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第41話ー3
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ベルは、ふと懐かしい自身の発言を思い出す――
「私が、モストロと結婚致しましょう」
さらに、こうも言った――
「子が出来たらメッゾサングエで魔法を使えるのでしょうから、治癒や支援魔法の他にも攻撃魔法を覚えさせ、この国のため――フラヴィオ様のため、『兵器』にでも致しましょう」
その気持ちは、実際にメッゾサングエを孕んだ現在でもやはり変わらない。
でも、その宣言をした当時には、想定していなかった悲痛が待っていた。
(フラヴィオ様……)
手の平のライラック色のオルキデーア石の指輪の上に、大粒の涙が幾多も零れ落ちていく。
(きっと私にはもう、フラヴィオ様の妻になる資格がありません。フラヴィオ様の視界に入る資格すらきっともう、失いました)
そう思ったら、筝を奏でることが出来なくなった。
レオーネ国の密偵に見つけてもらってはいけないと思った。
フラヴィオが酷く心配をしているのは分かるが、それ以上にいけないことだと思った。
でも天使でいたい気持ちを捨てることは出来ず、主を大国の頂点に君臨させる野望も消えてはいない。
遠くからでもフラヴィオを愛し、癒しは難しいだろうが必ず助けとなり、いつまでも美しくあり、そして何よりも生きて、フラヴィオにこの世界一の大国を贈るのだ。
(大丈夫……私はそれで充分に幸せなのだから)
でも、心残りなことがある。
ヴィットーリアがベルに託した仕事――フラヴィオの最期を膝枕で看取ること。
(申し訳ございません、ヴィットーリア王妃陛下……私にはもう、きっとその資格もありません)
今、フラヴィオに新しい王妃――ルフィーナが居てくれることを有難く思った。
(ルフィーナ王妃陛下、どうかフラヴィオ様の――)
「すみません」
と、玄関の方から男の声がした。
「宮廷から来た者です。勝手に門を潜り、中庭を通って来てしまって申し訳ありません。入ってもよろしいですか」
「え、宮廷かラ?」
と、泣いているベルの傍らに寄り添い、なんと声を掛けて良いか分からずにいたリエンが、眉を顰めて玄関へと向かう。
間もなくリエンの「あレ?」という声が聞こえた。
「内閣大学士の……名前なんだっケ? マル、サンカク、シカク、ゴカク……」
「その中ですと『マル』かと。私は内閣大学士の首輔マー・ルイです、リエンさん」
「そーダ、そーダ。中堂がマルだったネ。内閣大学士なのに全然見ないかラ、名前どれがどれなんだか忘れてたヨ。ごめんなさイ」
「いいえ、無理もありませんから」
と、そのマー・ルイが苦笑したのが、見ずともベルにも分かった。
(内閣大学士って……)
実質的宰相に当たる国王の補佐だと、リエンが言っていた。
でも、ワン・ジンは一切頼っていないらしい。
(それがどうしてここへ……?)
