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【18】葛藤

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「――はい」

 力なく樹の口から出てくる微塵も思ってはいない同意の返事。

「毎度こうやって呼んでやっているんだから、もうちょっと愛想良くはできないもんか? エイデンよ」

 戦争日が決まると前日にはこうやってミラー少尉はいつも樹を呼びだす。
 明日からだと思うと気分が落ち着かなくて眠れないからだとか……。
 だが決して珍しい事ではなく、士官候補生以下の若い一般兵を戦争前夜に自室に呼んで情事にふけるのはよくあること。

 ミラーに至っては軍人の平均寿命が三十歳程度であるこの時代において二十八歳という微妙なお年頃というのも関係しているのだろう。
 死が間近にある不安、十代の頃に早々と少尉にまで上り詰めたかと思えば万年その階級のままで上がれない焦り。
 噂では、とある将官の情夫であったから一足飛びに昇進できたんだとかなんとか……。

「まぁいい……。今夜も私がまで付き合ってもらうぞ」

「分かって……います」

「じゃあ――」

 ミラーはズボンのファスナーをつまんで開け、布地に抑えられていた暴君を解放させた。

「ほら、口を開けろ」

 これまで何度もしてきた行為とはいえ、今日ばかりは拒絶したい本音と生きていく為にしなきゃならないという気持ちに挟まれて葛藤し、樹はまごついてしまっている。

「――ん? どうした? ほら開けろって……言っているだろ!!」

 いつもと違ってなかなか大きく口を開こうとしない樹に苛立ち、ミラーはガッと頬の辺りを掴んでこじ開けて自分のモノを無理矢理に突っ込んだ。

「んグッ……ゥググ……んゴッ」

 受け入れの覚悟も定まっていないのにされたその行為に意識が追い付かず、樹はちゃんと呼吸ができずに苦しくなった。
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