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秘密の地下施設
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東京某所の地下に、世界を終わらせる兵器がある。
信じられない事実だが、3年前から3人のロボット研究者が缶詰めになって、あるプロジェクトを進めているのだ。
「日本に核兵器を持ち込んだら、大変なことになりますよ。 」
新谷 修二は、完成間近の兵器を前にして、自分が関わったプロジェクトの恐ろしさに怯え、声を響かせた。
地下施設の中には、極秘に作られた最新のスーパーコンピュータが据え付けられている。
物凄い熱がファンから吹き出し、それを冷やす水冷式クーラーが24時間回り続ける。
国家予算の何パーセントをつぎ込んだのか分からないが、とんでもないプロジェクトに加わり、墓場まで持って行かなくてはならない秘密を握らされた。
「そんなことは、分かっている。 」
最年長のプロジェクトリーダー、大木 幸三は、うんざりした声を張り上げて答えた。
苛々する気持を抑えながら兵器の表面を整える作業に没頭するのは、かなりの精神力を要するが、ずっと一緒にいて気心も知れているので慣れっこになった。
「毎日こいつと向き合って来て、感慨深くなったりしないのかい。もうすぐ完成だぞ。 」
村山 泰正は年齢が2人の間位のせいで、良き理解者として新谷の愚痴を聞き、大木のストレスと軽減する役を担っている。
言葉通り、村山はこの兵器に対して深い思い入れを持っていた。
「村山君。この兵器は、何に使われるのだと思うかね。 」
小休止して、大木が聞いた。
塗装作業をしたせいで、シンナーの臭いが鼻を突いた。
「新谷君。ちょっと換気扇を強くして来てくれんか。 」
「はい。 」
若い新谷は、今後の人生を防衛省の役人として保証されることに満足してはいない。
研究者の知的好奇心は、安定志向ではなく、もっと自分の能力を世の中に試すことに向かう。。
人生はまだまだこれからだ。
そして真面目に働くばかりではく、外の世界で自分が知らなかったことをもっと知りたい。
良いことも、悪いことも。
若さとは冒険を好むものだ。
換気扇のスイッチを押し、強にするとクーラーよりも大きな轟音を立てる。
「気圧が下がりますよ。 」
ふてくされたように、大木に言った。
「まぁ、そう尖がるな。この兵器が完成すれば我々は自由になれる。若い新谷君は、閉じ込められて文句の一つも言いたい気持ちになるだろうさ。 」
「外に出たら何をするか、毎日考えてますよ。 」
閉じ込められている、とも言えるが研究一筋で世間に疎い新谷は、不満を持っているわけではない。
いざとなると外に出たら何をするのか具体的に考えにくいが、人並の青春を一度は味わいたいと思い始めた。
そんな考えを察したのか、村山が口を挟んだ。
「なぁ、新谷君。女の子と遊んだりして、青春を謳歌してみてはいかがかな。 」
毎日変わり映えしないメンバーで、兵器と向き合い続けたから、心の底までお見通しである。
「そうですね。それも良いですね。僕って、奥手だと思いますか。 」
ちらりと横目で村山を見ると、吐いて捨てるように言う。
「まあな。だから、いじり甲斐があるんだよ。男3人缶詰生活で、全然色気がないだろう。俺だってまだまだこれからさ。 」
ニヤリと笑って、透き通るような肌に見えるよう、塗装を50回も繰り返して瑞々しい色を出した兵器を見て、うっとりと目を細めた。
「これくらいしか楽しみがなくてなぁ。若い女の子の肌を表現するために、板金屋さんになれるほど、塗装の研究をしたんだぞ。どうだ。この傑作をもっと褒めてくれ。 」
大木は、できるだけ早く兵器を仕上げるよう上から圧力をかけられたが、部下のメンタルヘルスのためにも趣味を貫徹させることにした。
「立派な肌だ。まるで本物の女の子だな。そして物凄い美人だ。 」
兵器は、最終的に村山の趣味で超絶美人の若いアイドルになった。
地下室に監禁された生活の反動で、想像を絶する情熱を傾け、あらゆる美人を研究し尽くして一冊本を書いたほどだ。
出来栄えは神がかっている。
「なあ、新谷。この子をアイドルデビューさせて、一儲けできると思わないか。 」
「ああ。その手がありますね。我々の研究が平和のために役立つし、僕は大賛成ですよ。 」
アイドルにあまり興味はないが、他に話題がないので同意した。
「新谷君。核兵器を平和利用できるじゃないか。これは画期的なアイデアだな。 」
大木までこのボケに乗ったので、ツッコミ役がいなくなった。
「ふう。ところで、この子に名前を付けませんか。 」
新谷はこの空気を引き締めたくなった。
「それだがな。俺は考えたんだよ。 」
村山が分厚いレポート用紙の束を持ってきた。
「何だ。手書きか。何を書いたんだね。 」
「若い女の子の名前を、どうやって付けるのか考え続けて、スパコンをいじりながら書きつけていたのです。 」
何枚かを取り出してテーブルに並べた。
「僕はてっきり、閃きとかで決めるのかと思ってました。 」
「これです。 」
村山が、赤丸を付けた部分を指差す。
「永久恋愛だって? 」
大木が驚きのあまり後ずさりした。
「何てこった。ここまで飢えていたのですか。 」
しばらく沈黙した。
「ちっちっち。違うんですねぇ。『エクレア』と読んでくださいよ。 」
「おおお。素晴らしいセンスです。村山さん。 」
