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第34話ー9
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ベルの鼓動が高鳴っていく。
舞踏会でフラヴィオと踊るのは、初めての経験だった。
ずっと踊ってみたいと思っていた。
今や沢山あるベルのヴェスティートの中から赤いものに着替え、なるべく身長差を無くすために踵が10cmある靴を履く。
顎の高さまである栗色の髪をハナに整えてもらい、髪飾りを付けてもらいながら、手早く化粧も直す。
「へ、変じゃない? どこか変じゃない、ハナ?」
「そんなわけあるか! あたいの親友は完璧だ! 誰よりも綺麗だ、フラビーとお似合いだ! さぁ、自信を持って踊って来るんだ!」
「スィー」と返事をしたベルが、いそいそと衣裳部屋の扉へと向かっていく。
さっきは舞踏室からわざわざテレトラスポルトでやって来たが、それはここからすぐ見える場所にあった。
ハナが「頑張れよ!」と続ける。
「なんせ、大トリだからな!」
ベルが「へ?」と振り返った。
ハナの黒猫の耳が、音声を聞き取るように動いている。
「さっきまで踊ってた招待客は観客になったみたいだぞ。まぁ、リコたんたち4組の夫婦・恋人はベルたちと一緒に踊るみたいだけど。フラビー陛下と宰相天使閣下は、主役だから踊り場のど真ん中だってさ! 良かったな、目立つぞ!」
何も良くなかったベルの顔から血の気が引いていった。
「――無理でございますっ……!」
ハナがきょとんとして「何が」と言った。
「フラヴィオ様と私の身長差を見て、ハナっ…! 踊れないことは無いですが、通常よりも不格好なことになり兼ねないのですっ……!」
「まぁ、踊ったことないあたいにも、踊り辛いんだろうなっていうのは分かるけど……。いいじゃんか、楽しく踊れればそれで」
「私もつい先ほどまでそう思っていましたが、それはこんなことになるとは思っていなかったからです…! 突然、招待客の皆様が『観客』って……! これでは私が、主のお顔に泥を塗るという、大失態を犯すことになります!」
「いや、言い過ぎだろ? ベルの音楽の才は、正直歌はアレだけど、楽器と舞踏は得意じゃないか。大丈夫だよ、ベルならフラビーのステップに付いていける」
「無理です! フラヴィオ様と私では、脚の長さがまるで違うのですか――」
「いいからいいから! ほら、時間がないから行くぞ!」
とハナはベルを連れて舞踏室の前へとテレトラスポルトした。
「お待たせ、フラビー」
「――Oh……!」
とエビ反りになったフラヴィオの上半身が視界から消えると、ハナが呆れ顔になった。
「こっちはこっちで大丈夫かよ。しかもたぶん、今日それ2度目だろ」
その通り、昼間ベルが紫色のヴェスティートに着替えたときにもやっていたフラヴィオ。
バネに弾かれたように恍惚とした顔で舞い戻って来るや否や、ベルの小さな唇を吸引しにいく。
舞踏室の中は、一旦演奏が止んでいた。
ハナの黒猫の耳が聞き取った通り、踊り場にはフェデリコ・アリーチェ夫妻とアドルフォ・ベラドンナ夫妻、オルランド・アヤメ夫妻、コラード・シャルロッテの4組だけが居て、他の王侯貴族は観客となって踊り場を囲んでいる。
一番戸口に近い場所で待機しているコラードが、フラヴィオに向かって「早くー」と手を振った。
フラヴィオは「うむ」と返すと、緊張でかちんこちんになっているベルを攫っていった。
まるで直立姿勢の石像のようになっているベルが、フラヴィオの腕に横に抱かれて登場すると、観客の盛大などよめきと拍手に迎えられた。
「おおお…! 筋力も一流だぞ、宰相天使閣下……!」
「凄いわ、あんなに小さなお身体をしているのに。きっと陛下に見合った一流の舞踏を披露してくれるのでしょうね!」
そんな観客の声が、天井とシャンデリアを見つめている石像の耳に入っていく。
額に冷や汗が滲んでいった。
(どうしようっ……!)
やはりフラヴィオと踊れる自信がない。
踵が10cmある靴を履いたって、フラヴィオの踵も2、3cmあるし身長差は20cm以上ある。
以前フラヴィオにそんなことを話したとき、「余に身を任せていれば大丈夫だ」と返って来たが、やはり普通に考えて習った通りに踊るのは難しい。
適切な身長差で華麗に踊り、観客の目を奪ってきたフラヴィオとヴィットーリアのように行くわけがない。
そしてフラヴィオの顔に泥を塗ってしまうことになるのだ。
もはやフラヴィオと踊る嬉しさや楽しみは吹っ飛び、責任感に押し潰されてしまいそうだった。
(踊らなきゃ…! きちんと踊らなきゃっ……!)
