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第6章
閑話 (フェルナンドSide)
しおりを挟む私が寝室に入ると、風で揺れたカーテンの先にイシスの長い黒髪が見えた。
ん?外に出たのか?
私と同じ…薄いガウンを身に着けたイシスが静かに月を見上げている。
「…きれい…」
綺麗なのは君だよ。
純白のウエディングドレス姿は…一生記憶から消えない。
煌めくスレンダーなドレスはイシスにピッタリだった。
白い衣装と漆黒の髪の組み合わせは神秘的で、気品に溢れたイシスの姿や所作に…招待客全員が感嘆の声をあげた。
美しい妻が、やっと…私のものになる。
月を半分覆っていた雲が退くと、スポットライトを浴びたように…イシスがパアッと輝く。
月光を通して身体のラインが薄布に映し出され、透けて丸見えになっているみたいだ。
「…っ!…」
私は咄嗟に目を背ける。
見てはいけないものを目にしてしまった…。まだ早い。
「せっかくだから、少し飲むか?」
用意されていたワインをグラスに半分ほど注いで手渡すと、イシスは私の頬に冷えた手を添えてきた。
「もう、酔いは冷めたの?」
「今日は…イシスとの大切な夜だからね」
酔っ払っている場合ではない。絶対に。
“大切な夜”と聞いて恥ずかしくなったのか、イシスは頬を染めてゴクゴクとひたすらワインを飲み出した。
んん…?…そんなに一気に飲んで大丈夫か?
焦った私はイシスからグラスをサッと取り上げ、代わりに甘いフルーツを口に入れてやる。
「…あっ、…………むぐっ…ん?……おいし…」
目を覚ますように何度も瞬きしながら、モグモグとフルーツを咀嚼している。このあどけない様子…はぁ…可愛い。
しばらくの間、次々とフルーツをつまんでは口へと運ぶイシスの姿を見つめていた。
もうワインは飲ませられないな。酔っ払ったら…困る。
「イシス、そろそろ…私にも食べさせてくれないか?」
「んっ?あ、はぁい!どうぞ~!」
おや…もしかして手遅れだったか?
かなりご機嫌な様子で、フルーツを私の口元へと差し出すイシス。
その手を掴み、腰を引き寄せ…強引に抱え上げた。
「あっ…きゃあっ!」
ゆったりしたソファーの上で、イシスは私の腰を跨いで向かい合わせに座った状態になり…戸惑っている。
「は…はい。フルーツ…を…どうぞ…?」
「フルーツ?…いや…私が食べたいのはイシスだよ…」
笑いながらそう言って優しく抱き締めると、薄布に包まれたイシスの胸に少し顔を埋めたような状態になる。
ドキドキと心音が聞こえて…あたたかい…。
私はイシスの胸はほどよい大きさだと思っている。というか、あの劣悪な栄養状態でここまで育てば…十分だろう?
「え?…あっ…、…っ…ん?……何か……」
少し身を捩ったイシスは、私の身体の一部が硬く勃ち上がっていることに気付いてしまったようだ。
薄布1枚しか身に着けていない…君の色気のせいだよ。
「あぁ、コレは…さっきからずっと…」
仕方がないだろう?今日解禁しないで、いつするんだ。
「も、もう…フェルったら…」
イシスはフルーツを私の口に押し込むと、真っ赤になって黙ってしまった。
「…イシス…君が欲しい…」
私はイシスを見上げ、腰を撫でながら懇願する。
イシスの全てが欲しい…今日はたっぷりと愛し合いたい。
「あ…私も、……フェルが……欲しい…わ」
そう言ってから、イシスは両手で顔を覆った。
──────────
「…ふふっ…くすぐったい…」
私はイシスの身体中にキスをし…舌を這わせ、優しく…時に強く吸い上げた。
「…んっ……恥ずかしい……あまり見ないで…」
柔らかな月明かりの中、夜着のリボンを解かれ白い肌を晒し…喘ぎながら恥じらう…堪らなく愛おしい妻を抱く。
「そんなこと考えられないくらい…愛してあげる」
互いの肌を合わせるというのは、これほどまでに感情を昂ぶらせるものであったのか。
汗ばんだイシスからは誘うような甘い匂いがして、小さく細い身体で懸命に私を受け入れようとする姿に欲情した。
…理性を保てなかった…
眠ってしまったイシスの身体を拭き清めた後は、私の部屋のベッドへと運んで寝かせる。
何度も愛し合った夫婦のベッドは想像以上に激しく乱れ…この淫靡な空間では落ち着いて眠れないと思った。
イシスを休ませてあげたいのに…また…抱きたくなる。
──────────
翌朝、目を覚ますと…私の腕の中で裸のままのイシスがスヤスヤと眠っていた。
これほど幸せで、満たされた気持ちの朝は初めてだ。
昨夜、耳まで真っ赤にして“私を欲しい”と言ったイシスを思い出し…顔がニヤけた。
「…可愛い…」
熟睡中のイシスの柔肌には、赤い所有印が…山ほど。
これは…やり過ぎたな。
私は、上掛けをイシスの首元までそっと引き上げた。
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