【完結】地獄行きは確定、に加え ~地獄の王に溺愛されています~

墨尽(ぼくじん)

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前半戦

26.獄主、めちゃ怒る (下)**

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 上衣の紐を解く獄主の手を掴もうとして、予想以上の手首の痛さに聡一朗は驚いた。
 これでは後ろ手をつくことも出来ない。しかたなく肘をつけると、獄主が覆いかぶさるように身体を乗り出して来た。

 上衣の合わせからスルスルと獄主の手が入ってくる。衣がずれて肩が露わになりそうな所で、聡一朗は思わず声を上げた。

「ぬ、脱ぐのか!?」
「なに?」
「脱がなきゃ、駄目、か?」

 その初心な反応に、獄主は虚を突かれて目を見開いた。聡一朗の胸元に手を置いたまま、ぴたりと制止してしまう。
 見れば聡一朗は胸元まで真っ赤に染まり、視線も泳いでいる。

「脱ぐのが嫌なのか?それとも、交合するのが嫌なのか?」
「こ、交合?」
「性交渉の事だ」
「っつ!い、嫌、という、わけでは、というか、しなきゃ駄目、なんだろ……?」

 しどろもどろ、とはこういう状態の事を言うのだろう。獄主は目の前で狼狽える男を見た。
 何とも好ましい、可愛い、抱き潰したい。そんな感情に支配される。

「聡一朗、お前、抱かれたことはあるのか?」
「へぁ?……!?馬鹿!あるわきゃねぇだろ!」
「では、抱いたことは?」
「……多少は」

 多少はある、という回答が面白くない。獄主が少々不機嫌になると、聡一朗が「もちろん女性をだぞ」と訂正してくる。

(ペースが乱されるな……)
 今までの候補者は性に奔放で、こんな反応をされるのは初めてだった。
 男性の候補者で所謂初モノも少なくなかったが、拒否反応を示されることはない。

 心底惚れた相手が、に対して怯えている。
 本音は抱き潰してしまいたい。だが、優しく徐々に進めるのも良い。
 獄主は両者で鬩ぎ合っていた。


 聡一朗の胸に当てた手をゆっくり動かすと、小さな尖りに行きついた。
 吸いつきそうな肌にある小さな突起は、少し湿り気がある。胸を擦る指がそれに引っかかると、聡一朗の肩が跳ねた。
 一気に真っ赤になる様子が、堪らなくそそる。

「ここは、触られた事があるか?」
「そ、そんなとこ、男には関係……」
「そんなことはない」

 尖りを指で潰し、円を描くように刺激する。指で優しく摘まむと、聡一朗が顔を背けた。
 声を我慢しているのか、真っ赤な顔で唇を噛みしめている。

「聡一朗、噛むな。息をしろ。痛いか?」
「ん、ン、い、痛い……ような、っあ!く……そ!」
「色気が無いな」

 聡一朗はシーツを掴んでは離すを繰り返している。快感を逃すためにシーツを掴むが、手首の痛みを思い出して手を離す、その繰り返しのようだ。

「ま、待った!もう、そこは、いじるな……!っつくぅ、ふっ」
「待たん」

 獄主はそう言い放つと、もう片方の尖りを口に含んだ。突然の刺激に、聡一朗は声を上げて仰け反った。

「っああぁ!なん、で!!」

 もう肘をついているのも辛いようで、上半身は寝台に沈みかけている。だが沈んだら最後、攻め抜かれるのが分かっているのか、聡一朗は必死に耐えている。

「聡一朗、脱がんでも事は成せる。良かったな」
「ち、ちが、あ、あ、ぁ!う、そだ、こんな……」
「こんなに感じてしまうのが、恥ずかしいか?好ましいだろ」

 そう言いながら、獄主は聡一朗の下生えに手を伸ばした。屹立したものを掴むと、聡一朗がひゅっと息を詰める。

「ここもこんなにして、可愛いな、お前は」
「っっ……!?……ぅ!」

 ゆるゆると上下に扱くと、聡一朗がいやいやと首を振る。

「ご、獄主、もう、無理だ……ぁ!」
「もっと声を出せ。中毒の時はもっとよがってた筈だ」
「あ、あんときは、ちが、……っぐ!」

 にゅちにゅちと水音が耳に届くと、聡一朗は羞恥に身を悶えさせる。
 先端を穿って激しく上下に動かすと、二度目の絶頂はすぐ訪れた。聡一朗は一際強く仰け反ると、白濁を吐き出す。
 もう耐えきれなくなったのか、聡一朗の身体が完全に寝台へ沈んだ。

 はぁはぁと荒い息を吐く聡一朗の額に、獄主はそっと口付ける。
「ああ、可愛いな」
「だ、だれが、は、は……」

 聡一朗の肌蹴た上衣から覗く肌は、薄桃色に染まっている。潤んだ瞳は、焦点が定まらない。
 その扇情的な姿に獄主は喉を鳴らした。ペロリと上唇を舐める獄主を見て、聡一朗が悩まし気に眉を寄せる。

 獄主が聡一朗の片足を一気に持ち上げる。息を詰める間もなく、片足は獄主の肩に担ぎあげられた。
 
 聡一朗は突然の事に混乱し、あわあわと口を震えさせる。
 そしてパンツは先ほど破られたことを、今更思い出した。ということは、今の体勢は、自分の大事なところを全部露わにしているという事だ。

