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第29話 三者三様
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「なっ!? 罰なんて――」
「やむなき事情とはいえ、貴き方からのせっかくのお申し出をお断りしなければならないのです。罰を受けることは覚悟、できております。ですのでどうか、どうかその罰は私にだけに……」
お辞儀をしたままスラスラと出てきた言葉とは裏腹にハンナの肩は小刻みに震え、その言動のちくはぐさにユリシーズの胸は締め付けられるようだった。
娘を――そして赤ん坊を守ろうと、母親というには少し年若そうであるこの女性の命を懸けた覚悟になんともいえない苦しさを覚えたのだ。
「私は……いえ、そんなことは今はどうでも良いことです。それではあなた達は? どうするのですか」
「私たちは……そうですね。赦されるのであればご紹介いただいた村へと歩きで。運が良ければこの二人が揃って辿り着くことができましょう……」
ハンナの言葉にステラは驚いた。
「ハンナっ! あなた――」
「ハンナさん! それではいけません!」
二人からほぼ同時に荒ぶった声で名前を呼ばれた衝撃からハンナの背中にはヒヤリと冷たいものが走った。
と、同時に火のついたように赤ん坊が泣きだしてしまった。
高熱によってぼやけた意識の中、不機嫌にもならずに横たわっていたところに突然聞こえた大きな声。
赤ん坊にとっては驚きと共に不快と不安の混じった気持ちからだったのか、ステラが抱き上げて揺らすとすぐに泣きやんで大人しくなったのだ。
「ごめんなさい。私は……ここで罰を受けなければなら――」
「私は……私はそんなことをあなたに強いません。ハンナさんからすれば確かに私はそういう身になるのかもしれません。ですが、私は一言も身分の話をしていないでしょう?」
今度は赤ん坊のことを気にして大きな声にならないよう三人は大きく一つ息を吐き、気持ちを落ち着けてから話を続けた。
「――はい」
「なので今はそんなこと、関係ないのです。私からの申し出を断ったからといって、何があるわけでもありません。しかもこんな時に……。あなた達は三人揃ってあの村に行くべきです!」
「そうよ! ハンナ。ユリシーズ様はそんな酷いことをなさるはずないわ。それに、私はあなたがいないと旅なんて続けれないわ。何もできない私が新天地で新しい暮らしを始めるなんて……不安でたまらないもの。一緒に行きましょうよ!」
目からボロボロと涙をこぼしながら必死にハンナへと訴えるステラの姿にユリシーズは胸を掴まれた。
ユリシーズにとってこんなにも激しく感情をあらわにする女性を見るのは初めてだったのだ。
「ステラさ――ステラ。私はなんと、幸運な人間なのでしょうか。あなたにこんなにも思ってもらえて――。そしてユリシーズ様に、こんなにも温かく受け入れてもらえるだなんて――」
「やむなき事情とはいえ、貴き方からのせっかくのお申し出をお断りしなければならないのです。罰を受けることは覚悟、できております。ですのでどうか、どうかその罰は私にだけに……」
お辞儀をしたままスラスラと出てきた言葉とは裏腹にハンナの肩は小刻みに震え、その言動のちくはぐさにユリシーズの胸は締め付けられるようだった。
娘を――そして赤ん坊を守ろうと、母親というには少し年若そうであるこの女性の命を懸けた覚悟になんともいえない苦しさを覚えたのだ。
「私は……いえ、そんなことは今はどうでも良いことです。それではあなた達は? どうするのですか」
「私たちは……そうですね。赦されるのであればご紹介いただいた村へと歩きで。運が良ければこの二人が揃って辿り着くことができましょう……」
ハンナの言葉にステラは驚いた。
「ハンナっ! あなた――」
「ハンナさん! それではいけません!」
二人からほぼ同時に荒ぶった声で名前を呼ばれた衝撃からハンナの背中にはヒヤリと冷たいものが走った。
と、同時に火のついたように赤ん坊が泣きだしてしまった。
高熱によってぼやけた意識の中、不機嫌にもならずに横たわっていたところに突然聞こえた大きな声。
赤ん坊にとっては驚きと共に不快と不安の混じった気持ちからだったのか、ステラが抱き上げて揺らすとすぐに泣きやんで大人しくなったのだ。
「ごめんなさい。私は……ここで罰を受けなければなら――」
「私は……私はそんなことをあなたに強いません。ハンナさんからすれば確かに私はそういう身になるのかもしれません。ですが、私は一言も身分の話をしていないでしょう?」
今度は赤ん坊のことを気にして大きな声にならないよう三人は大きく一つ息を吐き、気持ちを落ち着けてから話を続けた。
「――はい」
「なので今はそんなこと、関係ないのです。私からの申し出を断ったからといって、何があるわけでもありません。しかもこんな時に……。あなた達は三人揃ってあの村に行くべきです!」
「そうよ! ハンナ。ユリシーズ様はそんな酷いことをなさるはずないわ。それに、私はあなたがいないと旅なんて続けれないわ。何もできない私が新天地で新しい暮らしを始めるなんて……不安でたまらないもの。一緒に行きましょうよ!」
目からボロボロと涙をこぼしながら必死にハンナへと訴えるステラの姿にユリシーズは胸を掴まれた。
ユリシーズにとってこんなにも激しく感情をあらわにする女性を見るのは初めてだったのだ。
「ステラさ――ステラ。私はなんと、幸運な人間なのでしょうか。あなたにこんなにも思ってもらえて――。そしてユリシーズ様に、こんなにも温かく受け入れてもらえるだなんて――」
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