残ってしまうもの

シエル

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残ってしまうもの

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荒廃した砂まみれの世界。
かつてこの世界は小さな空島が連なり、農業や鉱業などの文明を少ない土地で
作り上げる活気のある素敵な世界だった。
そんな世界で生活している人々はそれを苦とも思わず
むしろ仲間同士で苦楽を共にしその生活風景は近くの世界にいる人々の娯楽になっており
誰かの生きがいに、誰かの憧れに、また誰かの妬みの対象になっていたようだ。
そんな活気は今じゃ見る影もない、各空島を覆っているガラスは所々ヒビが入り
風化して少し触れただけでポロポロと朽ちてしまうほどになっている。
そんな魔法瓶の世界に一人の青年が降り立つ。
数年前のリスポーン地点などすでに忘れていたので最初の拠点に着いた。
「いやぁ懐かしいなーだいぶ汚れてるみたいだけど」
青年は独り言をつぶやき辺りを見渡した。
周りには空になった宝箱や錆びついた武器や農具等が転がっている。
「ったく使ったんなら片付けろよなぁ」
青年は笑いながら拠点にあるロングチェストに道具を仕舞う
ロングチェストにはかぼちゃの種や木のボタン等が入っていて懐かしげに手に取ってみる。
「これをす%&$んのせ海外がひろが・・・うーん、何年たってもこのボタンの使い方は思いつかんな」
青年は本拠地のドアに木のボタンを付けたが首をかしげて静かに外した。
本拠地を抜けると石でできた道が広がっている。
右には石を作る機械と畑と植林所が見えて左の奥には家畜を育てるエリアもある。
今じゃ動物たちもいなくマグマの音がコポコポと聞こえるだけだ。
「ほんと寂しいなぁ一人でここ歩くの誰も騒いでないし。俺がやらかしても
 誰も文句いわねぇし」
青年はとぼとぼ歩きながらタバコに火を付けまた独り言を吐く。
「あーあ、大人になっちまったなぁ」
この世界はここを開拓した者、それを見て楽しんでいた者たちの青春であり
その者たちは十年という時をこの世界と共に年を取り少しずつ幼かった頃を
懐かしむようになっていた。
青年もその一人のようでタバコや酒、社会の荒波を経験して外見だけは大人ぶっているが
「創作」に魅了され、今でも子供のように自分の描きたい世界を
誰かに認められる為に文字を書いている。
だが、青年はスランプに陥っていた。
どんな世界を作ったら正解かどの道に進めばいいか悩んでいる最中である。
そんな中何も動いていないはずのこの世界が色んな人に愛されている理由を知りたくて
この世界の誕生日に旅をすることにした。
青年が最後にこの世界に来たのは開拓者達が動かなくなってすぐの頃で
動かなくなった批判の声が雷に、生きがいにしていた人の悲しみが雨になり
劈くような轟音が飛び交い世界を壊すかのような嵐に襲われていた。
青年はその光景に愕然とし立ち尽くした。
こんな体験をしたこともなかったし何かできる力が自分になかったからだ。
数年たったら消えてしまうものだと思いこの世界を捨て新たな創作を作り始めるが
どんな作品を作ってもあの世界の魅力に勝てなかった。
いくら創作に打ち込んでもこの世界より素敵な世界を描く事が出来ていない…
人々をあれほどまでに魅了し、嫉妬させ、感動を与えた【コンテンツ】が自分では
生み出せないという負の感情でいつの間にかこの世界の事を【幸せが詰まった呪い】
だと思うようになった。
