上 下
10 / 51

身体測定ー10

しおりを挟む
「おや、本当だったかい、ハナちゃん」

 とピエトラは言うと、脱いでいたヴェスティートを着て戸口へと向かって行った。扉を開けるとそこには、フラヴィオが立っている。

「ほ、ほらな? 言っただろ? ベルの測定は、フラビーがひとりでするんだって。だから、あたいらは先に朝餉を食べてようよ。な?」

 とハナが、「ほらほら!」と女たちを脱衣所から押し出していく。

 最後に残ったハナが出て行く寸前、ベルに向かって親指を立てる。

(――ああ、ハナっ…! あなたはやはり、私の親友でございますっ……!)

 と感動に包まれたベルの栗色の瞳から、涙が滝のように溢れ出す。

 ハナはフラヴィオの顔を見上げて目で何か伝えると、「じゃ、またあとで」と脱衣所から出て行った。

(大丈夫だ、ハナ。余に任せろ)

 とフラヴィオは脱衣所に入り、誰も入って来られないように鍵を閉めて、ベルの下へと向かって行く。

 辿り着く前に、美しい立ち姿でいたそれが駆け寄って来て、胸にしがみ付いた。

「フラヴィオ様っ……!」

「また気にする必要のないことを気にしていたな?」

 とフラヴィオが頭を撫でると、ベルが「だって」と声高になった。

「私だけなのですっ……私だけ、成人天使の中で胸回りが70cm台なのです! 絶対、私だけ80cmも無いのです! まだ未成年のティーナ様だって80cmだったのに、私だけ! アヤメ殿下にはちょっと期待してたのに、やはり私だけございます! 申し訳ございません、フラヴィオ様! 伝説の酒池肉林王のオンナの胸回りが貧相にも70cm台だったことが後人にバレてしまうやもしれません!」

「意味分からぬことを言って謝るんじゃない。大体、測る前から『絶対』だなんて決め付けたら駄目だろう。最近、乳房がぷくっとして来たではないか」

「そうですが、どうせベルナデッタの乳房はまだ80cmも無いのですっ……!」

 フラヴィオは「大丈夫だ」と言ってもう一度栗色の頭を撫でると、ベルの簡素な黒のヴェスティートを脱がしていった。

 華奢な太腿に装備しているコルテッロ4本と短剣も外していく。

「さ、測定なのだアモーレ」

「胸回りだけ測らないでくださいっ……!」

 フラヴィオはもう一度「大丈夫だ」と言うと、小さな拳で瞼を擦っているベルを抱っこした。

 身長を測る柱の前に連れて行って、か細い右手首を掴み、挙手させる。

「えーと、何番だ? 12?」

「13です」

「13番! 宰相天使ベルナデッタ・アンナローロです」

 とフラヴィオが裏声を出し、ベルに代わってその自己紹介をする。

「天使番号は7番。天使軍の偉大なる元帥です。趣味は、愛しのフラヴィオに愛でてもらうことです!」

「富裕層の商人相手に悪徳商売し、国庫金を稼ぐことでございます」

「コラ」

 と思わず地声になったフラヴィオが、また裏声に戻る。

「特技は、使用人としての全ての仕事と、スカッキ、絵画、楽器演奏、勉強、クロスボウバレストラ、コルテッロ投げ、料理長から習った対敵用の包丁技など数え切れないほどある天才ベルナデッタですが、一番の特技は百戦錬磨の酒池肉林王を泣かせることです!」

「商売相手の手持ちの金品すべて絞り取ることでございます」

「オイ」

 とまた地声になるが、再び裏声で続ける。

「初恋は、フラヴィオです! 好みの男も、当然フラヴィオです! フラヴィオ以外の男は愛せません! フラヴィオのためにベルナデッタは生まれ、ベルナデッタはフラヴィオのために生きるのです!」

「スィー」

「ふふふ」

 と、挙手させていた右手の甲と、濡れた瞼にバーチョする。

 小さな身体を抱き締めて、桜の花弁ような唇にも口付けたら、人形のもののように小さな足が浮いた。

 国王フラヴィオ・マストランジェロの補佐その3――宰相で、天使軍の元帥で、王女の侍女でもある7番目の天使ベルナデッタ・アンナローロ(満17歳)は――

 5歳からの約10年間、とある貴族の家で奴隷にされていた。

 フラヴィオが32歳の誕生日パレードパラータで見つけた際には、着飾った民衆の中でひとり襤褸ぼろを纏い、栗色の髪は散切り。

 立っているのが不思議なくらい痩せており、表情は『無』で、死んだ魚のような目をしていた。

 そのときから、その繊細な顔立ちは酒池肉林王の碧眼には隠し切れていなかったが、自身を奈落の底から救ってくれた主フラヴィオに対して生涯の忠誠を誓った日以降、日に日に美しくなっていった。

