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第6章

78話

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明日の結婚式と披露パーティーを終えたら、私たち夫婦は住まいを移すことになる。

今夜は家族全員で食事をしながら、楽しい時間を過ごす。




「カイラが落ち着いたら、あなたたちの新居へ遊びに行くわね。元皇族所有のお邸だなんて、今から楽しみだわ」


あら…お義母様には、高価な美術品の数々を詰め込んだ・・・・・お部屋をぜひご紹介しなきゃ!


「部屋は余っていますから、泊まっていけばいいですよ?母上」

「フェル、女性は泊まりとなった瞬間…荷物が山のように増えるものなのよ?
泊まるより、しょっちゅう遊びに行くほうが効率的なの」

「しょっちゅう…来ます?」

「あなたに来るな・・・と言われても、行くわ」

「……………」

「フェル、夜まではお邪魔しないってことよ?オホホ」


微妙な顔をするフェルナンド様を見ながら、上機嫌で笑うお義母様。





うん。
侯爵家では、これがいつもの楽しい家族の団欒です!


このやり取りがなくなったら、きっと寂しくなるわ。




──────────




「イシス様、とてもお綺麗ですよ。本日は誠におめでとうございます」

「「「「おめでとうございます!」」」」


朝早くから私の身支度を手伝ってくれた…ミリアムさんとアリエルさん、そして3人のメイドたち…全員からお祝いの言葉をいただいた。


「ありがとうございます」

「今日は私がお側におりますので、何かありましたらお声がけください」


ミリアムさんの優しい笑顔を見ていたら、緊張も解れてくるような気がする。とても有り難いわ。


「先ずは…フェルナンド様をお呼びしてまいります。もう廊下を行ったり来たり…忙しない・・・・ご様子なので」


ミリアムさんがウフフと笑って部屋を出て行く。




──────────




「…イシス…?…準備できたって…?」


フェルナンド様は、そーっと扉を開けて入ってきた。
あらら?忙しないご様子だと聞いていたけれど…?


「はい…できましたわ。どうですか?旦那様」

「……………」


ふり向いた私を見て、ボーッと…扉の前で突っ立ったまま動かないフェルナンド様。


「…フェル…?…どう…?」

「あ、あぁ…イシス………き…綺麗だ…とても…」


『信じられないくらいにね』…と、そう呟きながら私の元へゆっくりと近付いて来る。


「真っ白なウエディングドレスを着た君が、これほど美しいとは…一瞬声が出なかった。さぁ…よく見せて…」


濃いブルーの瞳が、私の頭の先から足の先までをじっくり丁寧に眺めていく。

今日は、フェルナンド様も私に合わせて白い衣装に身を包んでいる。素敵な花婿姿…とても凛々しい。


「フェルも似合っているわ」

「そうか…?…私はイシスの引き立て役だろう?」


そう言って甘やかに微笑むと、白い手袋に覆われた私の手をそっと取り…口づける仕草をした。



「肩が出ていることは気になるが…ドレスが似合い過ぎている…。はぁ…これでは何も文句が言えないな」


あ、やっぱり気になる?





「「「「イシス!」」」」


お義父様とお義母様、アンディ義兄様、カイラ義姉様がお部屋に来てくださいました。


「イシス、ウエディングドレスよく似合っているわ!」

「ありがとうございます、お義母様」


お義母様の手には、美しいキャスケードブーケが…。


「はい。このブーケはタチアナ様からの贈り物よ。イシスのために…ご自分でアレンジされたんですって」

「…えぇ!…本当ですか?…タチアナ様ったら…」


タチアナ様は、芸術面でも素晴らしい才能とセンスをお持ちなのね。

『はい、フェルもよ』と、お義母様はフェルナンド様の左胸にも私のブーケと同じ花飾りを付けた。


「2人への祝いとして、エリック殿下やクリストファー殿下、グレイツェル公爵家から贈られてきた花が凄いんだ…会場はもう花だらけになっているんだぞ」


お義父様は、手を大きく広げてそう仰る。


「まぁ、そんなに?」

「大袈裟にするのはやめてくださいと…何度も言ったんですがね」


フェルナンド様ったら…。皇族や公爵家の方々からのご厚意は、そう簡単にお断りできるものではないでしょう?


「イシス、可愛い義妹…幸せになるのよ。私はブルックがいるから出席はできないけれど、邸の隅から見守っているからね」

「はい、カイラ義姉様。今日は、レイとジェシーをお借りいたしますわ」

「2人とも、ベール・ボーイとベール・ガールができると大喜びで…昨夜はなかなか寝なくて困ったくらいだよ。

…大事な本番で転ばなきゃいいが…」


アンディ義兄様が要らぬ心配をしている。



そういうことを言うと…本当にそうなったりするのよ。
可愛い甥っ子と姪っ子が心配だわ。



“先読み”しておこうかしら…?






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