そんな創作活動が上手く行くはずもなく青年はフラフラと色んな世界を歩き回ったが
【呪い】を払う回答は見つからなかった。
似たような作品や誰も協力しない一人の青年が生きる世界も書いてみたが
結局自分が納得したものが作れずにいる。
創作に必死になっていてこの世界の事を自転車の補助輪のようなものだと思い
創作で自立するためにはなくす必要があるような気がしていつの間にか記憶から
消そうとしていた。
そんな青年の事をここで待つ人などいないだろうと思いながら一歩ずつ
思い出と共に歩みを進めた。
「誰かいるか―酒も持って来たし食べ物も持って来たぞ
折角の誕生日なんだ、誰でもいいからしゃべろうぜ」
少しだけこの世界に誰かいないか期待し、自分で勝手に縛っていた「思い出話」をしたいという我儘に答えてくれる人を探して大きな一人事を吐くが青年の言葉はむなしく響く。
結局舞っている砂や埃が口に入って咽るだけだった。
急いで持って来たローブを身にまとい眼鏡を拭く。
咳を止めるため水を探していると無限に水が湧き出ていた魔法瓶があることを思い出し
急いでそのびんに向かい持って来た水筒に水をいれて飲んだ。
咳は治ったがそういえばこの瓶に人がたくさん入ってた気がして気分が悪くなった。
そんな時ある声が消えた。
「おい、ここで面白い事しろよ」
「おら早くしろってー」
それは開拓をしていた頃のメンバー達だ。
青年は驚いた、変な水を飲んでしまって幻覚を見ているのかとも思った。
「おい!なんでお前らがここにいるんだよ!というかなんであの頃の恰好してるんだ」
青年は彼らに話をしたがメンバー達は青年をすり抜けて本拠地へと走っていった。
すぐに振り返ったがそこには影すらなかった。
「なんだよあれ、やっぱり変なもんでも入ってたのか…」
青年は少し戸惑って前を向くと他のメンバーたちも作業をしていた。
「おい、俺が石作ってるときに埋めるな」
「おい牛!そっち行ったら落ちるだろうが!」
「ウシ?コロシテイイノカ?」
「絶対そんなことしちゃダメでしょ!」
青年はその光景に啞然とし口が空いたまま力が抜けてストンとその場で脱力し座り込んだ。
「なにこれ、何が起きてんだ・・・俺、どうなってんだよ」
呆然としている青年を置いてあの頃の思い出が目の前で展開される。
「おい、ーーー歌いすぎだよ、作業しろよ」
久しぶりに聞いた親友の声もあり青年は動揺が隠せなかった。
「おい、なんだよこれ…マジでどうなってんだよ」
少し経つとメンバーたちの姿は消えた。
どうしてあいつらが消えたのか、そもそもあいつらがなんなのか…理解できない。
でも悪い気はしていない
一人でいるのは辛いし、あの頃の思い出に囲まれて幸せだ。
むしろ、もう少し今日だけは思い出に浸らせてほしいという気持ちがあふれた。
「なんだよ、そういう不気味な歓迎は求めてねーよ」
「あれ、こういうの求めてたんじゃないの?」
声がする方を向くとあの頃の自分自身がいた。
「お前がこの光景を俺に見せてるのか?」
青年は少年に向かって問いかける。
少年は不敵な笑みを浮かべて回答した。
「気に入ると思ったんだけどなぁだってこういうの求めてここに来たんでしょ?」
「相変わらずお前は人をおちょくるのが好きだな。友達なくすぞ」
青年が少年に忠告をすると少年は悲しい顔をして答えた。
「わかってるさそんなもん」
「それで、なんでこんな事するんだ?」
青年は少年を問いただす。
昔の自分を甘やかすつもりなんてない。
「なんでこの世界がまだ生きているのか気になって来たんでしょ?
