「ごめ――」

「昨日もっ! 昨日もそうやって別れ際に謝るだけで――」

 また何も言わずに謝罪の言葉を言うだけになりそうだと思った亮はそれを阻止しようと話しきる前、それを遮って途中で口を開いた。

「樹……。僕、分かっちゃった。部屋に帰ってきたのに僕を避けるようにして壁際に突っ立ったままだったわけが……」

 樹は「分かった」と言われて体がビクッとなり、一瞬息が止まった。
 知られたくなかったのにという思いから――。

「わ、分かった……って……?」

「この臭い……何の臭いだか……僕は知っているよ。昨日はなかったこんな臭いを、プンプンとさせて帰ってきたら、そりゃ分かるよ……何があったかなんて」

 スッと背筋が寒くなるのを樹は感じる。

「昨日のミラー少尉のところに行く前、様子がおかしかったし……。まだ『仕事』してるの?」

「それは――違う…………」

「それ『は』?」

 ヒックヒックとしゃくりあげながら亮は問い詰める。
 ひとえに樹を守りたいという思いから……。

「それは違うって事はまた別の意味でってこと? ――っ! まさかっ! ミラー少尉とも愛し合って――」

 まさかという思いと嫉妬心から亮の手はワナワナと震えだした。

「違うっ‼ それこそない! 断じてない‼ 俺が好きなのは――愛しているのは亮だけだ! 大事な大事な亮以外をだなんて――あり得ないからっ‼」

 予想だにしなかったことを亮に言われ、怒りにも似た感情が湧いた樹は強く否定した。
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