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汚名を雪ぐ
51. すりおろした林檎
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ボルエスタは修道院の廊下を急ぎ足で歩いていた。
すれ違う度に挨拶してくる修道女に、社交辞令の笑みを浮かべながら返事を返す。
(随分と遅くなってしまった)
とうに陽は沈み、空は黒く染まっている。
アカラ風邪の対応は夕食後まで及び、王宮では全員に処置が施された。民にも同時に薬を届けたので、もうアカラ風邪は脅威ではなくなったはずである。
消えた薬王とたつとらの説明は、チャンがやってくれたようだ。国王が回復するまでには会せるように言われたようだが、守る気はさらさら無い。それほど今回のたつとらの状態は悪かった。
修道院でのたつとらの部屋は、少し離れた所にある。扉にアカシアのレリーフがついた部屋で、ボルエスタは過去何度もそこを訪れた。
部屋の前にいつも身の回りの世話をしてくれるシャナが見え、ボルエスタは歩を緩めた。
シャナはボルエスタを認めると、少し申し訳なさそうに微笑む。その表情を不思議に思いながらも、ボルエスタは微笑みを返した。
「シャナ、こんばんは。彼は……」
シャナが扉の前に立ちふさがるように立つので、ボルエスタは口を噤んだ。まさか状態が悪いのか、とボルエスタが顔を青くすると、シャナが否定するように首を振って微笑んだ。
「たつとら様からの言伝で『大丈夫だから、帰って休んで』との事でした。お薬を飲んで眠った時に、院長が点滴も打っておりますので、今もまだ眠っておいでです」
「そうですか。良かった。顔だけでも……」
部屋に入ろうとするボルエスタを、シャナが手で制する。
「駄目です」
まるで子供を窘めるようにシャナは言う。普段そんな対応をされたことのないボルエスタは、固まって口を引き結んだ。
「朝からずっと働き通しだから、今日は早く帰って休まれるように、と言われております。部屋に入れたら絶対帰らないから、入れてはいけないとも言われております」
「……っ!そんなこと彼に言われたくない。彼が今日一番力を尽くした筈で、労わなければいけないのは彼だ」
何時になく声を荒げるボルエスタに、シャナは優しく微笑んだ。年上の彼女は、まるで弟を慰めるかのような顔を浮かべている。
「ボルエスタ様、お顔に疲労の影が浮かんでおります。そのお顔では、たつとら様が気に病むでしょう。たつとら様は自分よりも人を優先させるお方です。あなた様が一番お分かりでしょう?」
そう言うとシャナは深くお辞儀をした。
「どうかあの方の意図を汲んで、お帰り下さい」
ボルエスタは彼の部屋の窓を見上げた。厚いカーテンがぴっちり閉めてあり、そこから中を窺う事は出来ない。
そこに彼が横たわっていると思うと、居た堪れない気持ちになる。今すぐ行って、髪を掬って顔を見たかった。
だけどそれは、自分の勝手な我儘なのかもしれない。
黙って背を向けると、廊下を歩き出す。脚が重くて、気持ちも鉛のように重い。
シャナに返事もせずに去ったことにも申し訳なさで一杯になりながらも、ボルエスタは自分の部屋へ歩を進めるしか無かった。
__________
たつとらが目を覚ましたのは夜明け前のことだった。
大量に汗をかいていて、熱が大分下がったのが自分でも分かる。未だ怠さと痛みは残るものの、咳も軽くなってきたようで、ほっと息を吐く。
常夜灯のランプだけが輝く暗がりの中、誰もいないソファを見た。
(良かった。ちゃんと帰って寝てくれたみたいだな)
良かったと思う反面、ソファに寝るボルエスタの姿が脳裏にちらつき、心臓がツキリと痛んだ。たつとらは、痛みを発した自分を戒めるように唇を噛む。
ボルエスタは自分の専属医師ではない。本当はこの国の軍医なのだ。
軍医と言うのは貴重で、知識も体力も兼ね備えた者でないと務められない。ウェリンクに必要な人材を、自分という人ならざるものが独占し埋もれさせてはいけないのだ。
アカラ風邪が蔓延したその時も、ボルエスタという医師が国にいたらもっと違ったかもしれない。