 小さな顔の中に、綺麗な二重瞼の目と長い睫毛、生命力の漲った栗色の瞳。

 細い筋の通った繊細な鼻に、桜の花弁のような唇。

 散切りだった頭は、前髪を眉の高さで、後ろ髪を顎の高さで切り揃えた。人形のような顔に、これが良く似合う。

『無』だった表情も、フラヴィオのために生き、フラヴィオと共に過ごし、フラヴィオに愛されているうちに徐々に取り戻し、今も基本の表情は『無』であるものの、すっかり笑顔が上手になった。

 特にフラヴィオといるときは、とてもとても愛らしい笑顔を見せる。

 それは女の笑顔を愛し、また現在この天使を溺愛している酒池肉林王にとって至宝だった。

 その中身は天使軍の中で誰よりもフラヴィオに忠実で、フラヴィオのためなら、たとえ火の中、水の中、槍の中。

 天使はただ『力の王』や『力の王弟』、『人間卒業生』に守られ、いつも笑顔を咲かせてくれていればそれで良かったのに、フラヴィオのために手を血で汚してしまった。

 そして、戦やら罪人の処刑やらで、確実に地獄に行くだろうフラヴィオに付いて来くつもりだ。

 天使は天国に行くべきで、そんなことさせたくないフラヴィオとしては勘弁して欲しかったが、それと同時に深く愛さずにはいられない女だった。

 最愛の女神――妻を亡くしたフラヴィオは今、この強き心を持つ天使に支えられて生きている。

 でも、無茶をされてはフラヴィオの寿命が縮む一方なので、複数ある天使の仕事の中でも、『生きること』がベルの最大の仕事になっている。

 それから『100歳超えの熟女になること』もフラヴィオと約束した。

 また、ベルは故・王妃ヴィットーリアとも約束をしていて、それはヴィットーリアがやり残した自身の仕事――『フラヴィオの最期を膝枕で看取ること』だった。

 ちなみに、フラヴィオに怒られる故に口に出しては言わないが、夢は『フラヴィオが世界征服すること』。

 でもそのフラヴィオは真っ直ぐで、善良で、それが出来る力を持っていながらもする気が無く、あくまでも夢に終わるらしい。

 だから現在、宰相天使ベルは、せめてもとカンクロ国という大国を手に入れようと画策している。

「おっと、身体測定だった」

 とフラヴィオはベルから唇を離すと、その両手を身体の脇にくっ付けて、しゃんと直立させた。

「身長は153.2cmだな」

 ベルの小さな唇が尖る。

「思うように伸びないのです」

「良いのだ、愛らしくて」

 とフラヴィオはベルの栗色の頭を撫でると、抱っこして天秤に運んでいく。

「体重は39kgか。元は30kg無かっただろうから、それを思えばずいぶんと成長したな」

 今度は恥ずかしそうに頬を染めた。

「大人の女性として、40kgは欲しいのです」

「徐々に増やせば良い。無理をしては駄目だぞ?」

 と言いながら巻尺を手にし、ベルの前に膝を突いたフラヴィオ。

(来たか、このときが……)

 ごくり、と喉を鳴らした。

 この酒池肉林王、ぱっと見で女の身体の数値が分かる特技を持っている。

(アモーレの胸回りは78cmだ)

 つまり、まずい。

(なんとかして80cmにせねば、80cmに……!)

 そうでないと、ベルが傷付いて泣いてしまう。

「さーて、測るぞー」

 ベルの胸回りに巻尺を当てるフラヴィオの手が小刻みに震える。

 さっと測って「80cm」と言おうと思ってたのに、ベルが下を向いて巻尺の数値を凝視している。

(き、きっと大丈夫だ、2cmくらい緩く巻いたって……!)

 そう思って、巻尺を80cmのところでピタリ止める。

 するっと落ちた。

(――やばいっ!)

 バレないよう、咄嗟に巻尺を腰へと持っていく。

「やっぱりお楽しみは後回しにしないとなー。先に腰回りと尻周りを測るぞー」

「スィー」

 と答えたベルの顔が正面を向く。

(そのままで居るのだ、そのままで……!)

 腰回り52cm・尻周り82cmだった。

「素晴らしい括れだな、アモーレ」

 と細い腰に口付けて、再び胸回りに巻尺を持っていく。

 ベルの顔が下を向く。

(――オイっ……!)

