1 / 1
01
しおりを挟む
「まだまだいける?」と圭輔が尋ねる。
「まだまだ」と加奈が答える。
圭輔と加奈は何本目かのハイボールのグラスを合わせた。
いい感じに酔いがまわっている様子の加奈は、毛並みの長い絨毯が敷かれている床に、膝を崩して女性風の斜めの横座り、角度によってはミニスカートの奥のショーツが見えそうな体勢。
酔っているかどうかよく判らない圭輔は、加奈と肩と肩が触れそうな距離で、男の僕が見ても魅力的に見えるいつもの微笑で、加奈をロックオンしているようだ。
トイレに向かう途中で足元が少しふらついた。
僕も結構酔っているようだ。
数時間前から客は加奈と圭輔だけだった。
圭輔は開店当初からの常連。
年齢は三十代前半、職業はエンジニア。
加奈は今日が三回目の来店で、二十代後半の会社員。
こんなに遅い時間までいるのは今夜が初めてだ。
トイレでスマホでチェックすると、来店予約は入っていないので、今夜は営業終了という事にして、会員向けの店内定点カメラを切った。
月曜日の深夜、客が少ない平日に意外とこういう事が起きる。
加奈と圭輔は、抱き合ってディープキスをしている。圭輔と話す加奈の様子をずっと観察していたので驚きはない。そういうタイプかどうかは一時間も見ていればだいたい判るし、そもそも、ワンナイトの冒険を全く求めてない女性は、こんな妖しいバーにひとりで来ない。
圭輔といつものアイコンタクトを交わした僕はふたりのそばに戻り、圭輔に上半身を委ねている加奈の背後に座り、加奈のスカートの中に手を入れて、ショーツの質感とヒップの感触を確認しながら股間の奥へ右手を進めていった。
加奈の股間の敏感な所に中指の先でそっと触れて、加奈がかすかに反応した瞬間に、ディープキスをしながら加奈のバストをまさぐっている圭輔から例の【信号】が、加奈の身体を通じて伝わってきた。
加奈に触れている指先から伝わってくる、鳥肌が立って皮膚の表面がざわざわする刹那の感覚を伴った【信号】は、右腕を駆け上って脊髄から僕の脳に到達する。【信号】が身体を伝っていく瞬間にも、それなりの快感はあるのだが、いま感じたそれが、普段にも増して強烈だったのは、媒介している加奈が相当なレベルの性的上昇プロセスにあるからだろう。
【信号】は僕の脳に到達した瞬間に、電気的な信号から意味を持った情報に換わり、僕もほぼ無意識で【信号】を返す。
僕よりも密接に肉体的接触をしている圭輔は、加奈の裡(なか)により深く潜って、加奈の心が、かなり広く性的な昂まりを求めて開かれている事を確認して、その情報を【信号】として僕に伝達してくる。メインは圭輔でサブとして僕が絡む事に関して、加奈は全く抵抗は感じていない、どちらかと言うと、初めてのふたりとどういう展開になるか、大いに期待している。それに対して僕も【信号】で了解を返す。
言葉にすればそういった内容の事が、僕と圭輔に間に共通認識として立ち上がる。実際に僕と圭輔の意識の中にいま生じているのは、言葉ではなく、その瞬間に理解している事柄の情報そのもの、のようなものである。
言葉でないものを言葉で説明する事は困難だが、あえて言葉による描写を試みれば、自分の意識というレイヤーの外側に、圭輔が伝達してくる【信号】によって形成される【共通意識】のレイヤーがぴったりと密接して、相互に瞬時にやりとり可能な状態。僕の意識が侵食されるのでもなく、僕が圭輔の意識を侵食するのでもなく、あくまで別のレイヤーではあるが、この瞬間に、一時的に、僕と圭輔が共有するもうひとつの意識のようなモノである。
このような性的シチュエーションで生じる【共通意識】に、どっぷりと自分の意識を重ねあわせている瞬間の、自分の意識の外郭が溶けていくような心地よさ、自分という存在の重力から解放されてどこかを自在に浮遊しているような感覚は、これもまた、言葉で説明するのは難しいのだが、とにかく、格別に気持ちが良い。
その【共通意識】に、圭輔が発信する【信号】、すなわち、ディープキスとバストまさぐりによって加奈から得ている加奈の記憶と意識と心(潜在意識)の情報がなだれこんでいて、僕が右手の指先で触れている加奈から得ている同じような情報も同様になだれこんでいて、僕も圭輔も瞬時にその情報を咀嚼している。
圭輔と目があってからここまでに要した時間は、実時間にすればおそらく一秒に満たないだろうが、例によって、僕の内的時間(多分圭輔の内的時間も)では数分に感じられる。
圭輔が発する【信号】には、加奈がいまの状況を嫌がっていないという事は示されているが、僕は、念の為に、自分でも、加奈の深いレベルを探る為に、加奈のショーツを少しずらして、直接、指先でその箇所にそっと触れる。溶けたバターのように柔らかい部分の、特に目指すべき小さな一点を指先で探る。