頭を全速力で動かして、背の高いフラヴィオに合わせた踊り方を思い描いていく。
フラヴィオは踊り場の真ん中に辿り着くと、石像を縦にして床の上に置いた。
「…フ…フラヴィオ様っ……!」
「あれ?」と、それまで恍惚としていたフラヴィオが、瞬きをして石像――もといベルの顔を見下ろす。
「なんで泣きそうな顔をしているのだ、アモーレ? 舞踏会は楽しく踊るものだぞ? 余は笑顔のそなたと踊りたい」
「だ、だだだ、だって…だって……! ベルナデッタのようなちんちくりんでは、フラヴィオ様に合わせて踊ることが出来ず、フラヴィオ様に恥をっ……!」
「うん?」とフラヴィオが小首を傾げる。
「以前言ったではないか、余に身を任せていれば大丈夫だと。それに10cmも高くなったなら充分だぞ」
「む、むむむ、無理でございますっ……! 歩幅だって違いすぎますし、ベルナデッタはそこまで舞踏の技術が高くなく――」
「兄上、準備はよろしいですか」
と、楽士たちに近いところで待機しているフェデリコから声が掛かった。
ベルの方はまったく良くなかったのに、フラヴィオが「うむ」と答えてしまった。
(――ああ、もう、終わり)
だが、やるしかないのだ。
もう腹を括るしかないのだ。
何せ、己はベルナデッタ・アンナローロ。
(この世の誰よりも何よりも、国王フラヴィオ・マストランジェロ陛下を愛する7番目の天使)
こうなったらもう、腕が吊っても良い。
股が裂けても構わない。
主の顔に泥を塗ってしまわぬよう、意地でも華麗に踊り切ってみせる。
さぁ、いざ尋常に――
(参るのです!)
と気張り、ぴんと背筋を伸ばして通常の位置よりも両腕をかなり高く上げたベル。
でもそれとは反対に、フラヴィオの視線がふと10cmばかり近く――低くなっていった。
「あ、あれ……?」
「何をしているのだ。もっと下だろう」
とおかしそうに笑われて、「申し訳ございません」と腕の位置を下げる。
通常の踊りやすい位置に腕が来た。
困惑する。
通常通りの位置で右手がフラヴィオの左手と握り合い、肘を曲げた左手も通常通りフラヴィオの右上腕の上にある。
フラヴィオの右手も、通常通りちゃんとベルの肩甲骨のところにあった。
「ベル、正面じゃなくて斜め上を意識するといいわ」
と舞踏の先生――アリーチェの助言に「スィー」と返事をしてから間もなく、フェデリコが宮廷楽士長に合図を出す。
「そなたは無理をしないで、これまで練習してきた通りにパッソを踏めば良いのだ」
「し、しかしフラヴィオ様、それでは……」
と戸惑ったベルだったが、艶美な円舞曲が流れ始めてしまい、どうにもこうにも従うことに。
不安だらけの中、言われた通りに最初の一歩を踏み出す――
「――あれ……?」
フラヴィオが「どうしたのだ?」と笑った。
「あ、あの……」
普通にフラヴィオのパッソに付いていける。
脚が急に10cm、15cm伸びた?
そんなわけがない。
どう考えてもフラヴィオがベルに合わせてくれているのだ。
ふと、もうひとつの身長差組――アドルフォ・ベラドンナ夫妻――が視界に入り、顔を向けてみる。
こちらもベラドンナが踵が10cmある靴を履いており、アドルフォとは約20cmほどの身長差で、フラヴィオ・ベルと同じくらいだ。
しかし、どういうわけか、アドルフォの身長が10cm程度低くなっていることに気付く。
一見した程度では分からなかったが、よく見たらアドルフォは膝を曲げていた。
そうやって身体を屈めて適切な身長差に持ち込み、ベラドンナが引っ張られないように歩幅も合わせている。
フラヴィオの下半身も今、ああなっていると分かったら狼狽した。
「お、お待ちくださいフラヴィオ様。そんな体勢ではどう考えても大変です、私がフラヴィオ様に合わせますっ……!」
呆れたような笑みが返って来た。
「まったく、アモーレは。余のために身体を張って生きるところといい、レディーファースト教育でも受けたのか?」
「え?」
「こういう舞踏は、女が男に合わせるのではなく、男が女に合わせるのだ。そして男の仕事は自身を良く魅せることではなく、女を美しく引き立たせることだ。この場の誰よりもな」
と、ベルの身体を優しく力強く支えてくれているフラヴィオの右手に誘導され、身体が流れるように三回転した。
ベルのゴンナが華麗に翻り、歓声と拍手が沸く。
一方で、ベルの口からは「わ……!」と驚きの声が漏れていた。
(何これ……!)