汗で湿った服を脱いで、院長が用意してくれていた新しい服へ着替える。サラリとした感触に微笑むと、側で眠る狐を撫でた。
まだ起きる気配は無いが、元よりこの狐は良く寝るので違和感はない。
(ゆっくり休んで、元気になるんだよ)
藥王を包み込むように横になると、目を瞑ってそのままゆるゆると力を注ぎ込む。
腕の中にいる薬王はほのかに温かい。その温度が気持ちよくて、たつとらはまた眠りに落ちて行った。
__________
ポツポツと目蓋の上に水が落ちてきて、たつとらは目を薄く開いた。雨?なんで雨?と思いながら、瞳をパチパチさせながら上を見上げる。
そこには朱い瞳に涙を湛えながら自分を見下ろす、藥王がいた。
「しゅ……らく?」
目覚めたたつとらを薬王は睨み付ける。ベッドの上で覆いかぶさるようにしながら薬王は恨めし気に口を開いた。
「兄ぃ、力注いだやろ」
「え、と、いや……」
薬王はそのままたつとらをギュッと抱きしめると、その胸に耳を押し当てた。
「こんなに肺をゼロゼロ言わせとって、ほんま何しとんねん」
「ゼロ、ゼロ?」
「……ヴィティさんも、ようこんな音させてたな」
ああ、とたつとらは眉を寄せた。
聖女ヴィティは身体が弱く、特に呼吸器官を良く悪くしていた。聖女になる前からの持病らしく、度々喘鳴をさせて苦しそうだったのを思い出す。
「ごめん、早く、良くなればと、思って」
「ほなら、俺にも注がせぇ」
それを聞いたたつとらが、藥王の下でもがき始めた。
「駄目、だ!!ぅ、ゲホ、朱楽!!ダメだ!!!」
もがいてもびくともしない藥王の胸を力任せに押していると、その手を掴んだ藥王がまた泣き出した。
またポタポタ落ち出した涙にたつとらが狼狽えてると、悔しそうに顔を歪ませる藥王が口を開く。
「……兄ぃ、ヴィティさんと、何があったんや?……お願いやから、俺には言うて?」
「……朱、楽?聖堂でのこと……」
問うまでもなかったと思い、たつとらは口を引き結んだ。泣き止まない藥王を見上げながら、たつとらは困った様にその濡れた目の下を拭った。
「ヴィテさんは、何も、悪いことは、していない。朱楽、泣くな」
「これはヴィテさんのせいなんやろ!?何もしてないわけないやんか!」
そこまで言うと、部屋の扉が豪快に開いた。現れたシャナが、驚愕のあまり上ずった声を上げる。
「だ、だ、だ、誰ですかあなた!!!たつとら様から離れなさい!!」
薬王がシャナに剣呑な視線を送ると、たつとらが慌てたように薬王の腕を掴んだ。
「おはよ、シャナ。この、人はね……」
「お前こそ誰や!今ええとこやねん!邪魔すんなや!!」
良いとこって、と言いながらシャナが顔を赤くさせる。何やら勘違いをしている彼女にたつとらが慌てていると、杖をついた院長が現れた。
「あらあら、朱楽、目が覚めたのね」
やけに冷静な院長を見てシャナは落ち着きを取り戻し、薬王は院長を睨み付けた。
「……誰や。その名で呼んでええのは兄ぃだけやぞ」
「ふふ、朱楽は相変わらずね。勝手に朱楽と呼んでいる者たちもいること忘れた?」
薬王はたつとらを見て、何かを思い出すかのように上を向いた。そして、忌々し気に院長を見て口を開く。
「お前口やかましい柚都やな?えらいババ、むぐっ」
薬王の口を押さえたたつとらが、院長を見て気まずそうにしている。その顔を見て、院長が声を立てて笑った。
「いいのですよ。私は老いて婆になりました。朱楽もナナシ様も変わらず綺麗で羨ましいわ」
たつとらが薬王の腕を叩くと、薬王は名残惜しそうに彼から離れた。たつとらはベッドの上に胡坐をかくと、ペコリと頭を下げる。
「おはよう、柚都」
「おはようございます。ナナシ様。体調はいかがでしょうか」
大丈夫だよ、と言うたつとらの額に院長の手の甲が押し当てられる。
ヒヤリとした感覚に驚いてたつとらが院長を見ると、彼女は眉根を寄せたまま困り顔をしている。
「まだ熱が高いですね。朱楽と遊んでいては、体調も戻りませんよ」
「え?あれ?大分、良くなったけど……」
院長はシャナに体温計を持ってくるように言うと、聴診器を取り出して胸の音を聞く。
