本当の私

ニタマゴ

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第一章

第五話 弁当

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今回が初めてではなかった。
中学生に入ってから、病気のことが発覚してから、彼女は何度も挫折した。性別を隠すこともあったが、そう隠せるものではなかった。
バレるたびに彼女は転校しなければいけなかった。昨日まで仲良くしていた友達も、先生も、PTAの人にも、みんな白い目で見られるのだ。
性別なんて消えてしまえばいいのに…そう思うと、彼女は目が覚めた。
そのまま机で寝ていた。
「げっ!歯磨きしてない…」
口の中がネバネバだった。彼女は気持ち悪い口を我慢しながら歯を磨いた。
「ぺッ!」
うがいをして、机に置きっぱなしの皿洗って、学校に行く準備をして…
「なんで学校に行かなければいけないんだ…どうせ行っても、どうせ行っても…」
「はあ~」
「やらねば…」
バッグを背負い、玄関開ける。鍵を差し込みドアをロックする。
一歩一歩と駅へと近づく、改札を通り、電車に乗る。
彼女は席に座りスマホを取り出した。母親は夜からから朝まで働く、そこで彼女は急に思い出した。弁当ない。
母親はいつも午後に作っておいて冷蔵庫に置いとくのだ。でも、今日の朝急いでたせいで取り忘れてしまった。
ガチかよ、最悪と心の中で彼女は呟く。スマホのマップで学校周辺を調べた。
残念ながら一番近いコンビニでも1kmはあった。代わりに、大きなショッピングモールがある。
駅についてから、学校まで歩く時間を含めても時間は少しだけ余裕がある。
「走ればどうにかなるだろう…」
電車の扉が開き、彼女は一番で飛び出して、マップのルートに沿って小走りでショッピングモールへと向かった。
彼女の学校には売店も給食も存在しない。だから今のうちに買わないとランチがなくなってしまうのだ。
やっとの思いでショッピングモークについた彼女だが、ここである問題に気づいた。
「やばい、お金ない…」
でも、諦めがつかなかった彼女はスマホの交通系ICを見た。あと1200円入っていた。
「買ったら帰れないじゃん…」
大きなため息をついて彼女は学校へと向かった。
「最悪だ~」
少し遅れて学校に着いた。チャイムはとっくに鳴っており、転校2日目で遅刻したのだ。
「すみません!遅れました!」
教室のドアを勢いよく開けて、福田さんは教室に入った。
その光景にみんな驚いていた。
「あっああ…」
担任の佐藤先生が少し戸惑っている。福田さんの事情について聞いたのだろう…
「まあ、まだ朝のホームルーム始まってないけど…ギリギリアウトかな…次回から気をつけて…」
「はい」
福田さんの隣には恥ずかしそうに座っている男子がいた。いくら、男だと言われても昨日のあんな姿を見たら流石に気になって仕方ない。
「ねえ?君の名前は?」
福田が聞いた。
「え?え?僕?」
メガネをかけている大人しそうな男子で、末に言う陰キャだった。
「ぼぼくは、ああああ浅野…」
「浅野くんね。なんでそんなに緊張してるの?昨日のせい…?」
「いや、そうではないんだ。」
「昨日はごめんね。わたしが悪かった。」
「きき君のもじじじ事情があったととと思うよ」
「ありがとうね」
佐藤先生が名簿を持ってみんなの前に立った。
「はい、おはようございます。これからホームルームを始めます。」
「まず、今日の時間割は…」
顔は落ち着いていた福田だったが、かなり焦っていて、首元には汗が大粒となって流れた。
弁当がない上に昨日のせいで誰にも助けてもらえない気して、昼飯をどうすればいいのか迷っていた。
「まあ、色々あるとは思いますが…みなさん、福田さんをちゃんとフォローしてあげてくださいね!」
急に自分の名前を言われて驚いた福田声を上げた。
「え!?」
全員が福田を見る。
「あっ、すみません…」
「はい!これで朝のホームルームは終わりです。」
先生が大声を出して注意を引いたおかげ福田は助かった。
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