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結ばれるとき・後編(本編52話省略分ー10)
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ヴァレンティーナの身中から、ガルテリオの指が抜かれていった。
そのあと脚のあいだに感じたガルテリオの体温が、火傷してしまいそうに熱い。
行為を始める前からしていた動悸は、今もしている。
でももう色んな意味の入り混じった複雑な動悸では無くなっていた。
(ガルテリオはこれから私の『弟』じゃなくなるのね)
本音を言ったら、ちょっと寂しい気持ちもある。
でもそれ以上に胸が高鳴って、動悸がしている。
(私、結ばれるのね……愛した人と。今になって思えば、『初恋の人』と)
ガルテリオの三度目の台詞が聞こえた。
「痛かったら言ってください」
「ええ」
と答えた。
ヴァレンティーナを片腕で抱き締めたまま、ヴァレンティーナの様子をうかがいながら、ゆっくりガルテリオが押し入ってくる。
(あ、痛い……)
と思ったが、口にも顔にも出さなかった。
よく慣らしてくれたお陰で我慢することに苦痛を感じない程度だったし、身体の中がガルテリオでいっぱいに満たされて、痛みなんてどうでも良くなるような幸福に包まれる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ガルテリオ。あなたの好きにしてっ……?」
そんな気分になる。
「しています」
そう答えたガルテリオは、やっぱり優しい。
「『マストランジェロ王家男子家訓の書・第四巻』1頁1行目『本能に忠実になるあまりにケダモノ化するなど以ての外。彼女のためにどこまでも理性を保つべし』……僕は泣けてきます、ベルナデッタ女王陛下」
両腕でヴァレンティーナを抱き締めて、傷付けないようゆっくり腰を動かしていく。
でもその身体も、その中も、とてもやわらかく出来ていて、壊してしまわないか不安を覚えながら、もう一度「大丈夫ですか?」と訊いた。
「少しでも痛かったら止めるので言ってください」
「平気よ」
と言葉通りの微笑が、暗闇の中に浮かんだ。
「気にしないで続けてほしいわ、ガルテリオ」
「スィー」と承知した。
ヴァレンティーナの様子に合わせて、腰の動きを速めていく。
改めて、こんな風に感じる。
(これは夢か、幻か……)
現実だ。
さっきは絶望に落とされたが、物心ついた頃から恋し、愛してきた神の最高傑作の天使と、今たしかに結ばれている。
大人になってきてからは毎晩夢見たように、この腕で、身体で抱いている。
波打つ金糸のような髪も。
澄んだ蒼の瞳も。
珠のような肌も。
艶っぽい唇も。
小鳥の囀りのような声も。
その母ヴィットーリアのように、芸術品と見紛う身体も。
(今すべて、僕の腕の中にある)
鼻の奥が、つんと痛くなった。
「えっ…? ガルテリオっ……?」
ヴァレンティーナが、心配そうにガルテリオの頬に手を当てた。
「心配しないでください、大丈夫です」
そう言って笑顔を見せ、込み上げてきたものを飲んだ。
でも、ヴァレンティーナの火照った頬の上に落ちた。
「ただ、幸せなだけ」
「……ええ、そうね」
そう言って続いて笑顔を見せたヴァレンティーナの蒼の瞳からも、ダイヤモンドみたいな涙が落ちた。
「私も幸せよ、ガルテリオ。ありがとう……私、女性に生まれて来て良かったわ」
その顔を包み込んでバーチョする。
愛しくて、奪い合って、止まらなくなった。
そのうち身中にあるガルテリオに異変を感じたとき、そろそろ終わるのだと察した。
「申し訳ありません、ティーナ殿下。あの、少しだけ……」
「ええ、気にしないでガルテリオ。むしろ最後くらい、あなたの好きにされてみたいわ」
「スィー」