「昨日の熱が異常に高かったからそう感じるだけです。……胸の音は少し良くなりましたね」
脇に挟んでいた体温計を院長が確認し、「38度8分」とシャナに言う。シャナは管理表のようなものにメモを取り、心配そうにたつとらを見つめた。
「人は肺を傷つけられると、多くが肺炎を引き起こします。肺の機能が落ちているからです。色々なお薬を試しますが、しばらく熱は続くかもしれません。安静にすることが一番ですよ」
「……分かった。面倒を、かけます」
またぺこりと頭を下げるたつとらに、院長は少女のように快活な笑顔を見せた。
「何を言いますか。またお世話出来て、嬉しくて仕方がありません」
たつとらは困った様に笑顔を返すと、側で寛ぐ薬王を見る。
「朱楽も、まだ、ゆっくり……」
「分かった分かった。ええから兄ぃは寝ぇ!」
ぐいぐいと寝床に押しやられ、仕方なく毛布を引き上げる。しかし視線の端に見える院長の顔が陰っているのが見て取れ、たつとらは「どうした?」と問いかけた。
院長はしばらく考えた後、少し眉を下げてたつとらを見る。
「変な風に伝わるといけませんから、話しておきますね。……ボルエスタ様が昨夜から体調を崩されております」
それを聞いたたつとらは目を見開き、沈ませていた上体を慌てて起こした。無理に動いたためか顔を歪ませ、身体を揺らしながら咳をし始める。
院長は「落ち着いて下さい」と言いつつ背中を撫で、シャナに水を持ってくるように指示した。
「ナナシ様、お聞きください。ボルエスタ様は昨夜熱を出されましたが、もう今朝には平熱に戻っております。本人もアカラ風邪が羅漢したのだと疑ってましたが、他に諸症状がないので単に疲れからかもしれません」
背中を撫でられながらも心配そうに顔を歪ませる彼が、少しでも落ち着くように院長は笑顔を浮かべる。
「先ほど診て来ましたが、元気そうでしたよ。少なくともナナシ様よりずっと元気です。今日一日様子を見て休まれるそうです。心配いりません」
水を飲んで少し落ち着くと、また彼は薬王に寝床に押し込まれていた。
未だ心配そうにしているたつとらの前髪を、院長はそっと掬う。
「食事を持ってまいります。食べれるものを食べて、お薬を飲みましょう。……ボルエスタ様も、ナナシ様を気遣っていましたよ。あなたが治らないと、彼の気も休まりません」
黙って頷いたたつとらに、院長は満足げに微笑んで立ち上がった。シャナに指示を出して退出すると、薬王も狐になって丸まる。
たつとらは痛む胸を押さえながら呻いた。
傷つけられた胸の痛みとは別に、心臓が暴れるように鼓動を打っている。ヴィティが生きていた時、自分はいつもこうして不安と戦っていたのを思い出す。
(ボルちゃん、やっぱり疲れてた……)
唇を噛んで、毛布を引き上げる。こんな時、自分は何もしてあげることが出来ない。普段はあんなに貰っておきながら、返せない物が多すぎて無力さに絶望する。
弱い自分を呪いながら目を閉じる。
目を閉じてもドクドクと鳴る心臓を、腹立ち紛れに拳で叩いた。
__________
平熱にまで下がった体温計を睨んで、ボルエスタは溜息をついた。
「情けない」
口をついて出た言葉に、柄にもなく舌打ちまでしてしまう。
昨夜、たつとらの部屋から戻るとルメリアと出くわした。マスク姿の彼女もアカラ風邪対策に奔走してくれており、帰路につく所だったようだ。
そんな彼女に顔色を指摘されたボルエスタは、自覚症状もなかったせいか首を捻った。熱を測ると確かに少し高く、慌てたルメリアから部屋に押し込まれ、おまけに知坂にまで連絡が届いてしまった。
そして今である。
アカラ風邪の症状は無く、身体も昨日の発熱の怠さが僅かに残るのみとなっていた。
(今日一日、何も出来なくなった……)
早朝から訪ねてきた院長に今日一日はしっかり休むように念を押され、ボルエスタは覚悟はしていたものの落胆するしかなかった。
眼鏡をサイドデスクに苛立ち気に放り投げ、ベッドに倒れ込む。溜息をつきながら目を閉じると、昨日のたつとらの姿が脳裏に浮かんだ。
途端に胸が痛み、咄嗟に枕を抱き込むと薄く息を吐く。
(今どうしているだろうか。熱は?呼吸は?胸の痛みは?)
