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戦いに向けて
第134話 自覚は突然に
しおりを挟むリーリュイはテラスの端に腰掛けていた。目の前の庭園を見ることはなく、彼は夜空を見上げている。
光太朗はリーリュイの隣に座り、彼の肩に頭を押し付けた。温かくて強い肩だ。
リーリュイは少しだけ身体を強張らせると、大きく息を吐く。
「実を言うと……。入浴している君を見て、私は大いに昂った。一緒に入ることなど、到底無理だ」
「……ああ。風呂の件は、俺もごめん……」
「急いで風呂を出て、酒を1本空けた。……結果、悪酔いしてしまったようだ。すまない」
「だから酔ってたのか! 気分は? 気持ち悪いか?」
リーリュイは頭を横に振ると、また溜め息を吐いた。
「君を……押し倒してしまった。怖くは無かったか?」
「ぜーんぜん、怖くなかった。……もしかして、性欲抑えようとして、あんな難しい話してたのか?」
「……本当に、醜態を晒してしまったな」
「そんなことないだろ」
光太朗は顔を上げ、リーリュイを見上げた。
顔を僅かに赤らめている彼を見て、光太朗の目尻がふにゃふにゃに蕩ける。
「かぁわいいなぁ、リュウは」
「……可愛くなどない。愚か者だ。……それに君を、傷つけるところだった」
リーリュイは許しを乞うように、光太朗の双眸を覗き込んだ。
その姿はまるで、尻尾を垂れる大型犬のようだ。こんな姿を見せられては、きっと何でも許せてしまう。
「例えあんたが、泥酔してげろげろ吐いても、フラフラになって這いずり回っても……俺はあんたを可愛いと思うよ。……可愛いっていうか、愛しいが近いかな。俺……こんなに人を愛しいと思ったこと、ないんだ」
「……っ」
「俺はリュウが大好きだ。それに、あんたと身体を繋げたいとも思った。……だからこの感情は、きっと愛だ」
リーリュイが息を詰め、目を見開く。
月の光がリーリュイの瞳に反射し、薄緑色へと変化する。これほど綺麗なものは、どこを探してもきっと無い。
この瞳が映すものが、自分だけだったらどれほど幸せだろう。
___せめてこの夜だけでも、自分のものになるだろうか。
「大好きだ、リュウ。ごめん、やっと自分の気持ちに向き合えた」
「……光太朗……」
「えっと、さ。どうか、お手柔らかに……少しずつ進めて頂くと……幸い、です」
たどたどしく言うと、リーリュイから抱き締められた。リーリュイは光太朗の肩口に顔を埋めながら、ぽつりと呟く。
「これは、夢か?」
「夢じゃない。……でも明日、リュウは覚えててくれるかな」
「忘れるはずない。酔いも吹き飛んだ」
リーリュイから顎を掴まれ、光太朗は目を閉じる。唇に柔らかな感触が伝わり、リーリュイの香りが鼻腔をくすぐる。
胸の奥がじんわりと熱くなると、今度は抱きかかえられた。
光太朗を抱きかかえたまま、リーリュイは歩き出す。行先が予想できた光太朗は、ばくばく鳴る心臓を治めるために、リーリュイの胸に縋った。
寝室は、リーリュイの私邸よりも豪華だった。
天蓋は2重になっており、ここにも金の刺繍が施されている。ベッドは泳げるほどの大きさだ。
寝台に優しく降ろされ、また唇を奪われる。次第に濃くなっていく口づけに、光太朗は狼狽えた。
「り、リュウ、ちょっと待った! 言いたいことが……! 事前に申告したいことがございます!!」
「……うん?」
身を起こしたリーリュイから這い出て、光太朗はその場に正座した。
リーリュイもその場に、胡坐をかく。
マオと関係を持っていたリーリュイは、きっと同性との経験も豊富なのだろう。しかし光太朗はそんな経験もないし、どちらかというと避けていた方だ。
「……リュウ、俺の尻の穴は……恐らくかなり狭い。外部からの侵入を許したのは、座薬ぐらいしか無いんだ」
「ざやく?」
「お尻から入れるお薬の事だ。……それでな、えっと、あんたの息子さんなんだが……凶器かな?」
リーリュイの股間をちらりと見た光太朗は、その大きさに口を引き結ぶ。
厚めのガウンを持ち上げるほどに膨張したそれは、服の上からでもかなりの大きさだと認識できた。
「これでも、まだ完全ではないが……」
「うっそ、まじかよ……。あんたのちんこ、ちぎれちゃうんじゃないかな……」
「ここにきても、君は人の心配か」
「当たり前だろ。未来の王様のちんこだぞ」
リーリュイは片眉を吊り上げると、正座をしている光太朗はにじり寄った。そして光太朗の肩を掴んで、寝台へと優しく押し付ける。
「君はそうやって、この場を茶化そうとしてるだろう? 言っておくが、前言撤回は出来ないぞ」
「て、撤回なんてしねぇよ! ただ……俺、男とは初めてで……っひゃッ」
突然首筋を吸い上げられ、光太朗は口を覆った。変な声が出てしまった事に赤面していると、リーリュイがくすりと笑う。
「……心配しなくても、今日は最後までしない。君を傷つけない事が、最優先だ。僅かでも痛い思いをさせない。……君が辛いなら、この先ずっと挿入なしでも構わない」
「そ、それじゃ……リュウは満足できないだろ?」
「入れて出すだけが、セックスではない」
唇を重ねられ、リーリュイの舌が潜り込んできた。大きくて厚い舌に、口内を撫でまわされる。
口の中が埋め尽くされ、思考がぼんやりと霞んでいく。しかし熱は確実に高まっていった。
光太朗は顔を紅潮させ、必死で口づけに応じた。しかし高鳴る心臓も相まって、上手く息が吸えない。
口の端から唾液が一筋落ちると、リーリュイがそれを舌で舐め取る。
「……君は、信じられないくらい可愛いな」
「……うっせ。どうせキスが下手ですよ……」
口を尖らせて言うと、リーリュイの手が下へ伸びた。股間をガウン越しにするりと撫でられ、身体が跳ねる。
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