【R18】氷の世界で君への愛が生きる全てなのだと…

【20】反抗

「そんなにしんどいか？　エイデン」

　樹は返事なんてできずに虚ろにただ床を見つめるのみであった……。

「そんなにしんどいというなら……もう止めてやってもいい。ただ、あの若いの――お前と同じ日本人の血をひくあやつを連れてこい。私もそろそろ新しいオモチャに変えたいと思っていてねぇ」

　ニタニタと下卑た笑みを見せながらミラーは樹を挑発した。
　ちょっとした趣向を凝らした刺激を与え、今日はノリも悪く仕事をしない樹の尻に火をつけて面白くする為――ただそれだけのつもりだった。
　しかしどんなにボロボロな状態であろうとも、樹は聞き捨てならない話を耳にしてハッと正気に返る。

「あいつだけは――亮にだけは手を出すなっ！…………いで、ください……」

　咄嗟に語気鋭く拒絶の言葉を言い放ってしまうも上官にこれはヤバいと思い直し、すぐさま言い直すも恐怖から後に付け足すようにボソボソと。
　だが遅い――遅かった。

「な、な、なっ、生意気なっ！　私が誰だか分かってそんな口をきいているのか!?」

　もとより沸点の低い上官ではあったので普段は壊れものを扱うように気を付けていた樹も、この状況に置かされて亮のことを話題に出されたとなると理性が働かなかったのである。
　何とかなだめようと縋ってみるが……。

「ええい、放せっ！　私の興を削いだばかりか、禁じられた忌まわしき日本名を口にするなんぞ、真合衆国この国への冒涜者めっ‼」

　足にしがみ付く手を振りほどこうと振り回したミラーの腕が樹の頭にクリーンヒットする。
　一瞬白目をむいて倒れそうになるも、ここで気を失うわけにはいかないと樹は再び持ち直すのだった。