胸が締め付けられ、眉を寄せながら枕に顔を埋める。
(アカラ風邪の対処なんて、僕じゃなくても良かったんだ)
そう思いながらも、そう思ってしまう自分に腹が立つ。
こうして一日中モヤモヤしながら過ごさなくてはいけないのかと、心底嫌になって寝返りを打った。
(こうなれば、とことん寝てやる。寝て、英気を養って……)
そんな事を考えているうちに意外にも眠気が襲い、やっぱり疲れていたのかと思いながらも目を瞑った。
扉が控えめに叩かれる音で、ボルエスタは目を覚ました。
時刻は昼を過ぎた頃であろうか。窓から見える陽は高く昇っており、自分が意外にたっぷり寝ていたことにボルエスタは驚いた。
眼鏡もかけずに扉を開けると、そこにはシャナが立っている。
シャナは出てきたボルエスタの姿にドキリとした。普段は身なりを整えて紳士的な彼が、眼鏡を外し髪もボサボサで、シャツは胸まで開けた姿で立っている。それが酷く男性的で、シャナは耳まで赤くして俯いた。
「シャナさん?どうしました?」
喋り方は普段と変わらない事にシャナはホッとし、手に持っていた盆を差し出す。
そこに乗っていたのはお粥と、林檎のすりおろしのようだった。
明らかに病人食なそれに、ボルエスタは苦笑いしそうになった。いつものような笑顔を向けられたのは、普段から務めて作り笑顔を振りまいているせいだろう。
「お気遣い、ありがとうございます」
盆を受け取りながら言うボルエスタに、シャナは何か言いたげに目線を合わせる。ボルエスタが首を傾げながら視線を合わせると、彼女は言いにくそうに口を開いた。
「あのぉ、口止めされてたんですが、言います」
「……はい、何でしょうか」
シャナは林檎のすりおろしを指すと、悪戯っぽく笑った。
「これは、たつとら様が作られたんですよ」
「え?」
ボルエスタはドキリ跳ねる胸を押さえ、シャナが指さすそれを穴が開くほど見つめた。シャナがその様子を見て、頬を緩ませる。
「お粥も作りたいと仰られてたんですが、さすがに厨房には連れていけませんでしたので……。あ、ちゃんと院長が体調もみながら一緒に作ってましたよ。その点はご心配なく」
シャナは院長とたつとらがそれを作るところを思い出し、ニヤニヤと頬を緩ませた。あれほど慌てる院長を見たことが無かったので、ハラハラしながらも微笑ましく見守ったものだ。
「あ……」
ボルエスタが呟いたので顔を上げると、彼は手首を鼻に押し当ててどこかを見ていた。暫くして彼は俯くと「ありがとうございます」と蚊の鳴くような声で呟く。
見ると耳まで赤くなっていて、盆を持つ手が少し震えている。
(え……?もしかして、泣いてる?)