と承知したガルテリオだが、この鋼みたいな身体で好き勝手本能のままに動くのはやっぱり不安なので、多少押さえつつ。
ヴァレンティーナの要望に従い、それまで抑えていたものを解放する。
突如身体に強い刺激が走って、ヴァレンティーナの身体がたちまち反り返る。
不思議なもので、元夫にこういう風にされるのは苦痛でしかなかったのに、今胸にあるのはきゅんとするようなときめきだった。
「ガルテリオっ……!」
逃がさないよう、その首を抱き締める。
元夫と夫婦だったときは、子供を作ることは義務で、最大の仕事だった。
子供は純粋に好きだし、自分の子を欲しいとも思うが、元夫の子が欲しかったかと訊かれたら分からない。
でも今、ガルテリオの子供を心から欲しいと思う。
「スィー」
ヴァレンティーナの気持ちが伝わったのか、一言そう返したガルテリオは迷わなかった。
最後ヴァレンティーナの奥の方まで入ってくると、お腹の中にあたたかいものが広がっていった。
しばしのあいだ抱き合ったまま呼吸を整えて、もう一度バーチョを交わす。
「ふふ」とくすぐったい笑い声が響いた暗闇の中には、2つの幸福の笑顔が浮かんでいた。
――翌朝、早朝5時半。
30分後の6時から朝餉前の鍛錬があるガルテリオが、ヴァレンティーナのレットの中で目を覚ます。
腕の中にはヴァレンティーナがいて、目前にあるその天使の寝顔を見つめていると、静かに鼓動が上がっていく。
「おはようございます」
起こさないよう小さく小さく囁いて、そっと口付けた。
その華奢な肩が出ていたので、毛布を顔の上まで掛け直す。
――が、ふと魔が差した。
おそるおそる、そーっとコペルタを捲ってみる。
「――Oh……!」
昨日フラヴィオの靴を顔面に食らった際に破裂した鼻の穴の毛細血管が完治しておらず、再び血が流れ出してしまう。
「こ、神々しい…! 目が潰れるっ……!」
そしてバレる。
「き……きゃあっ! やだ、ガルテリオ!」
と目を覚ましたヴァレンティーナが真っ赤になって、捲られていたコペルタを首まで引っ張り上げた。
「も、申し訳ありません、申し訳ありませんっ…! 小童には早過ぎましたっ……!」
「き……昨日の今日で言う台詞?」
と、ヴァレンティーナが恥ずかしそうに目を逸らすと、ガルテリオが嬉しそうに「ふふふ」と笑って抱き締めた。
「ティーナ殿下」
「あ」
「え?」
「ガルテリオ、私のこと『殿下』って付けないで呼んでみて?」
「いや、しかしそれは……」
と戸惑ったガルテリオに、ヴァレンティーナが「お願い」と少し口を尖らせた。
なので、従う。
「では……ティーナ」
ヴァレンティーナが「ふふ」と頬を染めた。
「私、こっちがいいわ」
「そうですか。では……ティーナ?」
「なぁに?」
と、ヴァレンティーナがガルテリオに抱き付くと、それはこう問うてきた。
「オルキデーア石がいいですか?」
「え?」
「指輪」
とガルテリオが優しい微笑を浮かべる。
どきっとした。
「な…なんでもいいわ、オルキデーア石でも、他の石でも、なんでも嬉しいっ……」
「じゃあ、ディアマンテにしようかな。うちの国には無いから、他国から買ってきて」
「わざわざ? どうしてディアマンテ?」
とヴァレンティーナが問うと、ガルテリオが「透明だから」と答えた。
「オルキデーア石は赤・青・紫の三色と、それらが淡くなったピンクや水色、ライラックなどがありますが、どれにしろ色が付いています」
「ええ、そうね」
「もちろん、どれもティーナが身に付ければ素敵です。でも、僕の中のあなたは真っ白で、透明だから。だから、ディアマンテ」
ヴァレンティーナの頬が染まる。
「ガルテリオって、私がどう見えているの?」
「そのまんま。真っ白で、穢れの無い天使。僕の女神」
とガルテリオがヴァレンティーナにバーチョしていると、戸口から小さく物音が聞こえた。
