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いざ、競技会!

第186話 一つになる ※

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 松明の灯りが、光太朗の裸体に陰影を作る。その美しさに心を搔き乱され、リーリュイは悩まし気に眉を寄せた。

『今この時だけで良いから、俺の事を覚えておいて欲しい』

(……君は……ひどい男だ。……いや……一番辛いのは、光太朗自身か……)

 光太朗は知らない場所で、差別に晒されながら必死に生きてきた。
 やっと心安らげる場所が出来たというのに、今はそれすらも取り上げられそうになっている。
 それでも彼は取り乱すことが無い。自分の運命を呪う事もしない。

「リュウ……? 眉が寄ってる」

 光太朗は手を伸ばし、リーリュイの眉に触れた。そして眉間に指を滑らせ、とんとんと叩く。

「悩まし気な顔も、男前だなぁ……」
「……光太朗は、綺麗だ……」
「俺が? そんな事ないだろ」

 首を横に振りながら、リーリュイは光太朗の下腹部へと手を伸ばした。緩く勃ち上がったそれを、手の平で包み込む。
 突然与えられた感覚に光太朗の身体が跳ねる。眉に触れていた手が、縋るようにリーリュイの肩へと回された。
 リーリュイが手を上下させると、光太朗がいやいやと首を振る。

「りゅ、う……! だめっ……」
「……どうした?」
「きょう、は………体力に、自信ない……」

 顔を真っ赤にして、光太朗は熱い吐息を零す。悩まし気な表情をするのは、今度は光太朗の番だった。
 肩に触れている光太朗の手が、小刻みに震える。懇願するような瞳を向けられ、リーリュイの肚の底が思わず疼いた。

「俺……イかされたら、きっと落ちちまう……。最後までやりてぇって言ったろ?」
「……善処する」

 リーリュイは名残惜しそうに、光太朗の陰茎から手を離した。そのまま腰を撫で、太腿まで指を滑らせる。
 くすぐったさに身を捩る光太朗の胸に、リーリュイは唇を落とした。そこから伝わってくる鼓動に、愛おしさが込み上げる。

「かわいいな、光太朗」
「うっせ、はやく…………っっつあ!?」
「! 熱い……」

 窄まりに指を這わせ、その柔らかさにリーリュイは驚いた。指を差し入れると、まるで歓迎しているかのように吸い付いてくる。
 発熱のせいで中が熱く熟れていて、普段は押し返される指がどんどん埋まっていく。

「っあぁ!? ……まって、なんか、へん、だ……っ!」
「すごく柔らかい。それに熱い……」
「ゆび……っふや、すな……。っつぅう……んんっ!」

 指を増やすと、光太朗から呻き声が漏れた。唇を噛み締める光太朗を叱るように、リーリュイは指で大きく輪を描く。
 中にあるしこりが擦れ、光太朗は耐えきれず嬌声を上げた。

「っっう!? あぁぁあッ!!」
「声、我慢しない」
「まってぇ、りゅ……! っつあ、つよすぎるってぇ……ぇっ!!」

 軟膏を足しながら、リーリュイは指を好き勝手に動かした。痙攣する光太朗の腰を押さえ、3本目も埋め込む。
 足先が毛布を蹴り上げ、嬌声が悲鳴のようなものに変わる。快感に翻弄される光太朗の顔を、リーリュイは恍惚と見つめた。


 指の動きを止めると、光太朗はぐったりと身体を毛布へ沈ませる。その眦に溜まった涙に、リーリュイはそっと口づけた。

「……光太朗……身体は辛くないか?」
「っっぅ……ぁ。……へい、き……」
「君は……信じられないくらい可愛いな……」

 リーリュイが蕩けそうな顔で笑うと、光太朗は泣きそうな表情へと変わった。真っ赤な顔をした彼は、自身の下腹部に手を添える。

「……やっぱ、無理そう? 俺のここに、リュウの入んない?」
「…………っ」
「入れてほしい。すこしでも良いから……」

 また眦に溜まり始めた涙を見て、リーリュイは眉を下げた。
 愛おしくて堪らない。いっそ食べてしまいたい。この身体の一部にしたい。そんな欲望が腹の底から這い出てくる。

 まだ荒い吐息を吐く光太朗の唇を、リーリュイは塞いだ。果実のような舌を甘噛みすると、彼の眦から耐えきれなくなった涙が零れ落ちる。
 橙色の灯りを映した涙は、ころりと転がって光太朗の耳を濡らした。

(……綺麗だ……。こんなに美しいものが、他にあるものか……)


 リーリュイは自身の前を寛げて、熱く昂ったものを取り出した。そして光太朗の足裏を掴むと、高く掲げる。
 光太朗が息を呑む音が耳に届いた。こくりと唾を嚥下する音すらも愛おしく、頬が蕩けてしまう。

「すこしじゃ済まないぞ、光太朗……」
「……っ望むところだ、リュウ……」

 窄まりに先端を押し付け、腰を進める。指とは比べ物にならない程の圧迫感に、光太朗は目を見開いた。
 身体を堅くした光太朗を見下ろして、リーリュイはその頬を撫でる。

 優しく頬を撫でられて、光太朗はゆっくりと息を吐く。そのタイミングを見計らったかのように、リーリュイが一気に腰を推し進めた。
 目の前がちかちかと点滅し、息が詰まる。頭が真っ白に染まった後、堰を切ったかのように嬌声が迸った。

「っあぁ……!? あっあぁああああアァッ!!」
「っ、熱い……。溶けそうだ……」

 指で感じた何倍も、光太朗の中は熱かった。馴染ませるようにゆっくり動くと、光太朗が身を捩る。

「……っうぅっ……りゅ、う……」
「っ光太朗、つらい?」

 リーリュイが問うと、光太朗は首を横に振った。そしてその口元に笑みを作る。

「……りゅ、は……きもち、いいか?」
「…………まったく、こんな時も君は……」

 笑みを形作る光太朗の唇に、触れるだけのキスを落とす。耳元に唇を寄せて、リーリュイは熱い吐息を吐いた。

「気持ちいいに決まってる。こんなに幸せなことはない」
「……俺も、本当に幸せだ」

 光太朗は呟くと、また下腹部に手を添えた。

 本当に幸せだった。圧迫感や苦しさを、多幸感が包み込んで和らげてくれる。
 リーリュイが自分の一部になった気がして、心が安堵感で蕩けそうだ。

 見上げると、優しい笑顔を浮かべるリーリュイがいる。その顔を見た瞬間、ぶわりと涙が溢れ出した。
 喉の奥から嗚咽と共に、想いが流れ出る。

「……大好きだ、リュウ……! 俺を見つけてくれて……ありがとう……」

 笑みを浮かべていたリーリュイの顔が、くしゃりと歪んだ。彼の美しい緑の瞳に、きらきらと輝きを放つ膜が張る。
 頬に落ちてきた雫は、彼の想いそのものだった。

「私も、大好きだ……。光太朗、愛してる……」

 光太朗の胸に、リーリュイが額を押し付ける。光太朗はその髪に指を差し込んで、抱き寄せた。
 
(このまま、リュウの一部になれたらいいのに……)

 想いと快感がない交ぜになって、意識が緩く溶けていく。多幸感に包まれたまま、光太朗はリーリュイに身体を預けた。





 ___ 次章に続く。
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