「彼にも……ありがとうと、伝えて下さい。し、失礼します……」
返事も待たずに閉められたドアを、シャナは見つめる。
(めちゃくちゃ可愛い……)
林檎のすりおろしを差し入れするたつとらも可愛いと思ったが、受け取るボルエスタも可愛すぎて笑えてくる。
今後の2人を見るのが楽しみになったシャナは、弾むように帰路についた。
すれ違う度に挨拶してくる修道女に、社交辞令の笑みを浮かべながら返事を返す。
(随分と遅くなってしまった)
とうに陽は沈み、空は黒く染まっている。
アカラ風邪の対応は夕食後まで及び、王宮では全員に処置が施された。民にも同時に薬を届けたので、もうアカラ風邪は脅威ではなくなったはずである。
消えた薬王とたつとらの説明は、チャンがやってくれたようだ。国王が回復するまでには会せるように言われたようだが、守る気はさらさら無い。それほど今回のたつとらの状態は悪かった。
修道院でのたつとらの部屋は、少し離れた所にある。扉にアカシアのレリーフがついた部屋で、ボルエスタは過去何度もそこを訪れた。
部屋の前にいつも身の回りの世話をしてくれるシャナが見え、ボルエスタは歩を緩めた。
シャナはボルエスタを認めると、少し申し訳なさそうに微笑む。その表情を不思議に思いながらも、ボルエスタは微笑みを返した。
「シャナ、こんばんは。彼は……」
シャナが扉の前に立ちふさがるように立つので、ボルエスタは口を噤んだ。まさか状態が悪いのか、とボルエスタが顔を青くすると、シャナが否定するように首を振って微笑んだ。
「たつとら様からの言伝で『大丈夫だから、帰って休んで』との事でした。お薬を飲んで眠った時に、院長が点滴も打っておりますので、今もまだ眠っておいでです」
「そうですか。良かった。顔だけでも……」
部屋に入ろうとするボルエスタを、シャナが手で制する。
「駄目です」
まるで子供を窘めるようにシャナは言う。普段そんな対応をされたことのないボルエスタは、固まって口を引き結んだ。
「朝からずっと働き通しだから、今日は早く帰って休まれるように、と言われております。部屋に入れたら絶対帰らないから、入れてはいけないとも言われております」
「……っ!そんなこと彼に言われたくない。彼が今日一番力を尽くした筈で、労わなければいけないのは彼だ」
何時になく声を荒げるボルエスタに、シャナは優しく微笑んだ。年上の彼女は、まるで弟を慰めるかのような顔を浮かべている。
「ボルエスタ様、お顔に疲労の影が浮かんでおります。そのお顔では、たつとら様が気に病むでしょう。たつとら様は自分よりも人を優先させるお方です。あなた様が一番お分かりでしょう?」
そう言うとシャナは深くお辞儀をした。
「どうかあの方の意図を汲んで、お帰り下さい」
ボルエスタは彼の部屋の窓を見上げた。厚いカーテンがぴっちり閉めてあり、そこから中を窺う事は出来ない。
そこに彼が横たわっていると思うと、居た堪れない気持ちになる。今すぐ行って、髪を掬って顔を見たかった。
だけどそれは、自分の勝手な我儘なのかもしれない。
黙って背を向けると、廊下を歩き出す。脚が重くて、気持ちも鉛のように重い。
シャナに返事もせずに去ったことにも申し訳なさで一杯になりながらも、ボルエスタは自分の部屋へ歩を進めるしか無かった。
__________
たつとらが目を覚ましたのは夜明け前のことだった。
大量に汗をかいていて、熱が大分下がったのが自分でも分かる。未だ怠さと痛みは残るものの、咳も軽くなってきたようで、ほっと息を吐く。
常夜灯のランプだけが輝く暗がりの中、誰もいないソファを見た。
(良かった。ちゃんと帰って寝てくれたみたいだな)
良かったと思う反面、ソファに寝るボルエスタの姿が脳裏にちらつき、心臓がツキリと痛んだ。たつとらは、痛みを発した自分を戒めるように唇を噛む。
ボルエスタは自分の専属医師ではない。本当はこの国の軍医なのだ。
軍医と言うのは貴重で、知識も体力も兼ね備えた者でないと務められない。ウェリンクに必要な人材を、自分という人ならざるものが独占し埋もれさせてはいけないのだ。
アカラ風邪が蔓延したその時も、ボルエスタという医師が国にいたらもっと違ったかもしれない。
