きえいる君へ

yamadatarou

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もう一人の友達

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 放課後三人は一緒に、優子の入院している病院へ向かった。途中花屋で、小さな鉢に入ったかわいらしい花を買っていく。

 優子の入院している白崎病院は、結構な坂の上にあった。

「どうして、こんな、人が、行きにくい、所に、病院を、建てるのかしら?」

 亜希は息をぜーぜー言いながら、坂を登り呟いた。

「同感だよーー。」

 陽介もぜーぜー言いながら話す。

「亜希、苦しいなら背中押してやろうか?」

 一哉だけ妙に元気だ。後ろから手を伸ばす一哉に対し亜希は振り返り、

「絶対やめて!」

 と言い放ちキッとにらんだ。

『怖えーー』

 一哉は陽介の元へ逃げた。

 坂を登り終え、なんとか病院に着いた三人。中に入ると病院特有の匂いがする。

「どうもこの消毒みたいな匂い、あんまり好きじゃないんだよな。」

 一哉が入るなりそう言った。

「好きな奴はいないんでね?」

 陽介が相槌を打つ。一哉は院内を見まわしてみると、車椅子に乗る人、点滴を棒に吊るし、パジャマ姿で移動する人、膝を気にしてる人など、いろんな人達が何らかの悩みを抱え、その表情はみな憂いをひそんでいる。

「何してんの?先行くわよ。」

 亜希がとっとと先に行ってしまう。

「待ってくれよ、亜希~~~。」

 陽介と一哉は亜希を追いかけて、優子のいる病室へと向かった・・・。

 501号室、ここが優子の入院しているしている病室だ。

 コンコン

 とノックを鳴らし

「優子ー、入るわよー。」

 そう言って亜希が先頭に病室に入る。

「ああ、みんな、来てくれたんだ。」

優子はニッコリ微笑んで三人を迎えてくれた、しかしその笑顔はどこか弱々しかった。優子は左右に髪を束ね、上体だけ起こしテレビを見ていたようだ。入院生活が長いためか彼女の肌は白く、その弱々しい両手を布団の上に重ね合わせていた。彼女の着るピンク色のパジャマと、病室の白いカーテンのその淡い色合いはまさに彼女 そのものであった。

 四人はしばらく取り留めもない話をした。学校のクラスメートの事や、部活動の事、日常あった事。しかし一哉は旧校舎で峰原 雪子に出会った事は伏せていた。とり憑かれていない陽介ですらあの反応なのに、病弱な優子が聞いたら、やっぱりショックだろうと思ったからだ。

「あたし、お手洗い行って来るね。」

そう言って亜希は立ち上がった。

「で、でかいのか?」

 一哉はびくびくしながら、しかし明らかに言ってはいけないことを事を言う。

 すると亜希は近くにあった雑誌で、おもむろに一哉の頭をはたいた。

 スパーン

 いい音が病室にこだまする。

「バカ!」

 真っ赤になって亜希は病室を出て行った。

「俺もトイレに行ってくるよ。」

 そう言って陽介は立ち上がった。

「あ、逢引か?」

「はっはっはっ、一哉そんなんだからはたかれんだよ。」

 陽介は笑いながら病室を出て行った。


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