一対一で踊っている筈なのに、摩訶不思議にさえ感じるほどの自然な回転。
寸分のズレもなく同時に踏むパッソ。
まるでフラヴィオと一心同体になっているかのような、錯覚の世界に誘われていく。
「――凄いのですっ……!」
突如、大きく震えた心。
爆風のようにたちまち皮膚まで伝わり、全身を刹那の鳥肌が包み込んでいった。
フラヴィオがベルの反応を見て笑う。
「いらぬ心配だっただろう?」
「スィーっ……!」
「じゃ、次のパッソはちょっと無理があるから変えるぞ」
との突然の指令には焦ってしまったベルだったが、それも杞憂だった。
次にどうすれば良いのかは、すべてフラヴィオの右手が教えてくれる。
打ち合わせをしたわけでも無いのに阿吽の呼吸でパッソを踏み、ぶれることを知らないフラヴィオの右手に支えらながら、伸びやかに身体を反らす。
また歓声と拍手が降って来た。
「ああ、素晴らしゅうございますっ…! ベルナデッタは感動しておりますっ…! これが何百回・何千回、何百人・何千人と経験を積まれている酒池肉林王陛下の技術なのですねっ……!」
擦れ違ったシャルロッテの「誤解招くわー」という言葉が聞こえた傍ら、フラヴィオが愉快そうに「ふふふ」と笑った。
「なんだアモーレ、おねだりか?」
「スィー」
とフラヴィオの至宝――ベルの笑顔が溢れた。
「もっとです、フラヴィオ様。ベルナデッタは、もっとフラヴィオ様と踊るのです」
「まったくもう」
と言葉通り呆れた風に言ってみせたフラヴィオにも、負けじと真夏の太陽ように明るい笑顔が咲く。
楽士が奏でる艶美な曲に溶け込んだかのように同調し、穏やかな波に揺られているように心地良いフラヴィオの腕の中。
気になっていた観客はやがてベルの中から消失していって、目前の男ひとりに囚われる。
回転すると優雅に靡く高貴な金の髪。
ベルを見つめて揺れる澄んだ碧眼。
その顔が見えない体勢でいるときにも感じる視線が、愛撫のように肌を撫でていく。
均整の取れた唇から聞こえる低いけれど、とても優しい声。
「美しい」の褒め言葉。
「愛している」の愛の言葉。
鼓膜から心地良く入って来て、胸の中を熱いもので満たしていく。
僅かに残っていた緊張と劣等感が跡形もなく溶けていき、ただひたすらにこの男の腕に抱かれて踊る幸福と愉悦に浸る。
小さな顔には女の自信が溢れ、悦ぶ小さな身体が威風堂々たる女王のように舞い踊っていく――
「――ベル、お姉様みたい……」
ベラドンナが呟いた。
2人の周りを踊っていた4組の足は止まり、観客の方へと避けていた。
頬を染めているアヤメが、口元を両手で包み込んで「あかん」と興奮した声を上げる。
「ベルちゃん、めっちゃ綺麗…! めっちゃ色っぽい……!」
「あれはフラヴィオ様がそうさせてるのよ。何度見ても、素晴らしくて惚れ惚れしちゃうわ」
とアリーチェが、懐かしそうな目でフラヴィオとベルを見つめて微笑む。
「本当……ベル、とても素敵ね。まるでお義姉様を見ているよう」
その傍らでフェデリコが「ああ」と声を震わせた。
「あれは、義姉上と踊っているときの兄上だ。これからも見ることが出来るんだな……」
「もう、すぐ泣くんだから」
「すまん」
とフェデリコが瞼を押さえると、連鎖反応が起きて近くにいたオルランドとコラードも続いた。
踊り場に2人だけになったことで、フラヴィオが全面を使って観客を魅せ、楽士はより盛大に艶美な円舞曲を奏でていく。
あれだけ沸いていた観客は逆に静まり返り、舞踏室が一時の陶酔に浸っていった。
踊り場を完璧なパッソで踏み、流麗に踊る2人。
華やかな赤いゴンナが回り、翻って、観客の目を奪う。
小さな身体が滑らかに反れて、華奢な脚が美しく伸びると、あちこちから溜め息が漏れた。
「にゃあぁ……」
と観客に紛れて2人を黄色い瞳で追うハナも、感嘆の溜め息を吐いていた。
「凄いぞ、ベル…! あたいは天下一舞踏会を見てる気分だぞ……!」
とそこへ、「ハナちゃん」と呼ぶ声を黒猫の耳が聞き取った。
