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プロローグ 始まりの春
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リリリリリッ……ガッ!
「………。」
金属音が響く目覚ましに、肌寒いのを我慢しながら少年はいつものように起き上がる。
「……おはよう。」
「今日は入学式なのに、少しは元気にしたら?」
1階に降り、母のあきれ声をスっと流し朝ごはんを適当に盛りつけた。テレビの音をつけて、親の声を小さくする。
「いただきます……」
4月3日。壁にかけられたカレンダーには丸印で、「高校の入学式」と書かれていた。
しかし、少年にとってはいつも通りの毎日に変わりない。
「……ごちそうさま」
いつも通りにご飯を食べ終わると顔を洗い、部屋に戻って、準備を初めていく。
少年が新しい制服に腕をとおすと、1枚の写真が机から落ちた。
「っ……」
捨てようとしても捨てきれず、ずっと机の片隅で存在感を放っていた写真。少年は、写真を手に取りながら固まっていた。
「時間が無いわよー! 速く行きなさい!」
「っ! 分かった。」
少年は写真を引き出しにしまい、太陽に遮られながらも玄関を出ていく。
『春』と言っても桜は咲く気配を全く見せていない。それでも、春の風は吹いている。
「行ってきます。」
「行っておいでーー」
少年は、母の笑顔と共にチャリにまたがり家を出ていった。
庭にある桜の木には、たった1つだけ……小さなつぼみが色づき始めている。
「………。」
金属音が響く目覚ましに、肌寒いのを我慢しながら少年はいつものように起き上がる。
「……おはよう。」
「今日は入学式なのに、少しは元気にしたら?」
1階に降り、母のあきれ声をスっと流し朝ごはんを適当に盛りつけた。テレビの音をつけて、親の声を小さくする。
「いただきます……」
4月3日。壁にかけられたカレンダーには丸印で、「高校の入学式」と書かれていた。
しかし、少年にとってはいつも通りの毎日に変わりない。
「……ごちそうさま」
いつも通りにご飯を食べ終わると顔を洗い、部屋に戻って、準備を初めていく。
少年が新しい制服に腕をとおすと、1枚の写真が机から落ちた。
「っ……」
捨てようとしても捨てきれず、ずっと机の片隅で存在感を放っていた写真。少年は、写真を手に取りながら固まっていた。
「時間が無いわよー! 速く行きなさい!」
「っ! 分かった。」
少年は写真を引き出しにしまい、太陽に遮られながらも玄関を出ていく。
『春』と言っても桜は咲く気配を全く見せていない。それでも、春の風は吹いている。
「行ってきます。」
「行っておいでーー」
少年は、母の笑顔と共にチャリにまたがり家を出ていった。
庭にある桜の木には、たった1つだけ……小さなつぼみが色づき始めている。
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