 金の頭から噴き出した冷や汗が、フラヴィオのこめかみを伝っていった。

「どうされたのですか、フラヴィオ様? 汗が凄いですが、暑いのですか?」

「ああ、すまん。アモーレのぷくぷく乳房に興奮してしまった」

「しかし、やはり80cmは――」

「あるある! あるぞー、80cm! この酒池肉林王が言うのだから間違いないだろう?」

「そう言われてみれば……そうでございましたね。ベルナデッタは、ちゃんと80cmあるのですね」

 と恍惚と煌めいた栗色の瞳が、余計に巻尺を凝視した。

 フラヴィオの笑顔が引き攣っていく。

「だっ……駄目だろう、アモーレ? 真っ直ぐ前を見ていなければ」

「嫌でございます。ベルナデッタは記念すべき瞬間を見るのです」

「ちゃ、ちゃんと前を向いていないと正確に測れないのだぞ?」

「左様でございましたか」

 とベルがやっと正面を向いてくれると、小さく安堵の溜め息を吐いたフラヴィオ。

 ベルの胸回りに巻尺を当てると、酒池肉林王の目に狂いは無く、ぴったり78cmだった。

「ほーら、80cmだったぞー」

 と言い終わるか言い終わらないか、巻尺を外すか外さないかのうちに、煌めく栗色の瞳が辛抱たまらんと下を見てしまった――

「――…ななじゅう……はち?」

「アモモモモモモ」

 ひとり大地震に襲われているかの如く、激しく戦慄するフラヴィオの視線の先。

 栗色の瞳から煌めきが消失し、たちまち大粒の涙が溢れ出す。

 小さな唇が震え、その人形のような顔が絶望に染まっていった。

「な…ななじゅうはち……78! ベルナデッタの胸回りは78cm! 2cm足りていないのでございますか!」

「ち、ちちち、違う! 見間違いだアモーレ! さっき言ったではないか、アモーレの胸回りは――」

 わーんと、ベルの泣き声がフラヴィオの言葉を遮った。

 狼狽したフラヴィオが、「アモーレ!」とその小さな身体を抱っこする。

「ベルナデッタは78ですフラヴィオ様! ベルナデッタは――」

「良いのだアモーレ、78で良い! そなたが78だというなら、余は78が愛おしい! 60になったって、100になったって愛している! 今までも何度も何度もそう言ったではないかっ……!」

 脱衣籠を並べている棚の上にベルを座らせると、視線が同じ高さになった。

 止めどなく溢れている涙を指で拭う。

「それに最近、ちゃんと成長してきたではないか。この調子なら80cmなどすぐに超える。泣いては駄目だ」

 とベルに口付けた唇は、その胸元を愛でに向かって行った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

赤毛の不人気令嬢は俺様王様に寵愛される!?

LUKA
恋愛
由緒正しい貴族の家柄に生まれたマージョリーは、まれにみる珍しい赤毛をしているせいで、貴族の令嬢らしからぬ不幸な人生を送ってきた。人々は彼女の赤毛を呪われた血の色だと決めつけ、わが身可愛さに彼女を否応なく遠ざけてきた。そんな境遇で育ったにもかかわらず、彼女は自分以外の人々、すなわち彼女の両親や家名を気にかけ、豊富な医療知識を生かして国王の住まう城で宮仕えを始める。城の中でも目立たぬ半地下の医務室で穏やかな日常を過ごしてきたマージョリーであったが、そんなあるとき、彼女は偶然にも城の主で、君主でもあるネス王に見初められ、彼の絶対的な権力にあらがう術も持たず、婚礼の儀を済ませて王妃となってしまった。控えめな彼女は、身分があまりにも違いすぎる点をはじめ、自身の赤毛が王の妃としては不名誉である点を理由に、ネスとの婚姻関係を解消するよう談判したが、ネスは聞く耳を持たないどころか固辞として彼女を求めた。彼女は生まれて初めて異性から慕われ、愛されることへの戸惑いを覚えつつも、ネスの寵愛を受け入れていく。そんなある日、彼女はネスとの婚礼を祝して開かれた武芸試合で、ある一人の優美な若者の存在に気が付く。若者は華麗な剣さばきで試合を勝ち抜き、王であるネスとの特典試合も交え、称えられた若者は、王妃であるマージョリーの手に接吻する権利を得た。彼女は兵士に似つかわしくない端正な顔立ちをした若者にひそかに胸を高鳴らせた。また別の日、マージョリーはネスから贈られたドレスを着て、同盟国のキンバリー公国が主催する舞踏会へネスとともに出席した。彼女の嫌な予感は的中し、周りの招待客たちに陰口をたたかれたが、愛するネスのためにも彼女は知らんふりした。しかし彼女の不幸は続き、ネスの従妹でキンバリー公国の王女であるイネスに、髪を整えてもらいがてら化粧室に閉じ込められてしまった。悲嘆にくれるマージョリーだったが、勇気を奮って何とか苦難を脱した。その勇気が功を奏したのか、彼女はみんなの前でキンバリー公国の皇后に認められ、彼女の名誉が回復した。そしてマージョリーはネスの妻となって一年が経ったが、一向に懐妊しないことに焦っていた。そんな中、不吉な赤毛の王妃を毛嫌いするネスの乳母、ミセス・ケイトが策を企て、ネスと彼女の仲を引き裂こうとする。しかしながら、王に次ぐ剣の使い手でもある若い兵士の助力もあり、ミセス・ケイトの計画は失敗し、マージョリーは幸運にもネスの子を身ごもる。そして紆余曲折を経て男児を出産したマージョリーは、親愛なる剣士の昇格を見届けると同時に、再び宿った新しい命の防護を彼に託したのだった。

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...