「なんだよ、こんなときに」
と迷惑に思いながら振り返ると、さっきアクアーリオ王太子を国へ送りに行ったアラブが帰って来ていて、戸口のところで手招きしている。
急用でないなら後にして欲しいところだが、それは見るからに急いた様子だった。
どうしたのかと、眉を寄せて目前にテレトラスポルトする。
それはハナが口を開くよりも先に、踊り場の方を指差して問うてきた。
「後どれくらいで終わる?」
「え? この曲はあと少しだと思うけど、舞踏会が終わる24時まではあと2、3曲は行けそうだし……」
と、ハナは言葉を切った。「何?」と問うと、アラブが辺りを気にしながら耳打ちしてきた。
聞こえて来た言葉に、「いっ!?」と仰天したハナ。
踊り場を一瞥した後、腕組みしてアラブの前を左右に行ったり来たりしながら思考を巡らす。
「待て待て、なんで? どうしようっ……」
「やっぱりベルさんだけでなく、陛下にも言ったらまずいかな」
「たぶん喧嘩になるぞ、それ。だってフラビーが知ったら、絶対行こうとするだろ? 石材の件があるんだし、連れて行くならベルと、護衛のあたいとアラブさんと、あとリコたんかアドぽんのどっちかだ」
「だよね。陛下を連れて行ったら、向こうがカッとして石材の件が失敗したなんてことにもなり兼ねないし……。でも、どうやって陛下にバレずにベルさんを連れて行く?」
「今それを考えてるんだよっ……!」
とハナが必死に黙考する。
それから間もなく曲が鳴り止むと、割れんばかりの歓声と拍手喝采が宮廷中に響き渡った。
その中に混じっている女たちの会話を、黒猫の耳が聞き取る。
「ああ、なんて素敵なの。陛下、わたしと一曲踊ってくれないかしら」
「ね、踊って欲しいわよね。一曲……ううん、1分や30秒だけでも」
ハナは「コレだ!」と指を鳴らすと、踊り場の中央へとテレトラスポルトした。
ベルを抱っこし、バーチョしていたフラヴィオを背に、高らかに「ハイハーイ!」と声を出す。
「皆さーん! 舞踏会も残り15分! 日頃の感謝を込め、フラヴィオ・マストランジェロ陛下がひとり30秒ずつ1万オーロで踊ってくれまーす!」
女性陣の黄色い声が上がる中、フラヴィオがぎょっとして「こら!」と眉を吊り上げた。
「親友の真似をするんじゃない、ハナ!」
「だってタダじゃベルに怒られるし……なぁ?」
とそれを見ると、すっかり恍惚とした顔をしている。
「ハナ、1万オーロなんて駄目です」
「あれ? 意外だな。んじゃ半額の――」
「10万オーロは取れるっ……!」
フラヴィオがもう一度「こら!」と言った傍ら、ハナが「やっぱ、30秒10万オーロ!」と四方向に向かって叫ぶ。
受付はマサムネに擦り付け、想像以上に殺到したのでフラヴィオと同等の人気を誇るフェデリコにも手伝わせる。
「こら、ベルハナーっ!」
と、王侯貴族の女性陣に押し潰されそうになっているフラヴィオの怒声が黄色い声の中に混じっていたが、ハナは聞こえていない振りをしてベルを戸口まで引っ張っていく。
その途中、アドルフォの手も引っ掴んで連れて行った。
「なんだ、どうした」
とアドルフォが問うと、そこで待っていたアラブが「ベルさん」と呼んだ。
しかし舞踏会の余韻に浸っている様子のベルを見て、声高気味に呼び直した。
「宰相閣下」
ベルがはっとしてアラブの顔を見上げる。
「スィー、アラブさん。どうされました?」
アラブがベルとアドルフォの顔を交互に見た後、声を潜めて用件を口にした。
「北の海に、カンクロ国王ワン・ジンが来ています――」
舞踏会でフラヴィオと踊るのは、初めての経験だった。
ずっと踊ってみたいと思っていた。
今や沢山あるベルのヴェスティートの中から赤いものに着替え、なるべく身長差を無くすために踵が10cmある靴を履く。
顎の高さまである栗色の髪をハナに整えてもらい、髪飾りを付けてもらいながら、手早く化粧も直す。
「へ、変じゃない? どこか変じゃない、ハナ?」