と、少し不思議に思ったベルの涙が止まる。
椅子から立ち上がり、玄関の方をそっと覗き込んでみる。
中肉中背で口髭を生やし、きちんとした身なりの中年男性がいる。
そのマー・ルイの背後――玄関の外にある中庭には、ちらほらと雪が降っていた。
そういえば先日、リエンが12月になったとか何とか言っていたことを思い出す。
「ところデ、どうしたノ?」
と訊いたリエンが、訊き返された。
「あなたはどうしてこんなところにいるのですか、リエンさん。陛下の愛犬であるあなたは、いつも陛下の寝殿や後宮の適当なところで寝泊まりしていたはず。それが王都から離れた副都の邸宅で……」
「それハ、えト……」
とリエンが返答に困って俯いたとき、ふとマー・ルイの視線がベルを捉えた。
はっと息を呑み、少しのあいだ言葉を失った後、「なんということを!」と声を上げた。
「やはりですかっ……やはり、陛下は……!」
とリエンの横を通り、足早にベルの方へと向かっていく。
「えっ、ちょっト!」
と、リエンが慌ててテレトラスポルトで先回りし、ベルを背に庇った。
両手を広げて「駄目!」とマー・ルイを睨み付けたが、その耳目には入っていないようだった。
ベルの顔をまじまじと見つめ、確信した様子でこう言った。
「ずっと探しておりました。あなたは、カプリコルノ陛下のご寵姫では」
どきっとしたベルが言葉を詰まらせた一方、リエンが「違うヨ!」と声を上げた。
マー・ルイがベルの衣装に目を落とす。
「カンクロ国の王妃陛下にさせられたのですね」
リエンがまた否定しようとすると、マー・ルイの視線に捉えられた。
「バレていますよ、リエンさん。昨夜、宮廷医が切迫した様子で私のところへ相談に来ました。陛下が、異国の顔立ちをした天女のような王妃陛下を副都イビスコの邸宅に匿っているが、このままではいずれ王太后陛下にバレて殺されてしまうだろうと。しかも驚くことに、王妃陛下はご懐妊していらっしゃると言うではありませんか」
「お、王妃陛下なのは認めル……で、でモ、カプリコルノ国王の寵姫とカ、そんなんじゃないヨッ……」
と言うが、マー・ルイの目にはリエンが嘘を吐いていることは明らかだった。
ベルが口を開く。
「私には記憶が無いのです。リエンさんのオブリーオという魔法を掛けられたようなので」
「――そんなことを……!」
とマー・ルイがリエンを睨むように見ると、それは「だっテ……」と呟いてバツが悪そうに俯いた。
「リエンさん、あなたを責める気はありません。あなたは主の――陛下の命に従ったまでのことなのでしょうから。悪いのは……」
とマー・ルイは言葉を切ったが、ベルにもリエンにもその後に続く言葉は「陛下」だということは分かった。
マー・ルイの声が震える。
「教えてください、リエンさん。あなたの主は何をお考えか。カプリコルノ国に大敗を喫しても未だ尚、陛下はお分かりにならないと申すのですか。彼女を私たちからカプリコルノ陛下にお返ししても、記憶喪失にさせて陛下のお子をご懐妊となったらもう誠意は伝わらないでしょう。彼女をカプリコルノ陛下がどの程度寵愛されていたかにもよるでしょうが、もう『力の王』にお許しいただける可能性は低いと思った方が良い」
「だ、だかラ、バレないように王妃陛下を――エミをここニッ……」
「あまりレオーネ国の優秀な密偵を舐めない方が宜しい。遅かれ早かれ、いずれバレます。ところで、エミとは彼女の本名ですか?」
リエンが首を横に振る。
「本名を教えて下さい」
リエンはベルの顔を見てどうしようか迷ったが、それは記憶を失った『振り』をしていることはもうすっかり分かっていた故に、小さく答えた。
「ベ…ベル……」
「ベルさんですか?」
「ベルナデッタ……だったはズ」
「ベルナデッタ……?」
と鸚鵡返しにしたマー・ルイの眉間にシワが寄り、口が大きく開き、顔が絶望に染まっていく。