指先をかすかに振動させるようにクリトリス周辺を刺戟して加奈がびくっと痙攣した瞬間、指先を通じて、強力な【信号】が流れ込んできた。布地越しではなく、直接肉体に触れる、特に唇・乳首・性器などに触れると、流れ込んでくる【信号】は俄然強度を増すが、今夜は圭輔が上半身に触れている事で更に増強されているのか、ひとりで受信する時よりも数倍強力なようだ
加奈の幼少期からいまに至るまでの記憶や僕と圭輔に対する感情などが、光の奔流のように【共通意識】に流れ込んでくる。
僕は、情報をフィルタリングして一般的情報は全て無効化(全て受容すると多分僕も圭輔もパンクする)して、加奈の性癖・過去のプレイに関する情報、いまこの瞬間の加奈の性的欲求に関する情報のみを抽出する。
加奈が今夜ここに来る直前に読んだレディコミのストーリーが強烈にカットインしてくる。
加奈のクリトリスに触れている指先からから流れ込んでくる【信号】が示す今夜の加奈の心を強烈に支配しているレディコミのイメージを【共通意識】で圭輔と一緒に互いに無意識に整理する。
イケメンのS系上司に憧れるヒロイン、そのヒロインに憧れているらしい年下の部下の三人が登場する、一種の三角関係の話のようだ。
ヒロインは、S系上司に僕とセックスしたかったら僕の目の前で部下とセックスしろ、と言われる。かなりムリがある設定だが、それでも、ヒロインの心は揺れる。いくらなんでも断りそうな年下の部下は、なにやら上司に秘密を握られているらしく、ヒロインに媚薬を飲ませて、セックスをはじめる。
媚薬が効いたヒロインは、上司に見られている事による羞恥心と快感がないまぜになった心境で抵抗できず、年下の部下にフェラチオをするが、部下のペニスは緊張のせいか勃たない。
そこに上司が近づいてきて、部下にキスをして手で触れると部下のモノがしっかり勃ってセックス、
実は部下は上司に憧れているゲイ(上司に近付く手段としてヒロインに接近していた)、上司は目の前でセックスをしているのを見ないと興奮しない、バイの要素もある変態だった、という真相が明らかになり、ヒロインは価値観が崩壊してわけが判らなくなるが、上司と部下に同時に責められて我を忘れて興奮する。
加奈の心はそのヒロインに同調する事を欲しているようなので、さらに同調できるようにこちらから【信号】を送って加奈の裡(なか)のイメージを強化する。加奈が本人が意識していないかもしれないディープな部分で求めているもの、コミックのヒロインが味わっていた絶頂シーンをなるべく、そのまま、再現する。
「まだまだ」と加奈が答える。
圭輔と加奈は何本目かのハイボールのグラスを合わせた。
いい感じに酔いがまわっている様子の加奈は、毛並みの長い絨毯が敷かれている床に、膝を崩して女性風の斜めの横座り、角度によってはミニスカートの奥のショーツが見えそうな体勢。
酔っているかどうかよく判らない圭輔は、加奈と肩と肩が触れそうな距離で、男の僕が見ても魅力的に見えるいつもの微笑で、加奈をロックオンしているようだ。
トイレに向かう途中で足元が少しふらついた。
僕も結構酔っているようだ。
数時間前から客は加奈と圭輔だけだった。
圭輔は開店当初からの常連。
年齢は三十代前半、職業はエンジニア。
加奈は今日が三回目の来店で、二十代後半の会社員。
こんなに遅い時間までいるのは今夜が初めてだ。
トイレでスマホでチェックすると、来店予約は入っていないので、今夜は営業終了という事にして、会員向けの店内定点カメラを切った。
月曜日の深夜、客が少ない平日に意外とこういう事が起きる。
加奈と圭輔は、抱き合ってディープキスをしている。圭輔と話す加奈の様子をずっと観察していたので驚きはない。そういうタイプかどうかは一時間も見ていればだいたい判るし、そもそも、ワンナイトの冒険を全く求めてない女性は、こんな妖しいバーにひとりで来ない。
圭輔といつものアイコンタクトを交わした僕はふたりのそばに戻り、圭輔に上半身を委ねている加奈の背後に座り、加奈のスカートの中に手を入れて、ショーツの質感とヒップの感触を確認しながら股間の奥へ右手を進めていった。
加奈の股間の敏感な所に中指の先でそっと触れて、加奈がかすかに反応した瞬間に、ディープキスをしながら加奈のバストをまさぐっている圭輔から例の【信号】が、加奈の身体を通じて伝わってきた。
加奈に触れている指先から伝わってくる、鳥肌が立って皮膚の表面がざわざわする刹那の感覚を伴った【信号】は、右腕を駆け上って脊髄から僕の脳に到達する。【信号】が身体を伝っていく瞬間にも、それなりの快感はあるのだが、いま感じたそれが、普段にも増して強烈だったのは、媒介している加奈が相当なレベルの性的上昇プロセスにあるからだろう。