汗で湿った服を脱いで、院長が用意してくれていた新しい服へ着替える。サラリとした感触に微笑むと、側で眠る狐を撫でた。
まだ起きる気配は無いが、元よりこの狐は良く寝るので違和感はない。
(ゆっくり休んで、元気になるんだよ)
藥王を包み込むように横になると、目を瞑ってそのままゆるゆると力を注ぎ込む。
腕の中にいる薬王はほのかに温かい。その温度が気持ちよくて、たつとらはまた眠りに落ちて行った。
__________
ポツポツと目蓋の上に水が落ちてきて、たつとらは目を薄く開いた。雨?なんで雨?と思いながら、瞳をパチパチさせながら上を見上げる。
そこには朱い瞳に涙を湛えながら自分を見下ろす、藥王がいた。
「しゅ……らく?」
目覚めたたつとらを薬王は睨み付ける。ベッドの上で覆いかぶさるようにしながら薬王は恨めし気に口を開いた。
「兄ぃ、力注いだやろ」
「え、と、いや……」
薬王はそのままたつとらをギュッと抱きしめると、その胸に耳を押し当てた。
「こんなに肺をゼロゼロ言わせとって、ほんま何しとんねん」
「ゼロ、ゼロ?」
「……ヴィティさんも、ようこんな音させてたな」
ああ、とたつとらは眉を寄せた。
聖女ヴィティは身体が弱く、特に呼吸器官を良く悪くしていた。聖女になる前からの持病らしく、度々喘鳴をさせて苦しそうだったのを思い出す。
「ごめん、早く、良くなればと、思って」
「ほなら、俺にも注がせぇ」
それを聞いたたつとらが、藥王の下でもがき始めた。
「駄目、だ!!ぅ、ゲホ、朱楽!!ダメだ!!!」
もがいてもびくともしない藥王の胸を力任せに押していると、その手を掴んだ藥王がまた泣き出した。
またポタポタ落ち出した涙にたつとらが狼狽えてると、悔しそうに顔を歪ませる藥王が口を開く。
「……兄ぃ、ヴィティさんと、何があったんや?……お願いやから、俺には言うて?」
「……朱、楽?聖堂でのこと……」
問うまでもなかったと思い、たつとらは口を引き結んだ。泣き止まない藥王を見上げながら、たつとらは困った様にその濡れた目の下を拭った。
「ヴィテさんは、何も、悪いことは、していない。朱楽、泣くな」
「これはヴィテさんのせいなんやろ!?何もしてないわけないやんか!」
そこまで言うと、部屋の扉が豪快に開いた。現れたシャナが、驚愕のあまり上ずった声を上げる。
「だ、だ、だ、誰ですかあなた!!!たつとら様から離れなさい!!」
薬王がシャナに剣呑な視線を送ると、たつとらが慌てたように薬王の腕を掴んだ。
「おはよ、シャナ。この、人はね……」
「お前こそ誰や!今ええとこやねん!邪魔すんなや!!」
良いとこって、と言いながらシャナが顔を赤くさせる。何やら勘違いをしている彼女にたつとらが慌てていると、杖をついた院長が現れた。
「あらあら、朱楽、目が覚めたのね」
やけに冷静な院長を見てシャナは落ち着きを取り戻し、薬王は院長を睨み付けた。
「……誰や。その名で呼んでええのは兄ぃだけやぞ」
「ふふ、朱楽は相変わらずね。勝手に朱楽と呼んでいる者たちもいること忘れた?」
薬王はたつとらを見て、何かを思い出すかのように上を向いた。そして、忌々し気に院長を見て口を開く。
「お前口やかましい柚都やな?えらいババ、むぐっ」
薬王の口を押さえたたつとらが、院長を見て気まずそうにしている。その顔を見て、院長が声を立てて笑った。
「いいのですよ。私は老いて婆になりました。朱楽もナナシ様も変わらず綺麗で羨ましいわ」
たつとらが薬王の腕を叩くと、薬王は名残惜しそうに彼から離れた。たつとらはベッドの上に胡坐をかくと、ペコリと頭を下げる。
「おはよう、柚都」
「おはようございます。ナナシ様。体調はいかがでしょうか」
大丈夫だよ、と言うたつとらの額に院長の手の甲が押し当てられる。
ヒヤリとした感覚に驚いてたつとらが院長を見ると、彼女は眉根を寄せたまま困り顔をしている。
「まだ熱が高いですね。朱楽と遊んでいては、体調も戻りませんよ」
「え?あれ?大分、良くなったけど……」
院長はシャナに体温計を持ってくるように言うと、聴診器を取り出して胸の音を聞く。
