【R18】氷の世界で君への愛が生きる全てなのだと…

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

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【5】希望

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「下級国民、か……」

 その言葉を口にすると思い出すのはあの日。

「二人そろって市民権を得られたあの時を思い出すなぁ」

「そうだね……」

 高度な文明が栄耀栄華を極めていた時代は夢や幻と消え、遺伝子検査によって選ばれた優秀な人間だけが生きることを許された時代となったこの国で市民権は唯一の希望となっていた。
 生まれてから数年以内に行われる遺伝子検査は生きるか死ぬかの分かれ目だ。
 優秀だと判断されなければ即忘却都市へ。

 これが決められた数少ない食料でより多くの優秀な人間を生かす為に選ばれた手法、『新優生保護法』である。
 優秀と判断されれば外界より隔離された安全なドーム内にある楽園都市に住め、衣食住の保証された『上級国民』になれる。

 しかし劣等と判断されて捨てられても全員が死ぬわけでは無い。
 運よく誰かに拾われて養育され、過酷な忘却都市を生き残ってテストに合格すれば軍人となることができ、粗悪ながらも衣食住を与えられる『下級国民』の資格が得れるというシステムだ。

「この街じゃあ育ての親はだいたい管理売春をしようっていう輩だ。市民権を持たない連中は軍人相手に売春して食料のオコボレを貰うぐらいしか生きていける道はないからな……。ガキを育てるなんて酔狂なことをするなんざ――」

「ごめんね」

「ん?」

「子供の頃から僕にはさせられないからって、代わりにいつも……」

「あぁ……。いいんだ。亮だけはけがしたくないっていう――俺の我儘なんだよ。亮だけはキレイなままでずっといてくれたら、それで俺は――」

「いやだよ、僕は。樹だけが辛い思いをするなんて!」
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