上 下
100 / 110
第6章

閑話 (フェルナンドSide)

しおりを挟む

私が寝室に入ると、風で揺れたカーテンの先にイシスの長い黒髪が見えた。

ん?外に出たのか?

私と同じ…薄いガウンを身に着けたイシスが静かに月を見上げている。


「…きれい…」




綺麗なのは君だよ。

純白のウエディングドレス姿は…一生記憶から消えない。

煌めくスレンダーなドレスはイシスにピッタリだった。
白い衣装と漆黒の髪の組み合わせは神秘的で、気品に溢れたイシスの姿や所作に…招待客全員が感嘆の声をあげた。


美しいイシスが、やっと…私のものになる。




月を半分覆っていた雲が退くと、スポットライトを浴びたように…イシスがパアッと輝く。

月光を通して身体のラインが薄布に映し出され、透けて丸見えになっているみたいだ。


「…っ!…」


私は咄嗟に目を背ける。
見てはいけないものを目にしてしまった…。まだ・・早い。






「せっかくだから、少し飲むか?」


用意されていたワインをグラスに半分ほど注いで手渡すと、イシスは私の頬に冷えた手を添えてきた。


「もう、酔いは冷めたの?」

「今日は…イシスとの大切な夜だからね」


酔っ払っている場合ではない。絶対に。


“大切な夜”と聞いて恥ずかしくなったのか、イシスは頬を染めてゴクゴクとひたすらワインを飲み出した。

んん…?…そんなに一気に飲んで大丈夫か?

焦った私はイシスからグラスをサッと取り上げ、代わりに甘いフルーツを口に入れてやる。


「…あっ、…………むぐっ…ん?……おいし…」


目を覚ますように何度も瞬きしながら、モグモグとフルーツを咀嚼している。このあどけない様子…はぁ…可愛い。
しばらくの間、次々とフルーツをつまんでは口へと運ぶイシスの姿を見つめていた。

もうワインは飲ませられないな。酔っ払ったら…困る。





「イシス、そろそろ…私にも食べさせてくれないか?」

「んっ?あ、はぁい!どうぞ~!」


おや…もしかして手遅れだったか?

かなりご機嫌な様子で、フルーツを私の口元へと差し出すイシス。
その手を掴み、腰を引き寄せ…強引に抱え上げた。


「あっ…きゃあっ!」


ゆったりしたソファーの上で、イシスは私の腰を跨いで向かい合わせに座った状態になり…戸惑っている。


「は…はい。フルーツ…を…どうぞ…?」

「フルーツ?…いや…私が食べたいのはイシス・・・だよ…」


笑いながらそう言って優しく抱き締めると、薄布に包まれたイシスの胸に少し顔を埋めたような状態になる。

ドキドキと心音が聞こえて…あたたかい…。
私はイシスの胸はほどよい大きさだと思っている。というか、あの劣悪な栄養状態でここまで育てば…十分だろう?


「え?…あっ…、…っ…ん?……何か……」


少し身を捩ったイシスは、私の身体の一部が硬く勃ち上がっていることに気付いてしまったようだ。

薄布1枚しか身に着けていない…君の色気のせいだよ。


「あぁ、コレ・・は…さっきからずっと…」


仕方がないだろう?今日解禁しないで、いつするんだ。


「も、もう…フェルったら…」


イシスはフルーツを私の口に押し込むと、真っ赤になって黙ってしまった。






「…イシス…君が欲しい…」


私はイシスを見上げ、腰を撫でながら懇願する。
イシスの全てが欲しい…今日はたっぷりと愛し合いたい。


「あ…私も、……フェルが……欲しい…わ」


そう言ってから、イシスは両手で顔を覆った。



──────────



「…ふふっ…くすぐったい…」


私はイシスの身体中にキスをし…舌を這わせ、優しく…時に強く吸い上げた。


「…んっ……恥ずかしい……あまり見ないで…」


柔らかな月明かりの中、夜着のリボンを解かれ白い肌を晒し…喘ぎながら恥じらう…堪らなく愛おしい妻を抱く。


「そんなこと考えられないくらい…愛してあげる」


互いの肌を合わせるというのは、これほどまでに感情を昂ぶらせるものであったのか。

汗ばんだイシスからは誘うような甘い匂いがして、小さく細い身体で懸命に私を受け入れようとする姿に欲情した。

…理性を保てなかった…






眠ってしまったイシスの身体を拭き清めた後は、私の部屋のベッドへと運んで寝かせる。

何度も愛し合った夫婦のベッドは想像以上に激しく乱れ…この淫靡な空間では落ち着いて眠れないと思った。


イシスを休ませてあげたいのに…また…抱きたくなる。



──────────



翌朝、目を覚ますと…私の腕の中で裸のままのイシスがスヤスヤと眠っていた。

これほど幸せで、満たされた気持ちの朝は初めてだ。


昨夜、耳まで真っ赤にして“私を欲しい”と言ったイシスを思い出し…顔がニヤけた。


「…可愛い…」


熟睡中のイシスの柔肌には、赤い所有印が…山ほど。



これは…やり過ぎたな。


私は、上掛けをイシスの首元までそっと引き上げた。






    

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で急に前世の記憶が蘇った私、生贄みたいに嫁がされたんだけど!?

長船凪
ファンタジー
サーシャは意地悪な義理の姉に足をかけられて、ある日階段から転落した。 その衝撃で前世を思い出す。 社畜で過労死した日本人女性だった。 果穂は伯爵令嬢サーシャとして異世界転生していたが、こちらでもろくでもない人生だった。 父親と母親は家同士が決めた政略結婚で愛が無かった。 正妻の母が亡くなった途端に継母と義理の姉を家に招いた父親。 家族の虐待を受ける日々に嫌気がさして、サーシャは一度は修道院に逃げ出すも、見つかり、呪われた辺境伯の元に、生け贄のように嫁ぐはめになった。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します

もぐすけ
ファンタジー
 私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。  子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。  私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。  

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...