「昨日の熱が異常に高かったからそう感じるだけです。……胸の音は少し良くなりましたね」
脇に挟んでいた体温計を院長が確認し、「38度8分」とシャナに言う。シャナは管理表のようなものにメモを取り、心配そうにたつとらを見つめた。
「人は肺を傷つけられると、多くが肺炎を引き起こします。肺の機能が落ちているからです。色々なお薬を試しますが、しばらく熱は続くかもしれません。安静にすることが一番ですよ」
「……分かった。面倒を、かけます」
またぺこりと頭を下げるたつとらに、院長は少女のように快活な笑顔を見せた。
「何を言いますか。またお世話出来て、嬉しくて仕方がありません」
たつとらは困った様に笑顔を返すと、側で寛ぐ薬王を見る。
「朱楽も、まだ、ゆっくり……」
「分かった分かった。ええから兄ぃは寝ぇ!」
ぐいぐいと寝床に押しやられ、仕方なく毛布を引き上げる。しかし視線の端に見える院長の顔が陰っているのが見て取れ、たつとらは「どうした?」と問いかけた。
院長はしばらく考えた後、少し眉を下げてたつとらを見る。
「変な風に伝わるといけませんから、話しておきますね。……ボルエスタ様が昨夜から体調を崩されております」
それを聞いたたつとらは目を見開き、沈ませていた上体を慌てて起こした。無理に動いたためか顔を歪ませ、身体を揺らしながら咳をし始める。
院長は「落ち着いて下さい」と言いつつ背中を撫で、シャナに水を持ってくるように指示した。
「ナナシ様、お聞きください。ボルエスタ様は昨夜熱を出されましたが、もう今朝には平熱に戻っております。本人もアカラ風邪が羅漢したのだと疑ってましたが、他に諸症状がないので単に疲れからかもしれません」
背中を撫でられながらも心配そうに顔を歪ませる彼が、少しでも落ち着くように院長は笑顔を浮かべる。
「先ほど診て来ましたが、元気そうでしたよ。少なくともナナシ様よりずっと元気です。今日一日様子を見て休まれるそうです。心配いりません」
水を飲んで少し落ち着くと、また彼は薬王に寝床に押し込まれていた。
未だ心配そうにしているたつとらの前髪を、院長はそっと掬う。
「食事を持ってまいります。食べれるものを食べて、お薬を飲みましょう。……ボルエスタ様も、ナナシ様を気遣っていましたよ。あなたが治らないと、彼の気も休まりません」
黙って頷いたたつとらに、院長は満足げに微笑んで立ち上がった。シャナに指示を出して退出すると、薬王も狐になって丸まる。
たつとらは痛む胸を押さえながら呻いた。
傷つけられた胸の痛みとは別に、心臓が暴れるように鼓動を打っている。ヴィティが生きていた時、自分はいつもこうして不安と戦っていたのを思い出す。
(ボルちゃん、やっぱり疲れてた……)
唇を噛んで、毛布を引き上げる。こんな時、自分は何もしてあげることが出来ない。普段はあんなに貰っておきながら、返せない物が多すぎて無力さに絶望する。
弱い自分を呪いながら目を閉じる。
目を閉じてもドクドクと鳴る心臓を、腹立ち紛れに拳で叩いた。
__________
平熱にまで下がった体温計を睨んで、ボルエスタは溜息をついた。
「情けない」
口をついて出た言葉に、柄にもなく舌打ちまでしてしまう。
昨夜、たつとらの部屋から戻るとルメリアと出くわした。マスク姿の彼女もアカラ風邪対策に奔走してくれており、帰路につく所だったようだ。
そんな彼女に顔色を指摘されたボルエスタは、自覚症状もなかったせいか首を捻った。熱を測ると確かに少し高く、慌てたルメリアから部屋に押し込まれ、おまけに知坂にまで連絡が届いてしまった。
そして今である。
アカラ風邪の症状は無く、身体も昨日の発熱の怠さが僅かに残るのみとなっていた。
(今日一日、何も出来なくなった……)
早朝から訪ねてきた院長に今日一日はしっかり休むように念を押され、ボルエスタは覚悟はしていたものの落胆するしかなかった。
眼鏡をサイドデスクに苛立ち気に放り投げ、ベッドに倒れ込む。溜息をつきながら目を閉じると、昨日のたつとらの姿が脳裏に浮かんだ。
途端に胸が痛み、咄嗟に枕を抱き込むと薄く息を吐く。
(今どうしているだろうか。熱は?呼吸は?胸の痛みは?)