「そんなわけあるか! あたいの親友は完璧だ! 誰よりも綺麗だ、フラビーとお似合いだ! さぁ、自信を持って踊って来るんだ!」
「スィー」と返事をしたベルが、いそいそと衣裳部屋の扉へと向かっていく。
さっきは舞踏室からわざわざテレトラスポルトでやって来たが、それはここからすぐ見える場所にあった。
ハナが「頑張れよ!」と続ける。
「なんせ、大トリだからな!」
ベルが「へ?」と振り返った。
ハナの黒猫の耳が、音声を聞き取るように動いている。
「さっきまで踊ってた招待客は観客になったみたいだぞ。まぁ、リコたんたち4組の夫婦・恋人はベルたちと一緒に踊るみたいだけど。フラビー陛下と宰相天使閣下は、主役だから踊り場のど真ん中だってさ! 良かったな、目立つぞ!」
何も良くなかったベルの顔から血の気が引いていった。
「――無理でございますっ……!」
ハナがきょとんとして「何が」と言った。
「フラヴィオ様と私の身長差を見て、ハナっ…! 踊れないことは無いですが、通常よりも不格好なことになり兼ねないのですっ……!」
「まぁ、踊ったことないあたいにも、踊り辛いんだろうなっていうのは分かるけど……。いいじゃんか、楽しく踊れればそれで」
「私もつい先ほどまでそう思っていましたが、それはこんなことになるとは思っていなかったからです…! 突然、招待客の皆様が『観客』って……! これでは私が、主のお顔に泥を塗るという、大失態を犯すことになります!」
「いや、言い過ぎだろ? ベルの音楽の才は、正直歌はアレだけど、楽器と舞踏は得意じゃないか。大丈夫だよ、ベルならフラビーのステップに付いていける」
「無理です! フラヴィオ様と私では、脚の長さがまるで違うのですか――」
「いいからいいから! ほら、時間がないから行くぞ!」
とハナはベルを連れて舞踏室の前へとテレトラスポルトした。
「お待たせ、フラビー」
「――Oh……!」
とエビ反りになったフラヴィオの上半身が視界から消えると、ハナが呆れ顔になった。
「こっちはこっちで大丈夫かよ。しかもたぶん、今日それ2度目だろ」
その通り、昼間ベルが紫色のヴェスティートに着替えたときにもやっていたフラヴィオ。
バネに弾かれたように恍惚とした顔で舞い戻って来るや否や、ベルの小さな唇を吸引しにいく。
舞踏室の中は、一旦演奏が止んでいた。
ハナの黒猫の耳が聞き取った通り、踊り場にはフェデリコ・アリーチェ夫妻とアドルフォ・ベラドンナ夫妻、オルランド・アヤメ夫妻、コラード・シャルロッテの4組だけが居て、他の王侯貴族は観客となって踊り場を囲んでいる。
一番戸口に近い場所で待機しているコラードが、フラヴィオに向かって「早くー」と手を振った。
フラヴィオは「うむ」と返すと、緊張でかちんこちんになっているベルを攫っていった。
まるで直立姿勢の石像のようになっているベルが、フラヴィオの腕に横に抱かれて登場すると、観客の盛大などよめきと拍手に迎えられた。
「おおお…! 筋力も一流だぞ、宰相天使閣下……!」
「凄いわ、あんなに小さなお身体をしているのに。きっと陛下に見合った一流の舞踏を披露してくれるのでしょうね!」
そんな観客の声が、天井とシャンデリアを見つめている石像の耳に入っていく。
額に冷や汗が滲んでいった。
(どうしようっ……!)
やはりフラヴィオと踊れる自信がない。
踵が10cmある靴を履いたって、フラヴィオの踵も2、3cmあるし身長差は20cm以上ある。
以前フラヴィオにそんなことを話したとき、「余に身を任せていれば大丈夫だ」と返って来たが、やはり普通に考えて習った通りに踊るのは難しい。
適切な身長差で華麗に踊り、観客の目を奪ってきたフラヴィオとヴィットーリアのように行くわけがない。
そしてフラヴィオの顔に泥を塗ってしまうことになるのだ。
もはやフラヴィオと踊る嬉しさや楽しみは吹っ飛び、責任感に押し潰されてしまいそうだった。
(踊らなきゃ…! きちんと踊らなきゃっ……!)