「――さっ……宰相閣下を攫ってくる人がありますか!」
「な、なんで知ってるノ……」
「陛下や王太后陛下、あなたはご存知ないでしょうが、カプリコルノ国についてはレオーネ国の次に詳しいんですよ、私たち内閣大学士は。カプリコルノ国の宰相閣下といえば、レオーネ国で噂のカプリコルノ陛下の最愛のご寵姫ではありませんか! なんと愚かなことを!」
リエンが「ワァァァァン!」と泣き出した。
「リエンに言わないでヨォォォッ!」
「もう終わりです。力の王に許していただける可能性など、もはや皆無。陛下も、本来ならば実質的宰相であったはずの私も、そして陛下の愛犬であり共犯者のリエンさんあなたも、おとなしく首を洗って待っていましょう。まぁでも、善良なカプリコルノ陛下がカンクロ国を治めてくださるのなら、国民の方は幸せですね。力の王なら、武ひとつで荒れ始めたこの国を容易に鎮静化するでしょうしね。そういう意味では、私は大変喜ばしい。ああ、目出度し目出度し」
リエンが尚のこと「ワァァァァン!」と泣き喚く一方で、ベルが少し動悸を覚えながらマー・ルイを見る。
(この内閣大学士首輔――実質的宰相のマー・ルイさんは、もしかして……)
ベルは「あの」と少し声高になりながら口を開いた。
「マー……中堂?」
「中堂というのは、内閣首輔の尊称です」
「マー中堂、あなた様はカプリコルノ陛下を……」
とベルは言葉を切った。
きっと、ワン・ジンの愛犬であるリエンの前では訊いてはいけないことだ。
でも察したらしいマー・ルイが、「そうです」と返してきた。もう死を覚悟したような、安らかな表情がある。
「世界中の王が脅威を抱くほどの力をお持ちながら、他国を略奪するようなことはせず、ただカプリコルノ国を守るためだけに武を振るわれている善良なカプリコルノ陛下を、私はずっと尊敬していました。これは私だけでなく、内閣大学士たち皆がそうです。内閣以外の大学士たちもですし、官僚・官吏にもたくさんいます。それから、私の父もでした。カプリコルノ宰相閣下、記憶を失われている中でこんなことを言うのも何ですが、先の遠征をお許しください。前内閣首輔――私の父が先王陛下を必死に止めたのですが、叶わず……」
「え…? あの、マー中堂のお父上様は今……」
「もうこの世にはいません。反逆者だとされ、先王陛下に処刑されたのです。これは現在でもそうで――いえ、むしろ酷くなっていて、官僚・官吏は日々死と隣り合わせで朝廷に出ております」
「それはワン・ジン陛下が……ということですか」
「当代の陛下も無くはありません。激情家のところなんかは、先王陛下にそっくりで。でもご即位されて日も浅いですから、先王陛下に比べたら大した数ではありません。酷いのは王太后陛下の暴虐ぶりです。朝廷では少し逆らった程度で首を跳ねられますし、その手は民衆にも及びます。中でも人間の女性がお嫌いで、もう何百人町や村の女性が惨殺されたか……。一応陛下が人間の女性を殺してはならないと命じたとは聞いておりますが、効力はほとんど無かったようです。王太后陛下にとってもワン・ジン陛下は『陛下』で『子息』ですが、先王陛下のように『飼い主』ではありませんから」
「なんということ……」
ベルは邸宅の外に出てもう一度町を見てみなくても、分かることがある。
せっかく下げた税金もまた上げたと聞くことだし、カプリコルノ国よりも明らかに民衆の笑顔が少ないということだ。
(そんな国を我が主に贈るわけには行かないのですよ、王太后陛下……)
ベルの栗色の瞳が冷然と光った一方で、マー・ルイがリエンを見た。
「ここにカプリコルノ宰相閣下を置いているのは、王太后陛下からもお守りする意味もあるのですか?」
「うン。カプリコルノ国王より王太后陛下の方が危険なくらいデ……」
「王太后陛下は勘の鋭いお方です。これもまた、見つかるのは時間の問題でしょう」
