【R18】氷の世界で君への愛が生きる全てなのだと…

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

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【4】忘却都市

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 それまでは幼馴染として対等でいたが、軍に入ってからの亮は遠慮がちになってしまっていた。
 二人が上司と部下という立場となったが故に少し関係性が変わったせいだろう。
 公の場では仕方ないにしてもだ、エイデンはその事を寂しく思って気にしているので自然とこうして強く言う事も増えてしまい、悩んでもいた。
 子供の頃は樹兄いつきニィと呼んで後ろについて来てたのにと……。

「無茶、するんじゃねぇぞ」

 勿論、自分が育った街でもあるし仕事で来たのも一度や二度ではないのだからこの街の――『忘却都市』の危険性は亮だってよく分かっているつもりだ。
 それ故に昔からよく知った仲である自分を殊更エイデンが心配してくれているのも分かっていた。

「そうだね……。一人だと危ない、よね」

「この街が『忘却都市』なんて巷で呼ばれている理由、分かってるだろ?」

「忘れ去られた街。存在しない街。……劣等遺伝子の廃棄場所」

 悲し気に亮は目線をチラリと横にやり、視界に入る飲んだくれて道に倒れている男たちを見てため息交じりにそう口にする。
 だがエイデンはそんな亮の様子にも気付かずに話を続けた。

「そうだ。大戦で俺たちの祖国である日本は敗れて消滅し、吸収合併した末にできた新たな国、真合衆国は街を名無しにした。要するにここは名があるに値しないゴミ溜めとされたんだ」

「下級国民にもなれなかった唾棄すべき存在の放逐場所……か」

「故郷といえども人間の住む場所じゃない、ここは。軍の中に居ても狙われやすい可愛い顔をしているのだから。もっと自覚しろよ、亮」

「――ごめん」

 エイデンは昔のように亮の頭をポンポンとするのだった。
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