男色医師3

虎 正規

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恒例行事

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 2月14日。
 「これ、逆チョコです」
 「あら、ありがとう」
 校舎裏で黒河からリボンつきの箱を受け取る女教師。

 授業中。
 「え、え~。ここは・・・で、あるからして・・・」
 なにやらもじもじしているその女教師。 
 スーツのタイトスカートから伸びた足を内股にもじもじこすり合わせている。
 ぐるっ、ぎゅる。
 ごろごろごろ・・・。
 「うっ・・・うっ・・・」
 顔面蒼白。
 冷や汗が浮かび、歯を食いしばっている。
 「え~、・・・」
 後ろを振り返ったその姿はタイトスカートの尻を手で押さえている。
 「先生、我慢しないでトイレに行ってきたらどうですか?」
 生徒の一人が言った。
 「な、何言ってるの?トイレなんか行きたくないわよ」
 涙を浮かべた眼で振り向いて無理に笑顔を作る。
 ちらちらと時計を見る。
 彼女がトイレに行きたがっているのは誰の眼からも明らかだ。
 「先生、強がってないで早く・・・」
 「うるさいわね、うんこなんてしたくないわっ!」
 「いえ、誰もうんこなんて一言も言っていませんよ」
 「あっ!」
 思わず口を押さえた。
 ぐるっ、ぎゅる。
 ごろごろ・・・。
 「ううっ!」
 スーツの上からうなる腹をさする。
 まるで小動物が腹の中でうごめいているかのようである。
 「今日は・・・2月14日だったっけ?」
 「そう、バレンタインデーよ」
 「やはりな・・・」
 生徒たちが言い出した。
 「や、やはり・・・?」
 女教師は相変わらず腹に五本の指を下に向けた状態の手をあてたまま青ざめた顔で訊いた。
 「先生、黒河先生の逆チョコ食ったでしょ?」
 男子生徒が訊いた。
 「え、ええ」
 女教師が応じる。
 「毎年バレンタインデーには教員用女子トイレに長蛇の列ができるのが恒例行事なんです」
 「ど、どうして・・・?」
 ゴロゴロピーピー。
 「黒河先生はゲイだから女嫌いでね・・・」
 「毎年この日は女性教諭に下剤入り逆チョコを配っているんです」
 「な、何ですって・・・?うぐっ!」
 改めて腹痛がぶり返してきた。
 「もう毎年のことなんでみんな覚えちゃって逆チョコもらっても食べずに捨てているんですけどねー」
 「先生新任なんでご存じなかったんですね」
 「そ、そんな・・・」
 「だから先生、早くおトイレに・・・」
 「あの保険医~、覚えてらっしゃいよ!」
 女教師は教室を飛び出した。

 黒河は口元を手で押さえ、くすっと笑った。
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