 僕が案内してあげるよ。一人で彷徨ってたってなんの解決もしないでしょ?」
少年は笑みを浮かべながら答えた。
「ほんと怪しい奴のふりをするのが好きだよな。本心が出せないだけなのに
 まぁ原点に戻るっていうのは素晴らしいことだから手伝ってもらうかな」
皮肉を込めた回答に少年は膨れ顔になりながらもヒントを教えた。
「街エリアでどうやらパーティがあるらしいよ。そこで君の悩んでいる物の答えが
 あると思う。顔を出しに行くといい」
「RPGのヒントをくれるモブかよ。まぁ旅には目的地が必要だからな。とりあえず
 行ってみるよ」
青年がそう答えると少年は笑顔で手を降った。
「いってらっしゃい!また後で会おうね!」
少年は青年の前からすっと消えた。

あの頃は全力で走れた階段が今では一段一段体に堪えていた。
むしろあの頃なぜあんなに全力で走れたのか不思議に思えるくらいの段数に絶望している。
ようやく街エリアの入口についたが青年の体力は限界を迎えていた。
「ハウルの動くの城の荒れ地の魔女かよ」
青年は地面に倒れて空に向かってツッコミをいれた。
街エリアはトラップタワーと一緒に建築が上手い人が中心に作ったとても
芸術的な家を真ん中に建てた。
「なんでここにリスポーンしなかったんだよ。まぁどっちにせよこの階段は
 登んないといけないんだけどな」
街エリアにはゴーレムたちが俳諧していた
「おいおい!あれまなみとさゆりじゃねーか!流石ゴーレムだなまさかまだ
街を守ってるとは…」
青年はゴーレムに近づくとゴーレムたちは動きを止め青年を見る。
「よかった、お前らは実物だもんな。聞いてくれよ」
青年がゴーレムと会話しているとローブを来た人が青年に近づいてきた。
「も、もしかしてーーーさんですか!本物だ!何してるんですか?」
どうやらこの世界を好いてくれている旅人らしい。
「おや、こんにちは。僕は10年の時が過ぎたこの世界を少し旅しようと思いまして
 あなたは、どうして?」
青年は旅人に話しかけた。
「私、いや私たちも同じような理由ですよ。この世界の10回目の誕生日を
ここでしようと思って集まったんです。勝手に祝ってたりしてすみません」
ファンは少し動揺しているようだったが青年は笑って返答した。
「いいですよ、それにこの世界は誰かに使ってもらえてる方がうれしいでしょうし。
 そういえば私たちって言ってましたけど他にもいらっしゃるんですか?」
「はい!よかったら案内しましょうか?」
そういうと青年は旅人の手を握ってキラキラした目で答えた。
「ぜひぜひ!ちょうどしゃべり相手がほしいと思ってましたからありがたいです!」
青年に手を握られ旅人は少し照れていた。
案内されると数人がパーティ会場のような物の設営をしていた。

「みんなー!久しぶり!」
旅人は大声で設営している人たちに声かけた。
「久しぶりって珍しい挨拶ですね」
「そうなんです。当時色んな人がこの世界の事見てたと思うんですが流石にみんなの
 顔を覚えられなったので、ここで会ったってことはあの当時会っていただろうって事で
 みんな久しぶりって言うようにしてるんです」
そんな会話をしているとぞろぞろと他の旅人達も近づいてきた。
「久しぶり!来るのが遅いですよ!食材とか買って来たんですか?」
「ごめんごめん、どのくらい人が来るかわからなくてちょっと買い物に手こずっていて。
 それよりみてみてーーーさんだよ!さっきちょうどこのエリアに来ているのを見つけ
 て連れてきたんだ!」
旅人たちは青年の顔を見るといろんな感情を見せた。
笑っている者もいれば動揺している者もいる。少し不機嫌な顔をする者もいた。
「ひ、久しぶりです…」
青年がそういうと旅人たちは色んな事を話始めた。
何年もこの世界に定期的に来ては思い出に浸っていた人や
この世界を見て感じたことを絵や歌や小説のような形あるものに残している人
久しぶりにこの世界を見て懐かしさを感じる人達から色々な話をきいた。
そんな中一人の旅人が大声をあげた
「ほら!―――さん困ってるでしょ?早く会場作らないと―――さん以外の人も
 来ちゃいますよ!ほらみんな設営に戻って」
その一言で旅人たちは持ち場に戻った。
会場の設営は旅人たちが自分の得意としているところを担当しているようだ。
青年はパーティ会場を歩いているとメンバーのイラストを描いている旅人と出会った。
旅人は青年に気づくとにこりと笑った。
「あぁ―――さん久しぶりです」
「お久しぶりです。今お話しても大丈夫ですか?」
「いいですよ、どうかしましたか?」
青年はこの世界で旅をしている人の生の声が聞きたかったのでインタビューを始めた。
「○○さんですね、たまにあなたのイラストが目に入って昔をよく思い出してましたよ」
「ありがとうございます!そういってくれるとうれしいです!」
「変な事を聞くかもしれませんがなぜ未だにこの世界を描いてくれるのでしょうか」
青年が聞くと旅人は少し悲し気な顔になり答えた。
「そうですね、いくら動かなくなったといっても私の中でこの世界が生きがいだから
 ですかね。それにこうやって描いてると今日来てくれた人たちみたいにあの頃を
 懐かしんでくれる同胞が共感してくれるってのもありますね」
仲間づくり、共感、生きがい…そうだとするとこのコンテンツが動いてないのは
やはり苦なのではないのか?
