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因縁

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 団体戦当日。
 試合会場の控え室に林ボクシングジムの面々が詰め掛けた。
 「なあ、虎。ここに来て何か思い出さないか?」
 米が訊いた。
 「ここは・・・あのときの試合会場ですね?」
 虎が言った。
 「そうだ、俺と星野が試合した後でお前がこの控え室に来て出会ったんだったよな(ラスト・タイガー本編第一話参照)」
 虎の頭の中にあのときのことがよぎった。
 そうだ・・・あの時米さんがここに座っていた・・・。
 そこに僕が来て・・・。
 あのときから僕のボクシングが開始されたんだ。
 オリンピックに出るまで、オリンピック。
 そしてワールドツアー。
 プロフェッショナエルデビューを果たしてから世界チャンピオンになったラリー・シンバとの試合。
 寅一との二階級制覇戦。
 すべてはこの部屋からスタートしたんだ。
 「虎、龍はヘビー級のパンチ力と軽量級のスピードを備えた中量級といわれているんだ」
 林会長が言った。
 「本当に実力者と認めたものとしか戦わないと評判でね、チャレンジャーとして指名されること自体名誉なこととされている」
 山羊マネージャーが言った。
 「よく言えば、な」
 という声が聞こえた。
 「ただし死刑宣告ともいうぜ」
 そちらを見ると
 「龍!」
 龍が控え室に入ってきていた。
 「虎、あのときからの因縁。いよいよ決着つけられそうだな」
 龍が言った。
 「おうよ!」
 虎が龍の正面に行き、向かい合った。
 にらみ合う両者。
 「し、しかし龍。ウェルター級じゃなかったのか?」
 米が訊いた。
 「階級を落としたんだよ」
 龍が応じた。
 「おや、あのあざが消えたな」
 米がたずねた。
 「ああ、逆鱗のことかい」
 龍はあの稲妻型のあざのことをそう言っていたらしい。
 「あのあざはどうしてできたんだ?」
 虎が問うた。
 「雷に打たれたのさ」
 龍が答えた。
 やはりリュウは雷を呼ぶのだろうか。
 「お前もあの傷がなくなっているな」
 「治ったんだよ」
 「ふん」
 龍は虎に背を向けた。
 「では後ほど」
 控え室の戸をくぐりつつ振り返りながら
 「リングで!」
 
 
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