振り返ると、扉にしがみ付くようにしてベルが立っている。
「も、申し訳ございません、お邪魔しましたっ……!」
と言いながらも中へ入ってくるその顔は赤く、2人の顔を交互に見ながらにやけている。
「おめでとうございます。左様でございますか、昨夜フラヴィオ様がお二人のご結婚をお認めになったとお聞きし、もしやと思いましたが……やはりでしたか、やはり昨夜ここは愛の巣でございましたか」
と口を両手の指先で塞いで「ふふふ」とくすぐったそうに笑うベルを見て、ヴァレンティーナが赤面した。
「や、やめてよ、ベルっ……」
「申し訳ございません」
と咳払いをしたベルが、ガルテリオへと顔を向ける。
「結婚式は7月のアクアーリオ戦が終わり、落ち着いてから盛大に挙げるのがよろしいかと」
「スィー、女王陛下。ディアマンテもアクアーリオ戦が終わってから買いに行きます」
「それまでジル様には黙っておいた方がよろしいかもしれませんね」
「ああ、うるさいからな、あいつ」
「喧嘩しちゃ駄目よ?」
とヴァレンティーナが眉を吊り上げてガルテリオを見ると、それは「スィー」と承知した。
そのあとすぐデレて、ヴァレンティーナの唇に吸い付いていく。
「すでに新婚さんですねぇ」
とベルに呆れた風に笑われ、ヴァレンティーナが恥ずかしそうに「駄目」とガルテリオの胸を押す。
誤魔化すように、「それで」と話を変えた。
「他に私に用があって来たのではないの、ベル?」
「おっと、そうでした。ティーナ様、こっちでしばらく採寸していらっしゃいませんでしたよね?」
「ええ、そうね。数年はしていないわね……あ、そっか。来月は私とトーレの誕生日だから、パラータ用の衣装を作るのね。どういうのにするか、急いで考えなきゃ」
「スィー。また、ガルテリオ様もです。というか、皆様に新しい衣装を誂えていただこうかと」
2人が「え?」と小首を傾げた。
「来月の頭――1498年6月1日のティーナ様20歳のお誕生日、並びにトーレ6つのお誕生日を記念して、フェーデ様が親族の集合絵を描いてくだることになりました」
そのあと脚のあいだに感じたガルテリオの体温が、火傷してしまいそうに熱い。
行為を始める前からしていた動悸は、今もしている。
でももう色んな意味の入り混じった複雑な動悸では無くなっていた。
(ガルテリオはこれから私の『弟』じゃなくなるのね)
本音を言ったら、ちょっと寂しい気持ちもある。
でもそれ以上に胸が高鳴って、動悸がしている。
(私、結ばれるのね……愛した人と。今になって思えば、『初恋の人』と)
ガルテリオの三度目の台詞が聞こえた。
「痛かったら言ってください」
「ええ」
と答えた。
ヴァレンティーナを片腕で抱き締めたまま、ヴァレンティーナの様子をうかがいながら、ゆっくりガルテリオが押し入ってくる。
(あ、痛い……)
と思ったが、口にも顔にも出さなかった。
よく慣らしてくれたお陰で我慢することに苦痛を感じない程度だったし、身体の中がガルテリオでいっぱいに満たされて、痛みなんてどうでも良くなるような幸福に包まれる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ガルテリオ。あなたの好きにしてっ……?」
そんな気分になる。
「しています」
そう答えたガルテリオは、やっぱり優しい。
「『マストランジェロ王家男子家訓の書・第四巻』1頁1行目『本能に忠実になるあまりにケダモノ化するなど以ての外。彼女のためにどこまでも理性を保つべし』……僕は泣けてきます、ベルナデッタ女王陛下」
両腕でヴァレンティーナを抱き締めて、傷付けないようゆっくり腰を動かしていく。
でもその身体も、その中も、とてもやわらかく出来ていて、壊してしまわないか不安を覚えながら、もう一度「大丈夫ですか?」と訊いた。
「少しでも痛かったら止めるので言ってください」
「平気よ」
