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第21話ー6
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――その頃。
ルフィーナは、衛兵の死角――宮廷の天井の一角に張り付いていた。
目前には、ついさっき訪ねて来たマサムネの顔がある。
その後ろには、テレトラスポルト役のハナもいる。
「もうあかんわ。フラビーにはまだ言い辛いけど、急がなあかんし、あんさんには今のうちに言っとくわ」
「陛下の後妻の件ですか?」
とルフィーナが問うと、マサムネが少し驚いた顔をした。
「皆さん気付いてますよ、マサムネ殿下がわたしを陛下の後妻にしようとお考えのことは」
「あれっ」と声高になったマサムネの背後、ハナが口を開く。
「じゃあ、こっちでもそういう方向で話が進んでるのか? フラビーとルフィーナさんは、夫婦になるつもりなのかっ……?」
困惑した声をしていた。ルフィーナが答えるよりも先に、言葉を続ける。
「あ、あたいはフラビーの後妻――王妃には、ベルがいい」
「黙っとれ、ハナ」
と、マサムネが厳しい声で言った。
「王妃と側室やったら、王妃にルフィーナや。側室とどんだけ影響力に差があると思ってんねん。国民は当然、賢いコニッリョにとっても、『人間界の王』がメッゾサングエを王妃に選んだっちゅー事実は、側室の何倍もデカい。まぁ、自分らと種族の違うモストロのメッゾサングエやから、どの程度の効力があるかは分からんけど……」
「嫌だ、王妃はベルがいい。側室とは格が違うからこそ、あたいの大切な友達を王妃にしたいんだ」
と剥れた顔をして言ったハナが「ていうか」と顔を上げ、マサムネの向こうにいるルフィーナの顔を見た。
「それ以前に、ルフィーナさんてフラビーとの結婚望んでるのか? だってルフィーナさんの好みって、アドぽんだろ?」
ルフィーナが「はい」と答えた後、小さく溜め息を吐いた。
「マサムネ殿下……わたしも一応、好きな人との結婚願望ってそれなりにあるんですよ。まぁ、アドルフォ閣下はやっぱり素敵すぎてたぶん永遠に好きとはいえ、もう妻になりたいと思ってませんが。それに、テレトラスポルト旅商人も好きでやってますし……」
と戸惑った様子のルフィーナを少しのあいだ見つめた後、マサムネがこう問うた。
「この国は好きか?」
「はい、とても。でも今は、見ていて悲しいです。前はあんなに、笑顔の溢れる素敵な国だったのに……」
「もう悲劇を生まないために、国民とコニッリョの融和が必要なんよ。そのために、王妃にメッゾサングエが必要なんよ。この3ヶ月間、フラビーに適したメッゾサングエ探しとるけど、結局あんさんが一番なんや。魔力・技術共に充分やし、父親がこの周辺の国の人間のお陰で馴染むし、その分の親近感も湧くやろうし、器量も及第点やし。それから、国民想いや。これは重要なことやと思っとる」
「そうですか」
と小さく返したルフィーナが、少しのあいだ当惑顔で黙っていた。
「フラビーじゃ嫌なん?」
とマサムネが問うと、ルフィーナがふとおかしそうに笑った。
「そんなことないです。アドルフォ閣下に比べたらか弱くて、そんなに好みというわけではありませんが、陛下が国民から愛されるのも納得しています」
そして真剣な眼差しで待っているマサムネに対し、こう返した。
「今はヴィットーリア王妃陛下が亡くなったばかりで、陛下の再婚は早くても来年になると思います。なので、わたしにもう少しお時間をください。ベルさんには到底敵わない気がしますが、陛下を愛するよう……また、愛されるよう、努力します――」
ルフィーナは、衛兵の死角――宮廷の天井の一角に張り付いていた。
目前には、ついさっき訪ねて来たマサムネの顔がある。
その後ろには、テレトラスポルト役のハナもいる。
「もうあかんわ。フラビーにはまだ言い辛いけど、急がなあかんし、あんさんには今のうちに言っとくわ」
「陛下の後妻の件ですか?」
とルフィーナが問うと、マサムネが少し驚いた顔をした。
「皆さん気付いてますよ、マサムネ殿下がわたしを陛下の後妻にしようとお考えのことは」
「あれっ」と声高になったマサムネの背後、ハナが口を開く。
「じゃあ、こっちでもそういう方向で話が進んでるのか? フラビーとルフィーナさんは、夫婦になるつもりなのかっ……?」
困惑した声をしていた。ルフィーナが答えるよりも先に、言葉を続ける。
「あ、あたいはフラビーの後妻――王妃には、ベルがいい」
「黙っとれ、ハナ」
と、マサムネが厳しい声で言った。
「王妃と側室やったら、王妃にルフィーナや。側室とどんだけ影響力に差があると思ってんねん。国民は当然、賢いコニッリョにとっても、『人間界の王』がメッゾサングエを王妃に選んだっちゅー事実は、側室の何倍もデカい。まぁ、自分らと種族の違うモストロのメッゾサングエやから、どの程度の効力があるかは分からんけど……」
「嫌だ、王妃はベルがいい。側室とは格が違うからこそ、あたいの大切な友達を王妃にしたいんだ」
と剥れた顔をして言ったハナが「ていうか」と顔を上げ、マサムネの向こうにいるルフィーナの顔を見た。
「それ以前に、ルフィーナさんてフラビーとの結婚望んでるのか? だってルフィーナさんの好みって、アドぽんだろ?」
ルフィーナが「はい」と答えた後、小さく溜め息を吐いた。
「マサムネ殿下……わたしも一応、好きな人との結婚願望ってそれなりにあるんですよ。まぁ、アドルフォ閣下はやっぱり素敵すぎてたぶん永遠に好きとはいえ、もう妻になりたいと思ってませんが。それに、テレトラスポルト旅商人も好きでやってますし……」
と戸惑った様子のルフィーナを少しのあいだ見つめた後、マサムネがこう問うた。
「この国は好きか?」
「はい、とても。でも今は、見ていて悲しいです。前はあんなに、笑顔の溢れる素敵な国だったのに……」
「もう悲劇を生まないために、国民とコニッリョの融和が必要なんよ。そのために、王妃にメッゾサングエが必要なんよ。この3ヶ月間、フラビーに適したメッゾサングエ探しとるけど、結局あんさんが一番なんや。魔力・技術共に充分やし、父親がこの周辺の国の人間のお陰で馴染むし、その分の親近感も湧くやろうし、器量も及第点やし。それから、国民想いや。これは重要なことやと思っとる」
「そうですか」
と小さく返したルフィーナが、少しのあいだ当惑顔で黙っていた。
「フラビーじゃ嫌なん?」
とマサムネが問うと、ルフィーナがふとおかしそうに笑った。
「そんなことないです。アドルフォ閣下に比べたらか弱くて、そんなに好みというわけではありませんが、陛下が国民から愛されるのも納得しています」
そして真剣な眼差しで待っているマサムネに対し、こう返した。
「今はヴィットーリア王妃陛下が亡くなったばかりで、陛下の再婚は早くても来年になると思います。なので、わたしにもう少しお時間をください。ベルさんには到底敵わない気がしますが、陛下を愛するよう……また、愛されるよう、努力します――」
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