「むう。なぜこんなに、バーチャルアイドルを作る才能を発揮するのかね。村山君。 」
2人からの称賛を受けて、胸を張って見せた。
信じられない事実だが、3年前から3人のロボット研究者が缶詰めになって、あるプロジェクトを進めているのだ。
「日本に核兵器を持ち込んだら、大変なことになりますよ。 」
新谷 修二は、完成間近の兵器を前にして、自分が関わったプロジェクトの恐ろしさに怯え、声を響かせた。
地下施設の中には、極秘に作られた最新のスーパーコンピュータが据え付けられている。
物凄い熱がファンから吹き出し、それを冷やす水冷式クーラーが24時間回り続ける。
国家予算の何パーセントをつぎ込んだのか分からないが、とんでもないプロジェクトに加わり、墓場まで持って行かなくてはならない秘密を握らされた。
「そんなことは、分かっている。 」
最年長のプロジェクトリーダー、大木 幸三は、うんざりした声を張り上げて答えた。
苛々する気持を抑えながら兵器の表面を整える作業に没頭するのは、かなりの精神力を要するが、ずっと一緒にいて気心も知れているので慣れっこになった。
「毎日こいつと向き合って来て、感慨深くなったりしないのかい。もうすぐ完成だぞ。 」
村山 泰正は年齢が2人の間位のせいで、良き理解者として新谷の愚痴を聞き、大木のストレスと軽減する役を担っている。
言葉通り、村山はこの兵器に対して深い思い入れを持っていた。
「村山君。この兵器は、何に使われるのだと思うかね。 」
小休止して、大木が聞いた。
塗装作業をしたせいで、シンナーの臭いが鼻を突いた。
「新谷君。ちょっと換気扇を強くして来てくれんか。 」
「はい。 」
若い新谷は、今後の人生を防衛省の役人として保証されることに満足してはいない。
研究者の知的好奇心は、安定志向ではなく、もっと自分の能力を世の中に試すことに向かう。。
人生はまだまだこれからだ。
そして真面目に働くばかりではく、外の世界で自分が知らなかったことをもっと知りたい。
良いことも、悪いことも。
若さとは冒険を好むものだ。
換気扇のスイッチを押し、強にするとクーラーよりも大きな轟音を立てる。
「気圧が下がりますよ。 」
ふてくされたように、大木に言った。
「まぁ、そう尖がるな。この兵器が完成すれば我々は自由になれる。若い新谷君は、閉じ込められて文句の一つも言いたい気持ちになるだろうさ。 」
「外に出たら何をするか、毎日考えてますよ。 」
閉じ込められている、とも言えるが研究一筋で世間に疎い新谷は、不満を持っているわけではない。
いざとなると外に出たら何をするのか具体的に考えにくいが、人並の青春を一度は味わいたいと思い始めた。
そんな考えを察したのか、村山が口を挟んだ。
「なぁ、新谷君。女の子と遊んだりして、青春を謳歌してみてはいかがかな。 」
毎日変わり映えしないメンバーで、兵器と向き合い続けたから、心の底までお見通しである。
「そうですね。それも良いですね。僕って、奥手だと思いますか。 」
ちらりと横目で村山を見ると、吐いて捨てるように言う。
「まあな。だから、いじり甲斐があるんだよ。男3人缶詰生活で、全然色気がないだろう。俺だってまだまだこれからさ。 」
ニヤリと笑って、透き通るような肌に見えるよう、塗装を50回も繰り返して瑞々しい色を出した兵器を見て、うっとりと目を細めた。
「これくらいしか楽しみがなくてなぁ。若い女の子の肌を表現するために、板金屋さんになれるほど、塗装の研究をしたんだぞ。どうだ。この傑作をもっと褒めてくれ。 」
大木は、できるだけ早く兵器を仕上げるよう上から圧力をかけられたが、部下のメンタルヘルスのためにも趣味を貫徹させることにした。
「立派な肌だ。まるで本物の女の子だな。そして物凄い美人だ。 」
兵器は、最終的に村山の趣味で超絶美人の若いアイドルになった。
地下室に監禁された生活の反動で、想像を絶する情熱を傾け、あらゆる美人を研究し尽くして一冊本を書いたほどだ。
出来栄えは神がかっている。
「なあ、新谷。この子をアイドルデビューさせて、一儲けできると思わないか。 」
「ああ。その手がありますね。我々の研究が平和のために役立つし、僕は大賛成ですよ。 」
アイドルにあまり興味はないが、他に話題がないので同意した。
「新谷君。核兵器を平和利用できるじゃないか。これは画期的なアイデアだな。 」
大木までこのボケに乗ったので、ツッコミ役がいなくなった。
「ふう。ところで、この子に名前を付けませんか。 」
新谷はこの空気を引き締めたくなった。
「それだがな。俺は考えたんだよ。 」
村山が分厚いレポート用紙の束を持ってきた。
「何だ。手書きか。何を書いたんだね。 」
「若い女の子の名前を、どうやって付けるのか考え続けて、スパコンをいじりながら書きつけていたのです。 」
何枚かを取り出してテーブルに並べた。
「僕はてっきり、閃きとかで決めるのかと思ってました。 」
「これです。 」
村山が、赤丸を付けた部分を指差す。
「永久恋愛だって? 」
大木が驚きのあまり後ずさりした。
「何てこった。ここまで飢えていたのですか。 」
しばらく沈黙した。
「ちっちっち。違うんですねぇ。『エクレア』と読んでくださいよ。 」
「おおお。素晴らしいセンスです。村山さん。 」
「むう。なぜこんなに、バーチャルアイドルを作る才能を発揮するのかね。村山君。 」
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