「い、いやだ!!」
「聡一朗、綺麗だ」

 窄まりを撫でられ、聡一朗の心臓が跳ね上がった。身を起こそうとするが、下手に動くのは危険と頭で警告音が鳴る。

「聡一朗、私のがここに入るんだ」
「……無理だ!絶対無理!」

(予想はしていたが、やっぱりそこか……!)
 何度考えても、絶対無理だと断言できる。あれほど巨大なものを入れたら、死んでしまうに決まっている。

「無理だ!死因が串刺しだなんて……」
「何を言っている」

 聡一朗の蜜を絡めとり、窄まりに獄主の指が当てられる。
 つぷ、という音と共に、異物が侵入するのを感じる。ぞわわわと肌が総毛立ち、聡一朗は思わず獄主の腕に縋った。

 ぎゅうっと腕に縋り、身体は小刻みに震える。耳から首まで、熱により朱に染まっていた。

「うう”うう”うぅ、無理ぃ、無理、だ!!!」
「……そ、聡一朗、お前、無自覚か?可愛すぎる」

 指一本入れられただけで、腕に縋られ涙目で訴えられる。
 ついにポロポロと涙が零れると、獄主は遂に指を止めた。それほど聡一朗の涙は衝撃的だった。
 つぷりと指を抜くと、一瞬ぎゅうと縋る力が強まる。

 呆けた顔の聡一朗に、唇を落とす。素直にそれを受ける様に、獄主の腰の中心が疼いた。
 指を抜かれて安心したのか、聡一朗は寝台に身を預けてぜいぜいと息を整えている。その姿もひどく扇情的で、獄主を更に煽りたてる。

 脱力している聡一朗の足を、獄主は両方まとめて掴む。脚をぴったり閉じさせたまま、聡一朗の胸のあたりまで折り曲げた。

「え?え?」
「安心しろ。入れん」

 ぬる、と内腿を割って入る感覚がし、覚えがある感覚に聡一朗はぶるりと震えた。素股の再来だ。

 しかし今回は身体を折り曲げられているせいか、擦りあう強さが前回とは違って強烈だった。しかも獄主がそこに手を添え、強く擦られるように動かしている。
 獄主の雁首が分かるほどに強く擦られ、聡一朗はがくがくと腰を揺らした。

「あぁ、あ、ふっ……んんんんくっ!」
「声を!我慢するな、と、言うだろう!」

 無茶苦茶に腰を打ちつけられ、水音と打擲音が響く。聡一朗が昇りつめて達しても、獄主は動くのを止めない。

「は、は、も、イけない、う、うぅ!あぁ!」

 何度も達したせいで、聡一朗の身体にもはや力は無い。ただただ揺すられて、意識も薄れる。
 獄主は目の前の痴態に、翻弄させられるまま腰を打ちつける。上気した顔も、頬を濡らす涙も、すべて奪い取りたかった。

「……気が変わった。少し入れるぞ」
「へ?」

 獄主は自身の屹立を内腿から引き抜くと、聡一朗の窄まりに押し当てた。先端だけを少し沈める。聡一朗は圧迫感に見悶えた。

「あ、あぁ!!や、め……!」
「これ以上入れん」

 先だけ沈めた状態で、獄主は自身の陰茎を上下に擦る。
 獄主が切なげな声で聡一朗を呼ぶと、中に熱いものが注がれるのを感じた。大量のそれは、聡一朗の中に流れ込み、渦を巻いて暴れまわった。

「あ、あ、あ……」
 全てが塗り替えられるような感覚に、目の前がチカチカと点滅する。入りきれなかった精液が、ゴポリと垂れて行く感覚に身震いする。

 獄主が聡一朗の内腿に唇を落とし、妖艶に舐め上げる。
「夜はまだ長い。練習だな。聡一朗」

 その言葉に絶望する間もなく、獄主が聡一朗に覆いかぶさる。聡一朗にとっての、試練の夜が始まった。



________

「手首は、かろうじて折れていませんが……腫れが引くまでなるべく動かさない方が良いでしょうね」
「分かった」

 トウゴは寝台の脇で説明を聞く獄主を見た。

 藍色の着流しを身に着け、洗いたての髪が輝いている。髪より輝いているのが、その表情だ。
 清々しいといった言葉がぴったりの、棘のない表情をしている。
 ……寝ている聡一朗とは大違いだ。

 トウゴは聡一朗を見遣った。相変わらず、申し訳ない程の憔悴っぷりだ。

 何度も噛みしめたであろう唇は、血の痕が固まって少し腫れていた。

 身体を診るのは獄主に止められたので見ていないが、指先すらも動かないまま眠っている。
 これで最後までしていないと聞いた時は、聡一朗を二度見した程だ。

「脈を診たところ大分疲弊しているようですので、お大事になさって下さい」
「無論だ」

 鞄を持ち立ち去ろうとした所で、従者の声が掛かった。トウゴに耳打ちされた伝達は、獄主にとって朗報か、それとも……。

 トウゴが戸惑っていると、それまでずっと聡一朗の顔を見ていた獄主が顔を上げた。

「どうした。トウゴ」
「獄主様、今日の昼にリュシオル様がお越しになられると……」

 獄主は、聡一朗を見た。
 かの者が来るとなると、要件は粗方想像がつく。

 獄主は聡一朗の鼻梁に口付けると、重い腰を上げた。
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