リエンが動揺して、マー・ルイの両肩を掴んで揺する。
「ど、どうしよウ、マー中堂! どうしよウ! 王妃陛下が殺されちゃウ! ご主人様から王妃陛下が奪われちゃウ! そんなの絶対に駄目ネ!」
モストロの怪力に首を前後に大きく揺すぶられるマー・ルイが、「落ち着いてください」と頼んだ。
「先ほどの私の話を聞いていましたか、リエンさん。力の王陛下は、いずれ宰相閣下をあなたの主から奪い返しに来ます。そして私たちの首は飛びます。ここは潔く今からカプリコルノ国へ向かい、宰相閣下をお返ししませんか。あなたのテレトラスポルトならカプリコルノ国に辿り着けるでしょう?」
「拒否するネ! リエンはカプリコルノ国王から逃げ切ってみせるネ! ご主人様が王妃陛下を手放さない限リ、リエンはずっとずっと拒否するネ!」
マー・ルイが「でしょうね」と溜め息を吐いた。
「では仕方ありません、宰相閣下はお守りせねばなりませんから協力致しましょう。リエンさん、あなたは宰相閣下の女官ですか?」
「う、うン」
「ではいざとなったら、宰相閣下を大学士堂に連れて来なさい。いえ、いざとならなくとも、『なるべく』です」
リエンが不思議そうに「大学士堂?」と小首を傾げると、マー・ルイは「はい」と続けた。
「王太后陛下は、先王陛下がお亡くなりになって以降、一度たりとも大学士堂を訪ねてくださったことはないからです。私が父のように補佐として朝廷に顔を出していたなら多少興味を持ってくださったことでしょうが、それも無く、私はもはや空気のような存在。いらっしゃってくださらないのですよ、陛下共々。それに、王太后陛下は宰相閣下が宮中にいるとは思わず、きっと別の町や村を探すことでしょう。レオーネ国の言葉を借りると、灯台下暗しというやつです。あまり気が進みませんが、これはレオーネ国の密偵にとってもそうでしょう」
とマー・ルイがベルを一瞥して「それから」と問う。
「宰相閣下は、一度でも王太后陛下と面と向かってお会いになったことはあるのですか」
「うン、貿易取引のときに一度だけ」
「ならば、ここに常に香を炊いておきなさい」
リエンが「え」と露骨に嫌な顔をした。
「カーネ・ロッソの鼻には辛いヨ、あのお香って匂いが強すぎテ」
「だからです。カーネ・ロッソの鼻はとても優秀なのですから、一度でも面と向かって会っていたのなら匂いを覚えられているかもしれません。それを消す役割をするのが香です。あまりに辛いようならば、逃げる直前だけでもすぐ炊けるようにしておきなさい。大学士堂にも用意しておきます」
「そ、そうだネ、分かっタ」
と承知した後、リエンが困惑した様子で「でモ」と続けた。
「ご主人様になんて言おウ? 王妃陛下は外出禁止にされてるから、バレたら怒られちゃうヨ」
「事前に正直に申し上げておくと宜しい。陛下はどうやら宰相閣下をとても大切にされているようですから、宰相閣下のお命を第一に優先するはずです」
リエンがまた承知の返事をした後、ベルが「ところで」と口を開いた。
「リエンさん、最近はいつ王太后陛下にお会いしましたか?」
「えト……ひと月以上前だったかナ」
「以前はどれくらいの頻度で?」
「ほとんど毎日」
「それは」とベルとマー・ルイの声がハモッた。
「あまりにも不自然というものです、リエンさん。きっともう、王太后陛下に怪しまれていることでしょう」
「今すぐに王太后陛下にお会いして来なさい。少しだけでもこれから毎日、必ずです」
リエンが2人の顔を交互に見ながら「行ってくル!」と、慌てて後宮へテレトラスポルトしていった。
残った2人が顔を見合わせる。
マー・ルイが一瞬、目を疑った。さっきまでそこに居たはずの可憐な少女が、厳格な宰相の姿にすり替わっていた故に。
「――…記憶がおありなのですね、宰相閣下……!」