もう動くこともないかもしれない世界なんだ。それでも残そうとする意味はなんなんだ。
青年の中で濁った感情がふつふつと湧き上がってくる。
その靄を消し飛ばしたのは旅人の純粋な声と笑顔だった。
「やっぱりまだ縋っていたいんですよね、私たちが熱中した世界、私たちの青春に
 多分―――さんもそうですよね」
縋っていたい…一度はかかわりを消したこの世界に?
自分で呪いだと思っている世界に?
そうか、純粋にただただ「楽しい」で作り上げていたこの世界を僕は愛していたんだ
愛ゆえに憎悪にも変わったし溺愛故の呪いを受けているのではないかと青年は考えた。
何もなくなってしまった瓶の中に愛情だけがぎっしりと詰まっている
未完成のまま残ってしまった世界に色んな人たちが愛情や思い出を詰め込んで
新しい形に残している。
いつ誰が戻ってきてもそれに答えようとしているこの世界が亘った歴史と
その愛情を鮮明に受け青年は涙した。
「―――さん!どうしたんですか?なんか変な事言いましたか?」
「いえいえ、ごめんなさい。つい感情が込み上げてしまって。
 僕にできることがあったら気兼ねなく言ってください何かこの世界に
 そしてこの世界を愛してる人たちに恩返しが出来たらなと思って」
青年がそういうと旅人はまた笑顔で答えた
「そうですね、今日だけでもこの世界がにぎやかになってくれればって思いますかね」
にぎやかにする…この世界に対する恩返しにコンテンツとしての答えがあるのではないか
青年は一生懸命に考えてとある答えを出した。
「ちょっと手伝ってほしい事があります。僕と一緒に来てくれませんか?」
「え?いいですけど」
「ありがとうございます!じゃあ早速行きましょうか!」
「あのどこに行くんですか!」
青年は旅人の手を取って街エリアの一番奥の梯子で天井まで登った
「うわ、思ったより高いな」
「はぁはぁ、―――さんここで何するつもりですか?」
旅人が登ったのを見て青年は大声を出した
「おーいこの世界に来なくなった旅人たち!今日が何の日か忘れてんのか!
 この世界の10回目の誕生日だぞ!!早くこっちに来て一緒に祝おうぜ!」
「え、何するかと思ったら大声で呼ぶだけですか?」
「ここだったら誰かに届くかなって思って、旅人さんも一緒に」
そういうと旅人も大きな声でさけんだ
「だ、だれかーそこに居るならぜひこっちに来てください!
 きっと楽しいパーティになりますから!」
「いいですね!ほらもっと叫びましょ!」
青年の答えは単純な物だった。
だが、こんなにも愛されているコンテンツに何か付け加えるよりかは
呼びかけるのが正しいだろうと思い叫び続けた。
多分馬鹿にする人もいるだろうがそんな奴らは無視しておけばいいと思ったし
我儘だと叫ぶ人もいるだろがそれもこの世界の形なのだろうとがむしゃらに叫んだ。
叫び疲れて二人とも息を切らして蓋の上に寝転がった
「こんなんで本当に来るんですかね」
「さぁ、わかんないですけど僕はすっきりしたしこれに共感してくれた人は
 きっと来ますよ」
「―――さんらしいですね」
青年と旅人はたくさん笑って街エリアへと降りた。
天井から降りてパーティの準備に戻ろうとした青年に旅人が話しかけてきた。
「あの!―――さん、協力してほしいことがあるんですがいいですか?」
「え?はい、パーティまで時間もありますしお手伝いさせてください」
青年が答えると旅人はうれしそうな顔をした。
「ありがとうございます!ちょっと植林場だったとこに一緒に行きましょうか」
意外な場所を提案されが青年は旅人についていくことにした。

植林場エリアは草木が枯れて土だけが残っていた。
「こんなとこで何するんですか?」
「そうですね、ちょっとこれ見てほしいんですけど」
旅人は苗木を取り出した。
「え、苗木ですか?まぁ植林場だし…でもなんで今更植えようとしてるんですか?」
