本当の私

第一章

第六話 いじめの始まり

授業も順調に進んでいき、もうすぐ昼食タイムが迫っていた。
「どうしよう～どうしよう～」
休み時間に福田が小声で呟いていた。そんな彼女をよそにクラスの女子グループが陰口を言っていた。
「あいつ男らしいよ…」
『何それ、キモ』
「男なのにあんな体…」
『絶対毎晩自分の体でやってるよね…』
「ガチキモい」
彼女は小声で言ってるつもりだったが、普通に福田の耳に届いていた。
「…」
でも、彼女はちっとも傷つかなかった。こんな酷い言葉を言われるのは最初ではなかった。
その上、昔はさらにいじめられていて、暴力もされていた。なのより、一番親しい父親も自分に対して暴言を言われたり、暴力を振られていたりした。
「ん～」
彼女は背伸びをした。
「やばい、ガチでどうしよう…」
窓から外の風景を眺めていた。でも、彼女の左側には浅野が座って本を読んでいる。
えっ？待って、もしかして俺見られてる？浅野は勝手にときめいていた。いくら、性別が男だとわかっても、体や外見はどう見ても女、だからそういう目で見てしまうのは仕方。しかも、根っからの陰キャだったので、女子と話すなんて英語の交流に授業くらいだった。
「ねえ、浅野くん…」
「え？」
浅野の顔はますます赤くなる。人生で初めて女子に声をかけられたのだ。
「なななんだよ…」
福田が浅野の目を見つめる。恥ずかしくなった浅野は無意識に目を逸らした。
「ちょっとさあ、小声で話すから近づいて…」
「ちちちちち近づく！？」
「声大きい…シー」
「ごごごめん」
浅野が顔を福田に近づける。
「わたしは弁当忘れたんだけど…よかったらお裾分けしてくれない？」
「え？まあ、いいけど…」
「ありがとう！」
福田が浅野の両手を握った。
「いや～本当にありがとう、もし浅野くんがいなかったらもうどうしようかと…」
「ええええええ！？ああああ～」
～ランチタイム～
「浅野くん～行こ」
「うん…」
浅野が周りの目を気にしていた。
「何後ろで小さくしてんの？横で並ぼうよ～」
「え？ああ…」
浅野は人生で一番緊張していた。初めて女子と一緒に歩くのだから…
「浅野くんってさあ、どんなことが趣味？」
「え？僕？」
「君しかいないじゃん～」
「僕は、本読みくらいしか趣味はないよ…」
「本か～わたしも昔は読んでたな～漫画を」
「それは本読みとは…」
そんな感じで話していると、生徒たちがご飯を食べれる食堂的な広場に着いた。食堂と言いつつも、弁当を食べるスペースなので、別にお金払ってご飯が食えるわけではない。
「弁当がなくても割り箸はあるんだ！はは！早く早く！」
「あ、ああ…」
2人は隣に座った。そして、浅野が弁当が開ける。
「浅野くんのお母さんに感謝！いただきます～」
「あ…お母さん…まあいいや、いただきます…」
「すごく美味しそうだね！これ食べていい？」
「うん…」
福田は入っていたおかずを食べた。
「うまい！本当に今日はありがとうね」
「うん…」
そんな感じで2人は一緒に弁当を食べた。
「ごめんね今日は、そのせいで浅野くんの食べる量が減っちゃった…」
「大丈夫…僕は少食だから…」
「へえ、じゃあまたお裾分けに来ようかな～」
福田がニヤリと笑った。
「それは少し困る…」
「はは～」
しかし、そんな2人の仲良い姿をよく思わない奴らがいた。
そう、あの女子グループだった。
「キモ、あの2人キモすぎんだろ…浅野ってゲイだったのかよ…」
「ガチで一回死んだ方がよくね？」
「それな」
その日の帰り道、浅野はいつものルートで帰ろうとしていたら、その女子グループに声をかけた。
「おい、浅野」
その女子グループのリーダー的な女子が浅野に声をかけた。
「え？ななななに？」
「はっきり言ってさ、気持ち悪いんだよ…」
「…」
「あんたまさか福田が好きじゃないよな？」
「…」
「黙ってねえでなんか言えよ！」
その瞬間、その女子は浅野の股間を蹴った。
浅野に激痛が走り、股間を押さえて地面に倒れ込む。
「ざ～こ。女子にやられるなんて、それでもあんた男？」
「ああ…痛い…」
「次は福田をいじめてやるから、あんたはもうあの子に関わるなよ。じゃなきゃ、そのブツ切り落としてやる。」
「うん…わか…った…」