「はい、マー中堂。私は一切の記憶を失っておりません。リエンさんにはバレているようですが、ワン・ジン陛下は私が記憶喪失になっていると思っています。私が記憶を失った振りをしているからです。何故なら、私に記憶があると分かったとき――我が主フラヴィオ・マストランジェロ陛下の記憶があると分かったとき、ワン・ジン陛下が私を殺める故に」
耳を疑ったマー・ルイの顔が驚愕に染まっていく。
「な…なんですって……!」
ベルはリエンが戻って来る前にと、すぐさま「それから」と続けた。
「宜しいですか、マー中堂。あなたの首がフラヴィオ陛下に飛ばされることはありません。宰相である私があなたを守ります。何故なら、あなたは必要な方だからです」
どういうことかと少しばかり錯乱するマー・ルイの手前、ベルの顔が微笑していった。
それはこの国の者の目には、天女のように映る。
「ありがとうございます、マー中堂。正直なところ、私ひとりでは少々大変でしたが救われました。あなたのような方が居てくださったとは。この後から早速お手伝いいただけると助かります」
「宰相閣下……?」
「マー中堂、あなたを我が主カプリコルノ・カンクロ両国国王フラヴィオ・マストランジェロ陛下の補佐のひとりに任命致します――」
「私が、モストロと結婚致しましょう」
さらに、こうも言った――
「子が出来たらメッゾサングエで魔法を使えるのでしょうから、治癒や支援魔法の他にも攻撃魔法を覚えさせ、この国のため――フラヴィオ様のため、『兵器』にでも致しましょう」
その気持ちは、実際にメッゾサングエを孕んだ現在でもやはり変わらない。
でも、その宣言をした当時には、想定していなかった悲痛が待っていた。
(フラヴィオ様……)
手の平のライラック色のオルキデーア石の指輪の上に、大粒の涙が幾多も零れ落ちていく。
(きっと私にはもう、フラヴィオ様の妻になる資格がありません。フラヴィオ様の視界に入る資格すらきっともう、失いました)
そう思ったら、筝を奏でることが出来なくなった。
レオーネ国の密偵に見つけてもらってはいけないと思った。
フラヴィオが酷く心配をしているのは分かるが、それ以上にいけないことだと思った。
でも天使でいたい気持ちを捨てることは出来ず、主を大国の頂点に君臨させる野望も消えてはいない。
遠くからでもフラヴィオを愛し、癒しは難しいだろうが必ず助けとなり、いつまでも美しくあり、そして何よりも生きて、フラヴィオにこの世界一の大国を贈るのだ。
(大丈夫……私はそれで充分に幸せなのだから)
でも、心残りなことがある。
ヴィットーリアがベルに託した仕事――フラヴィオの最期を膝枕で看取ること。
(申し訳ございません、ヴィットーリア王妃陛下……私にはもう、きっとその資格もありません)
今、フラヴィオに新しい王妃――ルフィーナが居てくれることを有難く思った。
(ルフィーナ王妃陛下、どうかフラヴィオ様の――)
「すみません」
と、玄関の方から男の声がした。
「宮廷から来た者です。勝手に門を潜り、中庭を通って来てしまって申し訳ありません。入ってもよろしいですか」
「え、宮廷かラ?」
と、泣いているベルの傍らに寄り添い、なんと声を掛けて良いか分からずにいたリエンが、眉を顰めて玄関へと向かう。
間もなくリエンの「あレ?」という声が聞こえた。
「内閣大学士の……名前なんだっケ? マル、サンカク、シカク、ゴカク……」
「その中ですと『マル』かと。私は内閣大学士の首輔マー・ルイです、リエンさん」
「そーダ、そーダ。中堂がマルだったネ。内閣大学士なのに全然見ないかラ、名前どれがどれなんだか忘れてたヨ。ごめんなさイ」
「いいえ、無理もありませんから」
と、そのマー・ルイが苦笑したのが、見ずともベルにも分かった。
(内閣大学士って……)
実質的宰相に当たる国王の補佐だと、リエンが言っていた。
でも、ワン・ジンは一切頼っていないらしい。
(それがどうしてここへ……?)