旅人は笑顔で答える
「むしろ今だからなんですよ。これを植えることで来年も来る意味ができるわけですよ」
「なるほど、【理由】を作るわけですね」
「そうです!そうです!記念樹って奴ですね。折角植えたから来年綺麗に育っていて
 ほしいですね」
青年は近くにあるスコップをもって穴を掘り始めた
「そうと決まれば木を植えちゃいましょうか。ついでに花の種も探して来ますね」
「いいですね!私も一緒に探します!…でも、いいんでしょうかね」
旅人は悲しそうな顔をした
「どうしたんですか?」
「その、私とかってこの世界を見ていただけの人だったから、勝手にこういうことして
 いいのかなって不安が少しありまして」
青年は笑って答えた
「まぁこんな大きな空地なんて誰かが着飾らないと汚れたままになりますから
 みんなの思い出の場所ですから綺麗なまま残ってるのがいいですからね」
「そうですよね!じゃあ植えちゃいましょ!」
「勝手に植えちゃって怒られたらその時っすよ」
「―――さんらしいですね」
青年と旅人は一生懸命に木と花を植えた。
その作業を見ていた他の旅人たちも手伝ってくれて思ったより早く作業は終わった。

街エリアではパーティの準備が大詰めとなっており
青年も持って来たお酒や食べ物を提供し掃除や飾り付けを手伝って来客を待った。
日が沈んで来て辺りは音楽やイラスト等でどんどんと彩られ
魔法瓶に巻きつけた電球や松明でライトアップされていた。
するとどんどんと来客が食材や飲み物をもって会場に来て団欒を始めた。
旅人は青年に向かって問いかける
「声、聞こえたみたいですね」
「ほんとに聞こえてたんですかね。まぁ聞こえてたってことにしましょうか」
青年は笑顔で答えた。
これから素敵なパーティが始まるのだ。
誰かは歌い、誰かが描いたイラストが各所に貼られていて会場の真ん中にある
モニターでは開拓をしていた頃の映像が写し出されていた。
「懐かしいなぁ、というかちょっと恥ずかしいんだけど」
「まぁ数年前ですからね。―――さんも子供だった頃だし」
「ほんと歳は取りたくないものだね」
青年が旅人と話をしていると街エリアの入口付近に少年が立っているのを見つけた
「旅人さんごめんなさいちょっと席外しますね」
「え、わかりました」
青年は旅人と別れて街エリアの入口に向かった。
「また会ったね。その感じだと少しは自分の求めてた答えにたどり着いたって感じかな?」
「まぁね、今日で色々感じれることができたし素敵な一日だったよ」
「なるほどね、じゃあ最後に素敵な物を見せてあげるよ。ついてきて」
少年は青年の手を握って街エリアの階段を降りた。
「おい、もう少しゆっくり歩いてくれよ。ってかどこに連れて行こうとしてるんだ」
「いいからいいから、黙ってついてきてよ」
青年は全力で少年を追いかけ最初の本拠地についた。
目を上に上げるとそこには開拓者たちの影が円形に並んでいた。
少年はふわっと浮き上がり開拓者の円陣に入った。
「さぁ君がずっと思っていることをそろそろ僕ら【呪い】にぶつけてごらん」
少し戸惑ったが青年は質問を投げかけた。
「おい!俺がこの世界に置いてきた呪いたちに聞きたい!俺は今後どこに進めばいい。
 何をすればいい。教えてくれ!!」
青年の問いかけてに影たちはゆっくりと体を動かした。
そして影たちは四方八方に指を指す。途中で消えてしまった影や両手を広げて抱き締めて
こようとする影もいた。
その光景に青年は笑って答えた。

「そうかいそうかい。俺は俺の道を進めってことね了解したよ」
青年はそう答えるとカバンに入っていた小さな魔法瓶にその場にある土をいれて
街エリアに戻り旅人たちとのパーティを続けた。
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