頭を全速力で動かして、背の高いフラヴィオに合わせた踊り方を思い描いていく。
フラヴィオは踊り場の真ん中に辿り着くと、石像を縦にして床の上に置いた。
「…フ…フラヴィオ様っ……!」
「あれ?」と、それまで恍惚としていたフラヴィオが、瞬きをして石像――もといベルの顔を見下ろす。
「なんで泣きそうな顔をしているのだ、アモーレ? 舞踏会は楽しく踊るものだぞ? 余は笑顔のそなたと踊りたい」
「だ、だだだ、だって…だって……! ベルナデッタのようなちんちくりんでは、フラヴィオ様に合わせて踊ることが出来ず、フラヴィオ様に恥をっ……!」
「うん?」とフラヴィオが小首を傾げる。
「以前言ったではないか、余に身を任せていれば大丈夫だと。それに10cmも高くなったなら充分だぞ」
「む、むむむ、無理でございますっ……! 歩幅だって違いすぎますし、ベルナデッタはそこまで舞踏の技術が高くなく――」
「兄上、準備はよろしいですか」
と、楽士たちに近いところで待機しているフェデリコから声が掛かった。
ベルの方はまったく良くなかったのに、フラヴィオが「うむ」と答えてしまった。
(――ああ、もう、終わり)
だが、やるしかないのだ。
もう腹を括るしかないのだ。
何せ、己はベルナデッタ・アンナローロ。
(この世の誰よりも何よりも、国王フラヴィオ・マストランジェロ陛下を愛する7番目の天使)
こうなったらもう、腕が吊っても良い。
股が裂けても構わない。
主の顔に泥を塗ってしまわぬよう、意地でも華麗に踊り切ってみせる。
さぁ、いざ尋常に――
(参るのです!)
と気張り、ぴんと背筋を伸ばして通常の位置よりも両腕をかなり高く上げたベル。
でもそれとは反対に、フラヴィオの視線がふと10cmばかり近く――低くなっていった。
「あ、あれ……?」
「何をしているのだ。もっと下だろう」
とおかしそうに笑われて、「申し訳ございません」と腕の位置を下げる。
通常の踊りやすい位置に腕が来た。
困惑する。
通常通りの位置で右手がフラヴィオの左手と握り合い、肘を曲げた左手も通常通りフラヴィオの右上腕の上にある。
フラヴィオの右手も、通常通りちゃんとベルの肩甲骨のところにあった。
「ベル、正面じゃなくて斜め上を意識するといいわ」
と舞踏の先生――アリーチェの助言に「スィー」と返事をしてから間もなく、フェデリコが宮廷楽士長に合図を出す。
「そなたは無理をしないで、これまで練習してきた通りにパッソを踏めば良いのだ」
「し、しかしフラヴィオ様、それでは……」
と戸惑ったベルだったが、艶美な円舞曲が流れ始めてしまい、どうにもこうにも従うことに。
不安だらけの中、言われた通りに最初の一歩を踏み出す――
「――あれ……?」
フラヴィオが「どうしたのだ?」と笑った。
「あ、あの……」
普通にフラヴィオのパッソに付いていける。
脚が急に10cm、15cm伸びた?
そんなわけがない。
どう考えてもフラヴィオがベルに合わせてくれているのだ。
ふと、もうひとつの身長差組――アドルフォ・ベラドンナ夫妻――が視界に入り、顔を向けてみる。
こちらもベラドンナが踵が10cmある靴を履いており、アドルフォとは約20cmほどの身長差で、フラヴィオ・ベルと同じくらいだ。
しかし、どういうわけか、アドルフォの身長が10cm程度低くなっていることに気付く。
一見した程度では分からなかったが、よく見たらアドルフォは膝を曲げていた。
そうやって身体を屈めて適切な身長差に持ち込み、ベラドンナが引っ張られないように歩幅も合わせている。
フラヴィオの下半身も今、ああなっていると分かったら狼狽した。
「お、お待ちくださいフラヴィオ様。そんな体勢ではどう考えても大変です、私がフラヴィオ様に合わせますっ……!」
呆れたような笑みが返って来た。
「まったく、アモーレは。余のために身体を張って生きるところといい、レディーファースト教育でも受けたのか?」
「え?」
「こういう舞踏は、女が男に合わせるのではなく、男が女に合わせるのだ。そして男の仕事は自身を良く魅せることではなく、女を美しく引き立たせることだ。この場の誰よりもな」
と、ベルの身体を優しく力強く支えてくれているフラヴィオの右手に誘導され、身体が流れるように三回転した。
ベルのゴンナが華麗に翻り、歓声と拍手が沸く。
一方で、ベルの口からは「わ……!」と驚きの声が漏れていた。
(何これ……!)