と、少し不思議に思ったベルの涙が止まる。
椅子から立ち上がり、玄関の方をそっと覗き込んでみる。
中肉中背で口髭を生やし、きちんとした身なりの中年男性がいる。
そのマー・ルイの背後――玄関の外にある中庭には、ちらほらと雪が降っていた。
そういえば先日、リエンが12月になったとか何とか言っていたことを思い出す。
「ところデ、どうしたノ?」
と訊いたリエンが、訊き返された。
「あなたはどうしてこんなところにいるのですか、リエンさん。陛下の愛犬であるあなたは、いつも陛下の寝殿や後宮の適当なところで寝泊まりしていたはず。それが王都から離れた副都の邸宅で……」
「それハ、えト……」
とリエンが返答に困って俯いたとき、ふとマー・ルイの視線がベルを捉えた。
はっと息を呑み、少しのあいだ言葉を失った後、「なんということを!」と声を上げた。
「やはりですかっ……やはり、陛下は……!」
とリエンの横を通り、足早にベルの方へと向かっていく。
「えっ、ちょっト!」
と、リエンが慌ててテレトラスポルトで先回りし、ベルを背に庇った。
両手を広げて「駄目!」とマー・ルイを睨み付けたが、その耳目には入っていないようだった。
ベルの顔をまじまじと見つめ、確信した様子でこう言った。
「ずっと探しておりました。あなたは、カプリコルノ陛下のご寵姫では」
どきっとしたベルが言葉を詰まらせた一方、リエンが「違うヨ!」と声を上げた。
マー・ルイがベルの衣装に目を落とす。
「カンクロ国の王妃陛下にさせられたのですね」
リエンがまた否定しようとすると、マー・ルイの視線に捉えられた。
「バレていますよ、リエンさん。昨夜、宮廷医が切迫した様子で私のところへ相談に来ました。陛下が、異国の顔立ちをした天女のような王妃陛下を副都イビスコの邸宅に匿っているが、このままではいずれ王太后陛下にバレて殺されてしまうだろうと。しかも驚くことに、王妃陛下はご懐妊していらっしゃると言うではありませんか」
「お、王妃陛下なのは認めル……で、でモ、カプリコルノ国王の寵姫とカ、そんなんじゃないヨッ……」
と言うが、マー・ルイの目にはリエンが嘘を吐いていることは明らかだった。
ベルが口を開く。
「私には記憶が無いのです。リエンさんのオブリーオという魔法を掛けられたようなので」
「――そんなことを……!」
とマー・ルイがリエンを睨むように見ると、それは「だっテ……」と呟いてバツが悪そうに俯いた。
「リエンさん、あなたを責める気はありません。あなたは主の――陛下の命に従ったまでのことなのでしょうから。悪いのは……」
とマー・ルイは言葉を切ったが、ベルにもリエンにもその後に続く言葉は「陛下」だということは分かった。
マー・ルイの声が震える。
「教えてください、リエンさん。あなたの主は何をお考えか。カプリコルノ国に大敗を喫しても未だ尚、陛下はお分かりにならないと申すのですか。彼女を私たちからカプリコルノ陛下にお返ししても、記憶喪失にさせて陛下のお子をご懐妊となったらもう誠意は伝わらないでしょう。彼女をカプリコルノ陛下がどの程度寵愛されていたかにもよるでしょうが、もう『力の王』にお許しいただける可能性は低いと思った方が良い」
「だ、だかラ、バレないように王妃陛下を――エミをここニッ……」
「あまりレオーネ国の優秀な密偵を舐めない方が宜しい。遅かれ早かれ、いずれバレます。ところで、エミとは彼女の本名ですか?」
リエンが首を横に振る。
「本名を教えて下さい」
リエンはベルの顔を見てどうしようか迷ったが、それは記憶を失った『振り』をしていることはもうすっかり分かっていた故に、小さく答えた。
「ベ…ベル……」
「ベルさんですか?」
「ベルナデッタ……だったはズ」
「ベルナデッタ……?」
と鸚鵡返しにしたマー・ルイの眉間にシワが寄り、口が大きく開き、顔が絶望に染まっていく。
「――さっ……宰相閣下を攫ってくる人がありますか!」
「な、なんで知ってるノ……」
「陛下や王太后陛下、あなたはご存知ないでしょうが、カプリコルノ国についてはレオーネ国の次に詳しいんですよ、私たち内閣大学士は。カプリコルノ国の宰相閣下といえば、レオーネ国で噂のカプリコルノ陛下の最愛のご寵姫ではありませんか! なんと愚かなことを!」
リエンが「ワァァァァン!」と泣き出した。