胸が締め付けられ、眉を寄せながら枕に顔を埋める。
(アカラ風邪の対処なんて、僕じゃなくても良かったんだ)
そう思いながらも、そう思ってしまう自分に腹が立つ。
こうして一日中モヤモヤしながら過ごさなくてはいけないのかと、心底嫌になって寝返りを打った。
(こうなれば、とことん寝てやる。寝て、英気を養って……)
そんな事を考えているうちに意外にも眠気が襲い、やっぱり疲れていたのかと思いながらも目を瞑った。
扉が控えめに叩かれる音で、ボルエスタは目を覚ました。
時刻は昼を過ぎた頃であろうか。窓から見える陽は高く昇っており、自分が意外にたっぷり寝ていたことにボルエスタは驚いた。
眼鏡もかけずに扉を開けると、そこにはシャナが立っている。
シャナは出てきたボルエスタの姿にドキリとした。普段は身なりを整えて紳士的な彼が、眼鏡を外し髪もボサボサで、シャツは胸まで開けた姿で立っている。それが酷く男性的で、シャナは耳まで赤くして俯いた。
「シャナさん?どうしました?」
喋り方は普段と変わらない事にシャナはホッとし、手に持っていた盆を差し出す。
そこに乗っていたのはお粥と、林檎のすりおろしのようだった。
明らかに病人食なそれに、ボルエスタは苦笑いしそうになった。いつものような笑顔を向けられたのは、普段から務めて作り笑顔を振りまいているせいだろう。
「お気遣い、ありがとうございます」
盆を受け取りながら言うボルエスタに、シャナは何か言いたげに目線を合わせる。ボルエスタが首を傾げながら視線を合わせると、彼女は言いにくそうに口を開いた。
「あのぉ、口止めされてたんですが、言います」
「……はい、何でしょうか」
シャナは林檎のすりおろしを指すと、悪戯っぽく笑った。
「これは、たつとら様が作られたんですよ」
「え?」
ボルエスタはドキリ跳ねる胸を押さえ、シャナが指さすそれを穴が開くほど見つめた。シャナがその様子を見て、頬を緩ませる。
「お粥も作りたいと仰られてたんですが、さすがに厨房には連れていけませんでしたので……。あ、ちゃんと院長が体調もみながら一緒に作ってましたよ。その点はご心配なく」
シャナは院長とたつとらがそれを作るところを思い出し、ニヤニヤと頬を緩ませた。あれほど慌てる院長を見たことが無かったので、ハラハラしながらも微笑ましく見守ったものだ。
「あ……」
ボルエスタが呟いたので顔を上げると、彼は手首を鼻に押し当ててどこかを見ていた。暫くして彼は俯くと「ありがとうございます」と蚊の鳴くような声で呟く。
見ると耳まで赤くなっていて、盆を持つ手が少し震えている。
(え……?もしかして、泣いてる?)
「彼にも……ありがとうと、伝えて下さい。し、失礼します……」
返事も待たずに閉められたドアを、シャナは見つめる。
(めちゃくちゃ可愛い……)
林檎のすりおろしを差し入れするたつとらも可愛いと思ったが、受け取るボルエスタも可愛すぎて笑えてくる。
今後の2人を見るのが楽しみになったシャナは、弾むように帰路についた。
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これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
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