一対一で踊っている筈なのに、摩訶不思議にさえ感じるほどの自然な回転。
寸分のズレもなく同時に踏むパッソ。
まるでフラヴィオと一心同体になっているかのような、錯覚の世界に誘われていく。
「――凄いのですっ……!」
突如、大きく震えた心。
爆風のようにたちまち皮膚まで伝わり、全身を刹那の鳥肌が包み込んでいった。
フラヴィオがベルの反応を見て笑う。
「いらぬ心配だっただろう?」
「スィーっ……!」
「じゃ、次のパッソはちょっと無理があるから変えるぞ」
との突然の指令には焦ってしまったベルだったが、それも杞憂だった。
次にどうすれば良いのかは、すべてフラヴィオの右手が教えてくれる。
打ち合わせをしたわけでも無いのに阿吽の呼吸でパッソを踏み、ぶれることを知らないフラヴィオの右手に支えらながら、伸びやかに身体を反らす。
また歓声と拍手が降って来た。
「ああ、素晴らしゅうございますっ…! ベルナデッタは感動しておりますっ…! これが何百回・何千回、何百人・何千人と経験を積まれている酒池肉林王陛下の技術なのですねっ……!」
擦れ違ったシャルロッテの「誤解招くわー」という言葉が聞こえた傍ら、フラヴィオが愉快そうに「ふふふ」と笑った。
「なんだアモーレ、おねだりか?」
「スィー」
とフラヴィオの至宝――ベルの笑顔が溢れた。
「もっとです、フラヴィオ様。ベルナデッタは、もっとフラヴィオ様と踊るのです」
「まったくもう」
と言葉通り呆れた風に言ってみせたフラヴィオにも、負けじと真夏の太陽ように明るい笑顔が咲く。
楽士が奏でる艶美な曲に溶け込んだかのように同調し、穏やかな波に揺られているように心地良いフラヴィオの腕の中。
気になっていた観客はやがてベルの中から消失していって、目前の男ひとりに囚われる。
回転すると優雅に靡く高貴な金の髪。
ベルを見つめて揺れる澄んだ碧眼。
その顔が見えない体勢でいるときにも感じる視線が、愛撫のように肌を撫でていく。
均整の取れた唇から聞こえる低いけれど、とても優しい声。
「美しい」の褒め言葉。
「愛している」の愛の言葉。
鼓膜から心地良く入って来て、胸の中を熱いもので満たしていく。
僅かに残っていた緊張と劣等感が跡形もなく溶けていき、ただひたすらにこの男の腕に抱かれて踊る幸福と愉悦に浸る。
小さな顔には女の自信が溢れ、悦ぶ小さな身体が威風堂々たる女王のように舞い踊っていく――
「――ベル、お姉様みたい……」
ベラドンナが呟いた。
2人の周りを踊っていた4組の足は止まり、観客の方へと避けていた。
頬を染めているアヤメが、口元を両手で包み込んで「あかん」と興奮した声を上げる。
「ベルちゃん、めっちゃ綺麗…! めっちゃ色っぽい……!」
「あれはフラヴィオ様がそうさせてるのよ。何度見ても、素晴らしくて惚れ惚れしちゃうわ」
とアリーチェが、懐かしそうな目でフラヴィオとベルを見つめて微笑む。
「本当……ベル、とても素敵ね。まるでお義姉様を見ているよう」
その傍らでフェデリコが「ああ」と声を震わせた。
「あれは、義姉上と踊っているときの兄上だ。これからも見ることが出来るんだな……」
「もう、すぐ泣くんだから」
「すまん」
とフェデリコが瞼を押さえると、連鎖反応が起きて近くにいたオルランドとコラードも続いた。
踊り場に2人だけになったことで、フラヴィオが全面を使って観客を魅せ、楽士はより盛大に艶美な円舞曲を奏でていく。
あれだけ沸いていた観客は逆に静まり返り、舞踏室が一時の陶酔に浸っていった。
踊り場を完璧なパッソで踏み、流麗に踊る2人。
華やかな赤いゴンナが回り、翻って、観客の目を奪う。
小さな身体が滑らかに反れて、華奢な脚が美しく伸びると、あちこちから溜め息が漏れた。
「にゃあぁ……」
と観客に紛れて2人を黄色い瞳で追うハナも、感嘆の溜め息を吐いていた。