「リエンに言わないでヨォォォッ!」
「もう終わりです。力の王に許していただける可能性など、もはや皆無。陛下も、本来ならば実質的宰相であったはずの私も、そして陛下の愛犬であり共犯者のリエンさんあなたも、おとなしく首を洗って待っていましょう。まぁでも、善良なカプリコルノ陛下がカンクロ国を治めてくださるのなら、国民の方は幸せですね。力の王なら、武ひとつで荒れ始めたこの国を容易に鎮静化するでしょうしね。そういう意味では、私は大変喜ばしい。ああ、目出度し目出度し」
リエンが尚のこと「ワァァァァン!」と泣き喚く一方で、ベルが少し動悸を覚えながらマー・ルイを見る。
(この内閣大学士首輔――実質的宰相のマー・ルイさんは、もしかして……)
ベルは「あの」と少し声高になりながら口を開いた。
「マー……中堂?」
「中堂というのは、内閣首輔の尊称です」
「マー中堂、あなた様はカプリコルノ陛下を……」
とベルは言葉を切った。
きっと、ワン・ジンの愛犬であるリエンの前では訊いてはいけないことだ。
でも察したらしいマー・ルイが、「そうです」と返してきた。もう死を覚悟したような、安らかな表情がある。
「世界中の王が脅威を抱くほどの力をお持ちながら、他国を略奪するようなことはせず、ただカプリコルノ国を守るためだけに武を振るわれている善良なカプリコルノ陛下を、私はずっと尊敬していました。これは私だけでなく、内閣大学士たち皆がそうです。内閣以外の大学士たちもですし、官僚・官吏にもたくさんいます。それから、私の父もでした。カプリコルノ宰相閣下、記憶を失われている中でこんなことを言うのも何ですが、先の遠征をお許しください。前内閣首輔――私の父が先王陛下を必死に止めたのですが、叶わず……」
「え…? あの、マー中堂のお父上様は今……」
「もうこの世にはいません。反逆者だとされ、先王陛下に処刑されたのです。これは現在でもそうで――いえ、むしろ酷くなっていて、官僚・官吏は日々死と隣り合わせで朝廷に出ております」
「それはワン・ジン陛下が……ということですか」
「当代の陛下も無くはありません。激情家のところなんかは、先王陛下にそっくりで。でもご即位されて日も浅いですから、先王陛下に比べたら大した数ではありません。酷いのは王太后陛下の暴虐ぶりです。朝廷では少し逆らった程度で首を跳ねられますし、その手は民衆にも及びます。中でも人間の女性がお嫌いで、もう何百人町や村の女性が惨殺されたか……。一応陛下が人間の女性を殺してはならないと命じたとは聞いておりますが、効力はほとんど無かったようです。王太后陛下にとってもワン・ジン陛下は『陛下』で『子息』ですが、先王陛下のように『飼い主』ではありませんから」
「なんということ……」
ベルは邸宅の外に出てもう一度町を見てみなくても、分かることがある。
せっかく下げた税金もまた上げたと聞くことだし、カプリコルノ国よりも明らかに民衆の笑顔が少ないということだ。
(そんな国を我が主に贈るわけには行かないのですよ、王太后陛下……)
ベルの栗色の瞳が冷然と光った一方で、マー・ルイがリエンを見た。
「ここにカプリコルノ宰相閣下を置いているのは、王太后陛下からもお守りする意味もあるのですか?」
「うン。カプリコルノ国王より王太后陛下の方が危険なくらいデ……」
「王太后陛下は勘の鋭いお方です。これもまた、見つかるのは時間の問題でしょう」
リエンが動揺して、マー・ルイの両肩を掴んで揺する。
「ど、どうしよウ、マー中堂! どうしよウ! 王妃陛下が殺されちゃウ! ご主人様から王妃陛下が奪われちゃウ! そんなの絶対に駄目ネ!」
モストロの怪力に首を前後に大きく揺すぶられるマー・ルイが、「落ち着いてください」と頼んだ。
「先ほどの私の話を聞いていましたか、リエンさん。力の王陛下は、いずれ宰相閣下をあなたの主から奪い返しに来ます。そして私たちの首は飛びます。ここは潔く今からカプリコルノ国へ向かい、宰相閣下をお返ししませんか。あなたのテレトラスポルトならカプリコルノ国に辿り着けるでしょう?」
「拒否するネ! リエンはカプリコルノ国王から逃げ切ってみせるネ! ご主人様が王妃陛下を手放さない限リ、リエンはずっとずっと拒否するネ!」
マー・ルイが「でしょうね」と溜め息を吐いた。
