ダブルワークの執事

森葉 ゆしき

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第2.5話

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「後はやっておきますので、先にお休みください」

食器を大方洗い終わり、後は拭いて片付けるだけだ。

「ありがとうございます。ではよろしくお願いしますね」

スタスタとスリッパの足音を立てながら彼女は自身の部屋に戻る。

・・・パタン。

時間を見ると0時20分。もう日付が変わってしまった。

皿を洗う手を止める。

さて、どうしたものか。
彼女のリフレッシュになるかと、深く考えずマッサージ店の提案をしたけれど
ここまで一気に話が進むと思っていなかった。
一緒に行こうと言った時には、内心自分で訳が分からなくなっていた。

当日のことも問題だ。
予約をしておくのはもちろんのこと、プランや料金の確認、
もしリピートする事を考えて分かりやすいルートも考えた方がいいのだろうか。

色々な考えが頭の中を回っている。

そしてさらに問題がある。
上手くエスコート出来るだろうか。
女性と2人で出かけたことなど学生時代数回あっただけでそれ以来1度もなかった。
その時も決してエスコートしていたとは言い難い状態だった気がする。
服装はどうしようか。普段はスラックスにカッターシャツ、その上からベストを羽織っているが
休日なのでカジュアルな着こなしの方がよいのだろうか。

・・・考えることが多すぎる。
幸い、次の休日だったとしても時間がある。今あれこれ全て考えても良い結果にならないだろう。

そう自分に言い聞かせて皿洗いに戻る。

食器を全て片付け終わった。
彼女の自室の前で立ち止まる。

「それでは失礼します。おやすみなさい」

そう小さく声をかけて彼女の部屋を出る。
このアパートはオートロックではないので鍵穴に鍵を刺し、しっかりと回す。
しっかりと鍵がかかったことを確認してから自身の部屋に戻る。

これからやらないといけないことはたくさんある。

けれど、それを苦だとは感じなかった。

普段なら多少なり疲れているはずの足取りが、今日はとても軽かった。
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