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18 リュウからの相談(デイルside)

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入国審査の勤務を終えた俺は、すぐにリュウが宿泊している宿屋カンデールの【501号室】を訪ねた。

今朝の入国ゲートでのやり取りについて詳しく話を聞くためだ。


「それで、相談って何だ?」

「腹減ってないか?」

「…………」

「今朝は本当に助かったよ。…食事もご馳走する…行こう」


“本当に助かった”なら、もっと声を張り上げて喜べよ。相変わらず…淡々と話す男だな。


リュウは、客室備え付けの小引き出しから金の詰まった封筒を取り出し、ポンと俺に手渡すと…そのまま背中を押して室外へと促した。

2人で1階の食堂まで下りる。
俺はたっぷり肉の入ったシチュー、リュウはステーキを注文した。

食堂は混雑していたから、料理を待つ間に聞きたい話を先にしておく。


「今朝のは…一体どういうことだ?」


食堂の窓から外を眺めたまま『あの子、訳ありでね』と、リュウは俺に言った。


…だろうな…


聞いたところで納得できる理由なんてないよな。


「金は有り難く受け取るぞ」


俺がため息を漏らしながらそう言うと、リュウはニヤリと口の端を上げた。


「当然だな…だが、見逃しただけの報酬にしては多過ぎる額だぞ。他にも協力して欲しいな」

「はぁ?……それが相談か?」

「ま、そういうことだ」

「お前、本当に英雄だろうなぁ?」

「英雄?…何だそれは?」


リュウは、首を傾げながら俺の顔をまじまじと見つめてくる。

…無駄に整った顔しやがって…
そんなに見つめられたら、こっちは恥ずかしいし眩しいわ。そりゃ女難の相もあるだろうよ!


…まさか、相談って…女関係か…?


「ところで、エリーゼは元気か?」

「あぁ、仕事も慣れてきたみたいだ」


妹のエリーゼは18歳になったばかりで、1年前から小さな子供の世話をする養護院で働いている。

俺たちの両親は冒険者で、ある日突然2人一緒に死んだ。やっとの思いで俺とエリーゼは今まで生きてきた。
養護院で働くのは、エリーゼにとっては恩返しだ。

そこからは、俺の妹がどんだけカワイイか、力説してやったわ。


──────────


「お待たせしました!シチューとステーキでーす!」


元気いっぱいの店主の長女、看板虎娘のリーリアさんだ~めちゃくちゃ美人でスタイル抜群だな~


「いただきまーす!」

「召し上がれ……食べながらでいいから、俺の話も聞いてくれ」


リュウは周りを見渡すと『ちょっと仕切る』と呟く。

ほんのり光る指先で、テーブルの端をクルリと一周なぞるように触れてから…話しはじめた。


「…昨夜なんだが…」


リュウの話によると…リマ王国から逃げてきた貴族令嬢が、追手に襲われ怪我をしたという。
偶々そこに居合わせたリュウが、仕方なくガンダナ王国で令嬢を匿っているんだそうだ。

その“訳あり令嬢”は追われているから、ガンダナ王国に入国したことを隠すには不法入国しか選択肢がなかったらしい。
 
「アドリアナさんの身の安全が確認できたら、こっそりと入国手続きをしようと思っているんだ」

「それ、本当に可能なのか?」


逃げた理由にもよるだろうけど…世間的にはそのご令嬢は今行方不明になってる状態で、お前は誘拐犯だぞ?と、非難しながら…シチューのスプーンでリュウを指す。


「細かいことは俺も分からない、ただ…あの場に放置できなかっただけだ。
入国手続きは、デイルがいればいつでも可能だろう?」

「…つまり、王国への“こっそり入国手続き”の審査官も、また俺がするわけね?」

「…賢いね…」

「…ん?…うん」


リュウがクックッと珍しく笑った…何だよ…。


「金、受け取ったし断れないだろ」

「……………」

「とりあえず…今日の夕方、エリーゼも一緒にリンデルの薬屋に来れないか?
エリーゼならアドリアナさんと歳も近いし、話し相手になってくれるだろう?」

「エリーゼに聞いておく。けど、そんなに期待はしないでくれよ」


エリーゼは、お前に助けられてからずっと憧れちまってるんだからな。その“訳あり令嬢”とやらにヤキモチを焼くかもしれないぞ。


なーにキョトン顔してんだ…

分かってないのか?この鈍感男め!



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