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【21】手の平
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「ひゃっ、ひゃめ――っ!」
樹の拒絶の叫び声はミラーを興奮させてますます煽ってしまい、ブルっと震えた体には心地良いという感情が流れてゆく。
やがてそれは手の平に終着していき――頬を目掛けて振り下ろされた。
「ハァ……ハァ……。なんだろうな~ぁ、これ。すごくイイ……イイな!」
ミラーは樹の頭を髪ごとグワッシと掴むと持ち上げ、目を見ながら気味の悪い笑みを浮かべた。
「お前はやはりいいオモチャだ。軍に入ってから私が見初め、名無しのお前に付けた名をよく表している。『楽園』をもじった名の通り、お前は私に夢を与えてくれるな……」
「――俺には……俺には何でも……。だから……」
「だから……なんだ?」
「――お、お願いします。リョ――フィークスには手を……手をかけないでやってくだ、さい……。どうか……」
樹の必死な懇願にもミラーは何も思うことなぞなく嬉しそうに手を振り下ろした。
「そーだ、そーだ! 無花果だ! 楽園には無花果が付き物と、それにしたんだったな~ぁ。お前たちいっつもくっ付いてたし、美味そうな果実であったし……。フム……」
楽しげにケタケタと笑っていたミラーは何かを思い出したかのようにしばし考えだす。
「この様子じゃまだ食われてはいないだろうし……まだ上の者にもあやつの存在は見つかってはいないだろう。もう少し熟成するのを待つのも一興か――」
ミラーのその独り言は届かず樹は更に縋りつく。
殴られてキーンという耳鳴りが樹の中を木霊し、小さな音まではもう頭に届かなくなっていたのだ。
「まぁ……そうだな~。お前の私への献身次第といったところかな~ぁ」
樹の拒絶の叫び声はミラーを興奮させてますます煽ってしまい、ブルっと震えた体には心地良いという感情が流れてゆく。
やがてそれは手の平に終着していき――頬を目掛けて振り下ろされた。
「ハァ……ハァ……。なんだろうな~ぁ、これ。すごくイイ……イイな!」
ミラーは樹の頭を髪ごとグワッシと掴むと持ち上げ、目を見ながら気味の悪い笑みを浮かべた。
「お前はやはりいいオモチャだ。軍に入ってから私が見初め、名無しのお前に付けた名をよく表している。『楽園』をもじった名の通り、お前は私に夢を与えてくれるな……」
「――俺には……俺には何でも……。だから……」
「だから……なんだ?」
「――お、お願いします。リョ――フィークスには手を……手をかけないでやってくだ、さい……。どうか……」
樹の必死な懇願にもミラーは何も思うことなぞなく嬉しそうに手を振り下ろした。
「そーだ、そーだ! 無花果だ! 楽園には無花果が付き物と、それにしたんだったな~ぁ。お前たちいっつもくっ付いてたし、美味そうな果実であったし……。フム……」
楽しげにケタケタと笑っていたミラーは何かを思い出したかのようにしばし考えだす。
「この様子じゃまだ食われてはいないだろうし……まだ上の者にもあやつの存在は見つかってはいないだろう。もう少し熟成するのを待つのも一興か――」
ミラーのその独り言は届かず樹は更に縋りつく。
殴られてキーンという耳鳴りが樹の中を木霊し、小さな音まではもう頭に届かなくなっていたのだ。
「まぁ……そうだな~。お前の私への献身次第といったところかな~ぁ」
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