「凄いぞ、ベル…! あたいは天下一舞踏会を見てる気分だぞ……!」
とそこへ、「ハナちゃん」と呼ぶ声を黒猫の耳が聞き取った。
「なんだよ、こんなときに」
と迷惑に思いながら振り返ると、さっきアクアーリオ王太子を国へ送りに行ったアラブが帰って来ていて、戸口のところで手招きしている。
急用でないなら後にして欲しいところだが、それは見るからに急いた様子だった。
どうしたのかと、眉を寄せて目前にテレトラスポルトする。
それはハナが口を開くよりも先に、踊り場の方を指差して問うてきた。
「後どれくらいで終わる?」
「え? この曲はあと少しだと思うけど、舞踏会が終わる24時まではあと2、3曲は行けそうだし……」
と、ハナは言葉を切った。「何?」と問うと、アラブが辺りを気にしながら耳打ちしてきた。
聞こえて来た言葉に、「いっ!?」と仰天したハナ。
踊り場を一瞥した後、腕組みしてアラブの前を左右に行ったり来たりしながら思考を巡らす。
「待て待て、なんで? どうしようっ……」
「やっぱりベルさんだけでなく、陛下にも言ったらまずいかな」
「たぶん喧嘩になるぞ、それ。だってフラビーが知ったら、絶対行こうとするだろ? 石材の件があるんだし、連れて行くならベルと、護衛のあたいとアラブさんと、あとリコたんかアドぽんのどっちかだ」
「だよね。陛下を連れて行ったら、向こうがカッとして石材の件が失敗したなんてことにもなり兼ねないし……。でも、どうやって陛下にバレずにベルさんを連れて行く?」
「今それを考えてるんだよっ……!」
とハナが必死に黙考する。
それから間もなく曲が鳴り止むと、割れんばかりの歓声と拍手喝采が宮廷中に響き渡った。
その中に混じっている女たちの会話を、黒猫の耳が聞き取る。
「ああ、なんて素敵なの。陛下、わたしと一曲踊ってくれないかしら」
「ね、踊って欲しいわよね。一曲……ううん、1分や30秒だけでも」
ハナは「コレだ!」と指を鳴らすと、踊り場の中央へとテレトラスポルトした。
ベルを抱っこし、バーチョしていたフラヴィオを背に、高らかに「ハイハーイ!」と声を出す。
「皆さーん! 舞踏会も残り15分! 日頃の感謝を込め、フラヴィオ・マストランジェロ陛下がひとり30秒ずつ1万オーロで踊ってくれまーす!」
女性陣の黄色い声が上がる中、フラヴィオがぎょっとして「こら!」と眉を吊り上げた。
「親友の真似をするんじゃない、ハナ!」
「だってタダじゃベルに怒られるし……なぁ?」
とそれを見ると、すっかり恍惚とした顔をしている。
「ハナ、1万オーロなんて駄目です」
「あれ? 意外だな。んじゃ半額の――」
「10万オーロは取れるっ……!」
フラヴィオがもう一度「こら!」と言った傍ら、ハナが「やっぱ、30秒10万オーロ!」と四方向に向かって叫ぶ。
受付はマサムネに擦り付け、想像以上に殺到したのでフラヴィオと同等の人気を誇るフェデリコにも手伝わせる。
「こら、ベルハナーっ!」
と、王侯貴族の女性陣に押し潰されそうになっているフラヴィオの怒声が黄色い声の中に混じっていたが、ハナは聞こえていない振りをしてベルを戸口まで引っ張っていく。
その途中、アドルフォの手も引っ掴んで連れて行った。
「なんだ、どうした」
とアドルフォが問うと、そこで待っていたアラブが「ベルさん」と呼んだ。
しかし舞踏会の余韻に浸っている様子のベルを見て、声高気味に呼び直した。
「宰相閣下」
ベルがはっとしてアラブの顔を見上げる。
「スィー、アラブさん。どうされました?」
アラブがベルとアドルフォの顔を交互に見た後、声を潜めて用件を口にした。
「北の海に、カンクロ国王ワン・ジンが来ています――」
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