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第3章

37話(ガーラント辺境伯Side)

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「フェルナンド殿、本当によく来てくださった。心から感謝申し上げる。また…先ほどは大変失礼をした。

申し訳ない…この通りだ」


私は深く頭を下げた。


「おやめください、ガーラント辺境伯。
辺境伯軍の皆様方と同様に…私とイシスも、この地を守るために全力を尽くすつもりです」


やはり、フェルナンド殿は我々を救うためにイシス嬢を連れて来られたのだな。


「…この度は…アレン殿のこと…本当に残念です。…シルフィ嬢は…」

「シルフィは地下で眠っております。意識がないので苦しんではおりませんが、長くはないでしょう」

「……それは……」


言葉に詰まり…眉根を寄せていたフェルナンド殿が、覚悟を決めたように顔を上げる。


「シルフィとの婚姻の件…ですかな?」

「はい。…私は…シルフィ嬢との婚姻のお話をお受けできません。申し訳ございません」


フェルナンド殿の濃いブルーの瞳は、私の目をしっかりと捉え…揺るがない意志を伝えてくる。


「理由を…」


『理由を聞かせて欲しい』そう言うつもりだったのだが…何やら外が騒がしく…気が削がれてしまう。


「ドミニク様!大変です!」

「何事だ!」

「飛龍が!」

「何っ?!また飛龍だと!」


立て続けに襲来するとは、一体どうなっている?!
いや、それよりも…今の我々の戦力で立ち向かえるのか?!


「監視の魔導具をすり抜けたようです!
見張り塔から“赤い飛龍”との知らせがありました!

イシス様は、飛龍が来ると我々に知らせながら…部屋を飛び出して行かれました!」


イシス嬢が?!

フェルナンド殿を見ると、すでに部屋を出て行こうとしていた。


「…っ!!…イシスはどこへ向かった?!」

「おそらく、城の最上階だと!」

「ガーラント辺境伯、私はイシスの元へ先に向かいます。飛龍討伐の武器を持って後から来ていただきたい!」

「承知した!」




──────────




城の最上階は飛龍を攻撃するために屋根部分を少なく、足場を広くした特別な構造だ。

大型の黒い飛龍を倒すため、専用の大弓砲バリスタも数多く設置してある。


飛龍討伐用の極大な鏃が付いたクロスボウを用意し、ジェンキンスを連れて急ぎ城の最上階へ向かうと、城の北側全体が幾重にも重なった青白く光るシールドに覆われていた。

日ごろから城全体にシールドを施してはあるのだが、それとは全く違うものだった。


「ギィイィーーー!!」
 

赤い飛龍が炎を吐き出しながらシールドに何度も体当たりをしている。
飛龍は、シールドに弾き返された自分の炎を浴びて叫んでいるのだ。


何だ?炎を弾いて…壊れないシールドだと…?


イシス嬢は屋根に立って、勇ましくも赤い飛龍と睨み合っていた。


風が吹けばバランスを崩すような不安定な場所で、両手から小さな魔法陣を次々と生み出している。

ブツブツと何か呟くと、その小さな魔法陣がスーッとどこかへ飛んでいく。
しばらくすると“ヴウン”という奇妙な音と同時に、新たなシールドが現れた。

やはりイシス嬢か。あの小さな魔法陣が、なぜあんな巨大なシールドになるのだ…?


飛龍が炎を撒き散らし何度目かの体当たりでやっとシールドを破壊したところで、両手を使い同時に2つのシールドを張り巡らせるイシス嬢のほうが数で上回る。


…しかも…早い…。


飛龍は明らかに体力を消耗し始めている。

襲来から時間はそう経っていない…にわかには信じがたい光景だった。

飛龍襲来の知らせを受けて最上階へとやってきた兵士や魔術師たちも、戸惑いを隠せない。


「フェルナンド殿!」


私の声に気付いたフェルナンド殿は、屋根から降りてきた。




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