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魔導騎士団の専属薬師
第38話 怒涛の一日 昼 ①
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(……本当に、恐れていた事態が起きてしまった……)
ミカ達が帰った後の昼過ぎ、キュウ屋には騎士たちが続々と訪れた。
特にウルフェイルが引き連れてきた集団は、街中の人が振り返るほどに大所帯だった。光太朗は嫌な予感を抱きながらも、彼らを迎え入れる。
そして今。
光太朗の目の前には、やっちまったという顔を浮かべるウルフェイルが。そしてその足元の床には、巨大な穴が開いている。
ウルフェイルが踏み抜いた床は、派手な音を立てて割れ落ちた。その音を聞いて、彼の後ろに控えていた騎士たちから騒めきが広がる。
「どうしたんです? 大丈夫ですか!?」
光太朗が「来るな」と叫ぶ前に、騎士たちは店の中に流れ込んできた。体格の良い男たちが塊になって押し寄せ、傷んだ床はさらに単語む。
ばきばきという不穏な音と共に、床の穴は見事に広がった。床下からほこりが舞い上がり、騎士たちは揃って「まずい」という顔を浮かべている。
光太朗は彼らに怪我がないことを確認して、やっと深いため息を吐き出した。
「……良かった。大きな怪我が無くて」
「き、キュウヤ、さん、あ、あの……」
「痛いところがある人は申し出てくれ。無料で治療するから」
光太朗はぱたぱたと埃を払うと、換気するために窓を開ける。そのあまりに淡白な反応に、ウルフェイルは更に慌て始めた。
「こ……コウさん? す、すまない。弁償させてくれ」
「? 弁償? 店舗に不備があったのは、俺の責任だからいらないよ」
「いやいや、そういう訳にはいかない。俺が最初に開けた穴は問題ないとしても、被害を拡げたのはこちらが悪い」
申し訳なさそうに言うウルフェイルを見て、光太朗は眉を顰めた。
騎士たちというのは、民間人より地位が高い。フェンデはその民間人よりも地位が劣るのだ。普通なら何をされても文句は言えない。
ずっと感じてはいたが、光太朗が過去に見てきた騎士たちと、この魔導騎士団はどうも違う。
あまりに親切にされると、逆に猜疑心を抱いてしまう。
眉を顰めてしまった光太朗へ、ウルフェイルは声を掛けた。
「コウさん。俺たち魔導騎士団は、民を等しく大事にする。疑うことなく、こちらに弁償させてくれ」
「……キュウヤ、これは弁償させて当然の事だって。俺たちのこと信じて、修理させてくれよ」
ウルフェイルとロブに説得され、光太朗は唸った。
床の被害の状況は、部分的に修理するだけじゃ済まなさそうな規模だ。元は廃屋だったから、どこもかしこも老朽化している。
どう考えても、騎士たちだけのせいではない。
「元から古かったからなぁ。何か申し訳ないな……」
「コウさん、そんな風に思わなくていい。直ぐに手配する。修理中も営業が出来るように配慮する」
「明日は店休日なんだ。急がなくても良い」
光太朗がそう言うものの、騎士たちはもう動いていた。いつの間にか数人がほうきを手に、店中を掃き始める。
光太朗が慌てて手伝おうとすると、ウルフェイルがそれを制した。
「コウさん。ちょっと話していいかい?」
「……? 何?」
「……リーリュイっていう男を知ってる?」
「ああ、知ってる」
光太朗が頷くと、ウルフェイルが目を丸くした。
その表情を疑問に感じながらも、光太朗はウルフェイルへ問いを投げる。
「ウルフは、まさか彼の上司か?」
「い、いや。コウさん、リーリュイの役職を知らないのか?」
光太朗が首を横に振ると、ウルフェイルが困ったように髪をかき回した。
(……本当に、恐れていた事態が起きてしまった……)
ミカ達が帰った後の昼過ぎ、キュウ屋には騎士たちが続々と訪れた。
特にウルフェイルが引き連れてきた集団は、街中の人が振り返るほどに大所帯だった。光太朗は嫌な予感を抱きながらも、彼らを迎え入れる。
そして今。
光太朗の目の前には、やっちまったという顔を浮かべるウルフェイルが。そしてその足元の床には、巨大な穴が開いている。
ウルフェイルが踏み抜いた床は、派手な音を立てて割れ落ちた。その音を聞いて、彼の後ろに控えていた騎士たちから騒めきが広がる。
「どうしたんです? 大丈夫ですか!?」
光太朗が「来るな」と叫ぶ前に、騎士たちは店の中に流れ込んできた。体格の良い男たちが塊になって押し寄せ、傷んだ床はさらに単語む。
ばきばきという不穏な音と共に、床の穴は見事に広がった。床下からほこりが舞い上がり、騎士たちは揃って「まずい」という顔を浮かべている。
光太朗は彼らに怪我がないことを確認して、やっと深いため息を吐き出した。
「……良かった。大きな怪我が無くて」
「き、キュウヤ、さん、あ、あの……」
「痛いところがある人は申し出てくれ。無料で治療するから」
光太朗はぱたぱたと埃を払うと、換気するために窓を開ける。そのあまりに淡白な反応に、ウルフェイルは更に慌て始めた。
「こ……コウさん? す、すまない。弁償させてくれ」
「? 弁償? 店舗に不備があったのは、俺の責任だからいらないよ」
「いやいや、そういう訳にはいかない。俺が最初に開けた穴は問題ないとしても、被害を拡げたのはこちらが悪い」
申し訳なさそうに言うウルフェイルを見て、光太朗は眉を顰めた。
騎士たちというのは、民間人より地位が高い。フェンデはその民間人よりも地位が劣るのだ。普通なら何をされても文句は言えない。
ずっと感じてはいたが、光太朗が過去に見てきた騎士たちと、この魔導騎士団はどうも違う。
あまりに親切にされると、逆に猜疑心を抱いてしまう。
眉を顰めてしまった光太朗へ、ウルフェイルは声を掛けた。
「コウさん。俺たち魔導騎士団は、民を等しく大事にする。疑うことなく、こちらに弁償させてくれ」
「……キュウヤ、これは弁償させて当然の事だって。俺たちのこと信じて、修理させてくれよ」
ウルフェイルとロブに説得され、光太朗は唸った。
床の被害の状況は、部分的に修理するだけじゃ済まなさそうな規模だ。元は廃屋だったから、どこもかしこも老朽化している。
どう考えても、騎士たちだけのせいではない。
「元から古かったからなぁ。何か申し訳ないな……」
「コウさん、そんな風に思わなくていい。直ぐに手配する。修理中も営業が出来るように配慮する」
「明日は店休日なんだ。急がなくても良い」
光太朗がそう言うものの、騎士たちはもう動いていた。いつの間にか数人がほうきを手に、店中を掃き始める。
光太朗が慌てて手伝おうとすると、ウルフェイルがそれを制した。
「コウさん。ちょっと話していいかい?」
「……? 何?」
「……リーリュイっていう男を知ってる?」
「ああ、知ってる」
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その表情を疑問に感じながらも、光太朗はウルフェイルへ問いを投げる。
「ウルフは、まさか彼の上司か?」
「い、いや。コウさん、リーリュイの役職を知らないのか?」
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