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【13】亮の笑顔

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「なぁ、亮……」

「ん?」

「もう一度、キスしても良いか?」

 樹の言葉は、今度は耳まで赤くさせた。

「なっ、なんだよ! 改まって。さっきはあんなに強引にしてきたクセにっ!」

「悪い……。俺も今回はいつも以上に不安みたいだ」

「……僕も参戦するから?」

「そうだな。うん。もし亮が目の前で殺されてしまったらと思うと……。いや、見えない場所での方が怖いな」

「そう……だね。死ぬ時は樹がそばにいる時が僕も良いな~」

「亮……」

「樹……」

 互いに名を呼び合うと磁石のように自然と顔を近づけあい、優しく唇同士が触れ合う。
 それが亮には何故か気恥ずかしく、照れながらフフッと笑ってしまった。

「さっきはあんなことまでしちゃってたのに……なんだか今度は照れちゃうね」

「あぁ……もう一度いいか?」

 そう言って樹は何かを求めるように亮の耳元で囁いた。

「――ひぁっ! う、うん」

 囁き声がくすぐったい。
 だが亮は更に求められたことに嬉しくなり、弾んだ声で返事をしたのだった。

「ぅんっ! そこは……あぁぁ」

「もう一度『唇に』とは言ってねぇぜ。俺は」

「ずるい……」

 樹はニッと笑ってチュッチュッと首筋に吸いつく。
 だがその心中は先程気付いた懸念でいっぱいであった。
 戦争の休戦時間、昂った精神、眠れない夜――。
 それでも翌日の為に休息をせねば体がもたないので無理にでも眠らなければ。

 そうはいっても戦地では難しいもので下っ端は苦労するものである。
 しかしより上に立つものほどその苦労は皆無であり、それ故に簡単な解決方法をもっているのだ。
 その方法の為に上官は若い兵ほど好んで自分の天幕に呼び、一晩閨を共にする。
 呼ばれれば断ることはできない――。
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