と言葉通りの微笑が、暗闇の中に浮かんだ。
「気にしないで続けてほしいわ、ガルテリオ」
「スィー」と承知した。
ヴァレンティーナの様子に合わせて、腰の動きを速めていく。
改めて、こんな風に感じる。
(これは夢か、幻か……)
現実だ。
さっきは絶望に落とされたが、物心ついた頃から恋し、愛してきた神の最高傑作の天使と、今たしかに結ばれている。
大人になってきてからは毎晩夢見たように、この腕で、身体で抱いている。
波打つ金糸のような髪も。
澄んだ蒼の瞳も。
珠のような肌も。
艶っぽい唇も。
小鳥の囀りのような声も。
その母ヴィットーリアのように、芸術品と見紛う身体も。
(今すべて、僕の腕の中にある)
鼻の奥が、つんと痛くなった。
「えっ…? ガルテリオっ……?」
ヴァレンティーナが、心配そうにガルテリオの頬に手を当てた。
「心配しないでください、大丈夫です」
そう言って笑顔を見せ、込み上げてきたものを飲んだ。
でも、ヴァレンティーナの火照った頬の上に落ちた。
「ただ、幸せなだけ」
「……ええ、そうね」
そう言って続いて笑顔を見せたヴァレンティーナの蒼の瞳からも、ダイヤモンドみたいな涙が落ちた。
「私も幸せよ、ガルテリオ。ありがとう……私、女性に生まれて来て良かったわ」
その顔を包み込んでバーチョする。
愛しくて、奪い合って、止まらなくなった。
そのうち身中にあるガルテリオに異変を感じたとき、そろそろ終わるのだと察した。
「申し訳ありません、ティーナ殿下。あの、少しだけ……」
「ええ、気にしないでガルテリオ。むしろ最後くらい、あなたの好きにされてみたいわ」
「スィー」
と承知したガルテリオだが、この鋼みたいな身体で好き勝手本能のままに動くのはやっぱり不安なので、多少押さえつつ。
ヴァレンティーナの要望に従い、それまで抑えていたものを解放する。
突如身体に強い刺激が走って、ヴァレンティーナの身体がたちまち反り返る。
不思議なもので、元夫にこういう風にされるのは苦痛でしかなかったのに、今胸にあるのはきゅんとするようなときめきだった。
「ガルテリオっ……!」
逃がさないよう、その首を抱き締める。
元夫と夫婦だったときは、子供を作ることは義務で、最大の仕事だった。
子供は純粋に好きだし、自分の子を欲しいとも思うが、元夫の子が欲しかったかと訊かれたら分からない。
でも今、ガルテリオの子供を心から欲しいと思う。
「スィー」
ヴァレンティーナの気持ちが伝わったのか、一言そう返したガルテリオは迷わなかった。
最後ヴァレンティーナの奥の方まで入ってくると、お腹の中にあたたかいものが広がっていった。
しばしのあいだ抱き合ったまま呼吸を整えて、もう一度バーチョを交わす。
「ふふ」とくすぐったい笑い声が響いた暗闇の中には、2つの幸福の笑顔が浮かんでいた。
――翌朝、早朝5時半。
30分後の6時から朝餉前の鍛錬があるガルテリオが、ヴァレンティーナのレットの中で目を覚ます。
腕の中にはヴァレンティーナがいて、目前にあるその天使の寝顔を見つめていると、静かに鼓動が上がっていく。
「おはようございます」
起こさないよう小さく小さく囁いて、そっと口付けた。
その華奢な肩が出ていたので、毛布を顔の上まで掛け直す。
――が、ふと魔が差した。
おそるおそる、そーっとコペルタを捲ってみる。
「――Oh……!」
昨日フラヴィオの靴を顔面に食らった際に破裂した鼻の穴の毛細血管が完治しておらず、再び血が流れ出してしまう。
「こ、神々しい…! 目が潰れるっ……!」
そしてバレる。
「き……きゃあっ! やだ、ガルテリオ!」
と目を覚ましたヴァレンティーナが真っ赤になって、捲られていたコペルタを首まで引っ張り上げた。
「も、申し訳ありません、申し訳ありませんっ…! 小童には早過ぎましたっ……!」
「き……昨日の今日で言う台詞?」
