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第23話 相談

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「ふふっ」

 思わずユリシーズの口からは笑みが漏れ出た。

「いや、失礼。こんな場所であまりにも上品に挨拶を返されたことに驚きのあまり――つい」

 優し気に微笑むユリシーズの視線を感じ、しまったという思いと恥ずかしさからステラの顔は真っ赤になってしまった。

「ステラさんはどこかの良家の方なので?」

「うっ……あっ……えっとぉ」

 返事に困って口篭もっているステラを見てハンナはハラハラとしていた。
 怪しまれやしないか、うっかりと何かを口走ってしまうのではと。
 そこですかさず助け船を出すことにした。

「そうではありませんが――似たようなものでしょうか。私たちはとある貴族筋のお邸にて住み込みで働かせていただいていたので、その時に見様見真似ですが教育も少し」

「あぁ――なるほど。私はてっきり……いえ、そうなのですね」

 ユリシーズは訝しげに目を細めてハンナをジッと見ながらしばし思案した。
 そしてうんうんと頷き、それ以上は聞こうとしなかったのだった
 子連れの親子がこんな場所で、何かしらの訳ありだろうとは予想がつく。
 それを今初めて顔を見たばかりの男に正直に話すはずもなく、ハンナがユリシーズのことを警戒視しているのは感じていたのだ。
 ならば誤魔化す為に嘘だって当たり前に吐くものだろう……と、言われるがままに今は飲み込むしかない。

「ところで移住先をと言っていましたが何か伝手が? 赤子を連れての旅は大変でしょう?」

「いえ、なにも……なにもないのです。ですが贅沢は求めませんし、ゆったりのんびりとした空気の田舎の方へ住みたいなと。ただ落ち着いて住める場所であれば何も……」

「えぇ。娘の言う通り田舎の方へ移住したいのです。街中は疲れたのでできるだけ離れた場所で……。ユリシーズ様、これもご縁と相談に乗ってくださいませんか? どこか良い所を知っていましたら教えてください」

「う~ん。そう言われましても……。赤子連れですしねえ」

 頭を搔きながらユリシーズは悩んだ。

「赤ん坊がいるとやはり、難しいですか?」

「一応、ひとつ思い当たる場所はありますが……しかし……場所がね~」

「場所……ですか?」

 ステラは首を傾げた。

「子育てにもいい場所――ではあると思うのですが、そこは陸の孤島とも言われてまして。赤子連れですとそこまでの道のりが困難かと」

 ハンナは『陸の孤島』と聞いてハッとする。

「もしやそこは……流刑地とされる場所ではありませんか? でなければ『陸の孤島』だなんて」

 何か嫌な予感がしたハンナは怖々とユリシーズに尋ねてみるが……。

「い、いや! 違いますよ! そこは心配なさらないでください」
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