「では仕方ありません、宰相閣下はお守りせねばなりませんから協力致しましょう。リエンさん、あなたは宰相閣下の女官ですか?」
「う、うン」
「ではいざとなったら、宰相閣下を大学士堂に連れて来なさい。いえ、いざとならなくとも、『なるべく』です」
リエンが不思議そうに「大学士堂?」と小首を傾げると、マー・ルイは「はい」と続けた。
「王太后陛下は、先王陛下がお亡くなりになって以降、一度たりとも大学士堂を訪ねてくださったことはないからです。私が父のように補佐として朝廷に顔を出していたなら多少興味を持ってくださったことでしょうが、それも無く、私はもはや空気のような存在。いらっしゃってくださらないのですよ、陛下共々。それに、王太后陛下は宰相閣下が宮中にいるとは思わず、きっと別の町や村を探すことでしょう。レオーネ国の言葉を借りると、灯台下暗しというやつです。あまり気が進みませんが、これはレオーネ国の密偵にとってもそうでしょう」
とマー・ルイがベルを一瞥して「それから」と問う。
「宰相閣下は、一度でも王太后陛下と面と向かってお会いになったことはあるのですか」
「うン、貿易取引のときに一度だけ」
「ならば、ここに常に香を炊いておきなさい」
リエンが「え」と露骨に嫌な顔をした。
「カーネ・ロッソの鼻には辛いヨ、あのお香って匂いが強すぎテ」
「だからです。カーネ・ロッソの鼻はとても優秀なのですから、一度でも面と向かって会っていたのなら匂いを覚えられているかもしれません。それを消す役割をするのが香です。あまりに辛いようならば、逃げる直前だけでもすぐ炊けるようにしておきなさい。大学士堂にも用意しておきます」
「そ、そうだネ、分かっタ」
と承知した後、リエンが困惑した様子で「でモ」と続けた。
「ご主人様になんて言おウ? 王妃陛下は外出禁止にされてるから、バレたら怒られちゃうヨ」
「事前に正直に申し上げておくと宜しい。陛下はどうやら宰相閣下をとても大切にされているようですから、宰相閣下のお命を第一に優先するはずです」
リエンがまた承知の返事をした後、ベルが「ところで」と口を開いた。
「リエンさん、最近はいつ王太后陛下にお会いしましたか?」
「えト……ひと月以上前だったかナ」
「以前はどれくらいの頻度で?」
「ほとんど毎日」
「それは」とベルとマー・ルイの声がハモッた。
「あまりにも不自然というものです、リエンさん。きっともう、王太后陛下に怪しまれていることでしょう」
「今すぐに王太后陛下にお会いして来なさい。少しだけでもこれから毎日、必ずです」
リエンが2人の顔を交互に見ながら「行ってくル!」と、慌てて後宮へテレトラスポルトしていった。
残った2人が顔を見合わせる。
マー・ルイが一瞬、目を疑った。さっきまでそこに居たはずの可憐な少女が、厳格な宰相の姿にすり替わっていた故に。
「――…記憶がおありなのですね、宰相閣下……!」
「はい、マー中堂。私は一切の記憶を失っておりません。リエンさんにはバレているようですが、ワン・ジン陛下は私が記憶喪失になっていると思っています。私が記憶を失った振りをしているからです。何故なら、私に記憶があると分かったとき――我が主フラヴィオ・マストランジェロ陛下の記憶があると分かったとき、ワン・ジン陛下が私を殺める故に」
耳を疑ったマー・ルイの顔が驚愕に染まっていく。
「な…なんですって……!」
ベルはリエンが戻って来る前にと、すぐさま「それから」と続けた。
「宜しいですか、マー中堂。あなたの首がフラヴィオ陛下に飛ばされることはありません。宰相である私があなたを守ります。何故なら、あなたは必要な方だからです」
どういうことかと少しばかり錯乱するマー・ルイの手前、ベルの顔が微笑していった。
それはこの国の者の目には、天女のように映る。
「ありがとうございます、マー中堂。正直なところ、私ひとりでは少々大変でしたが救われました。あなたのような方が居てくださったとは。この後から早速お手伝いいただけると助かります」
「宰相閣下……?」
「マー中堂、あなたを我が主カプリコルノ・カンクロ両国国王フラヴィオ・マストランジェロ陛下の補佐のひとりに任命致します――」
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