と、ヴァレンティーナが恥ずかしそうに目を逸らすと、ガルテリオが嬉しそうに「ふふふ」と笑って抱き締めた。
「ティーナ殿下」
「あ」
「え?」
「ガルテリオ、私のこと『殿下』って付けないで呼んでみて?」
「いや、しかしそれは……」
と戸惑ったガルテリオに、ヴァレンティーナが「お願い」と少し口を尖らせた。
なので、従う。
「では……ティーナ」
ヴァレンティーナが「ふふ」と頬を染めた。
「私、こっちがいいわ」
「そうですか。では……ティーナ?」
「なぁに?」
と、ヴァレンティーナがガルテリオに抱き付くと、それはこう問うてきた。
「オルキデーア石がいいですか?」
「え?」
「指輪」
とガルテリオが優しい微笑を浮かべる。
どきっとした。
「な…なんでもいいわ、オルキデーア石でも、他の石でも、なんでも嬉しいっ……」
「じゃあ、ディアマンテにしようかな。うちの国には無いから、他国から買ってきて」
「わざわざ? どうしてディアマンテ?」
とヴァレンティーナが問うと、ガルテリオが「透明だから」と答えた。
「オルキデーア石は赤・青・紫の三色と、それらが淡くなったピンクや水色、ライラックなどがありますが、どれにしろ色が付いています」
「ええ、そうね」
「もちろん、どれもティーナが身に付ければ素敵です。でも、僕の中のあなたは真っ白で、透明だから。だから、ディアマンテ」
ヴァレンティーナの頬が染まる。
「ガルテリオって、私がどう見えているの?」
「そのまんま。真っ白で、穢れの無い天使。僕の女神」
とガルテリオがヴァレンティーナにバーチョしていると、戸口から小さく物音が聞こえた。
振り返ると、扉にしがみ付くようにしてベルが立っている。
「も、申し訳ございません、お邪魔しましたっ……!」
と言いながらも中へ入ってくるその顔は赤く、2人の顔を交互に見ながらにやけている。
「おめでとうございます。左様でございますか、昨夜フラヴィオ様がお二人のご結婚をお認めになったとお聞きし、もしやと思いましたが……やはりでしたか、やはり昨夜ここは愛の巣でございましたか」
と口を両手の指先で塞いで「ふふふ」とくすぐったそうに笑うベルを見て、ヴァレンティーナが赤面した。
「や、やめてよ、ベルっ……」
「申し訳ございません」
と咳払いをしたベルが、ガルテリオへと顔を向ける。
「結婚式は7月のアクアーリオ戦が終わり、落ち着いてから盛大に挙げるのがよろしいかと」
「スィー、女王陛下。ディアマンテもアクアーリオ戦が終わってから買いに行きます」
「それまでジル様には黙っておいた方がよろしいかもしれませんね」
「ああ、うるさいからな、あいつ」
「喧嘩しちゃ駄目よ?」
とヴァレンティーナが眉を吊り上げてガルテリオを見ると、それは「スィー」と承知した。
そのあとすぐデレて、ヴァレンティーナの唇に吸い付いていく。
「すでに新婚さんですねぇ」
とベルに呆れた風に笑われ、ヴァレンティーナが恥ずかしそうに「駄目」とガルテリオの胸を押す。
誤魔化すように、「それで」と話を変えた。
「他に私に用があって来たのではないの、ベル?」
「おっと、そうでした。ティーナ様、こっちでしばらく採寸していらっしゃいませんでしたよね?」
「ええ、そうね。数年はしていないわね……あ、そっか。来月は私とトーレの誕生日だから、パラータ用の衣装を作るのね。どういうのにするか、急いで考えなきゃ」
「スィー。また、ガルテリオ様もです。というか、皆様に新しい衣装を誂えていただこうかと」
2人が「え?」と小首を傾げた。
「来月の頭――1498年6月1日のティーナ様20歳のお誕生日、並びにトーレ6つのお誕生日を記念して、フェーデ様が親族の集合絵を描いてくだることになりました」
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