【信号】は僕の脳に到達した瞬間に、電気的な信号から意味を持った情報に換わり、僕もほぼ無意識で【信号】を返す。
僕よりも密接に肉体的接触をしている圭輔は、加奈の裡(なか)により深く潜って、加奈の心が、かなり広く性的な昂まりを求めて開かれている事を確認して、その情報を【信号】として僕に伝達してくる。メインは圭輔でサブとして僕が絡む事に関して、加奈は全く抵抗は感じていない、どちらかと言うと、初めてのふたりとどういう展開になるか、大いに期待している。それに対して僕も【信号】で了解を返す。
言葉にすればそういった内容の事が、僕と圭輔に間に共通認識として立ち上がる。実際に僕と圭輔の意識の中にいま生じているのは、言葉ではなく、その瞬間に理解している事柄の情報そのもの、のようなものである。
言葉でないものを言葉で説明する事は困難だが、あえて言葉による描写を試みれば、自分の意識というレイヤーの外側に、圭輔が伝達してくる【信号】によって形成される【共通意識】のレイヤーがぴったりと密接して、相互に瞬時にやりとり可能な状態。僕の意識が侵食されるのでもなく、僕が圭輔の意識を侵食するのでもなく、あくまで別のレイヤーではあるが、この瞬間に、一時的に、僕と圭輔が共有するもうひとつの意識のようなモノである。
このような性的シチュエーションで生じる【共通意識】に、どっぷりと自分の意識を重ねあわせている瞬間の、自分の意識の外郭が溶けていくような心地よさ、自分という存在の重力から解放されてどこかを自在に浮遊しているような感覚は、これもまた、言葉で説明するのは難しいのだが、とにかく、格別に気持ちが良い。
その【共通意識】に、圭輔が発信する【信号】、すなわち、ディープキスとバストまさぐりによって加奈から得ている加奈の記憶と意識と心(潜在意識)の情報がなだれこんでいて、僕が右手の指先で触れている加奈から得ている同じような情報も同様になだれこんでいて、僕も圭輔も瞬時にその情報を咀嚼している。
圭輔と目があってからここまでに要した時間は、実時間にすればおそらく一秒に満たないだろうが、例によって、僕の内的時間(多分圭輔の内的時間も)では数分に感じられる。
圭輔が発する【信号】には、加奈がいまの状況を嫌がっていないという事は示されているが、僕は、念の為に、自分でも、加奈の深いレベルを探る為に、加奈のショーツを少しずらして、直接、指先でその箇所にそっと触れる。溶けたバターのように柔らかい部分の、特に目指すべき小さな一点を指先で探る。
指先をかすかに振動させるようにクリトリス周辺を刺戟して加奈がびくっと痙攣した瞬間、指先を通じて、強力な【信号】が流れ込んできた。布地越しではなく、直接肉体に触れる、特に唇・乳首・性器などに触れると、流れ込んでくる【信号】は俄然強度を増すが、今夜は圭輔が上半身に触れている事で更に増強されているのか、ひとりで受信する時よりも数倍強力なようだ
加奈の幼少期からいまに至るまでの記憶や僕と圭輔に対する感情などが、光の奔流のように【共通意識】に流れ込んでくる。
僕は、情報をフィルタリングして一般的情報は全て無効化(全て受容すると多分僕も圭輔もパンクする)して、加奈の性癖・過去のプレイに関する情報、いまこの瞬間の加奈の性的欲求に関する情報のみを抽出する。
加奈が今夜ここに来る直前に読んだレディコミのストーリーが強烈にカットインしてくる。
加奈のクリトリスに触れている指先からから流れ込んでくる【信号】が示す今夜の加奈の心を強烈に支配しているレディコミのイメージを【共通意識】で圭輔と一緒に互いに無意識に整理する。
イケメンのS系上司に憧れるヒロイン、そのヒロインに憧れているらしい年下の部下の三人が登場する、一種の三角関係の話のようだ。
ヒロインは、S系上司に僕とセックスしたかったら僕の目の前で部下とセックスしろ、と言われる。かなりムリがある設定だが、それでも、ヒロインの心は揺れる。いくらなんでも断りそうな年下の部下は、なにやら上司に秘密を握られているらしく、ヒロインに媚薬を飲ませて、セックスをはじめる。
媚薬が効いたヒロインは、上司に見られている事による羞恥心と快感がないまぜになった心境で抵抗できず、年下の部下にフェラチオをするが、部下のペニスは緊張のせいか勃たない。
そこに上司が近づいてきて、部下にキスをして手で触れると部下のモノがしっかり勃ってセックス、
実は部下は上司に憧れているゲイ(上司に近付く手段としてヒロインに接近していた)、上司は目の前でセックスをしているのを見ないと興奮しない、バイの要素もある変態だった、という真相が明らかになり、ヒロインは価値観が崩壊してわけが判らなくなるが、上司と部下に同時に責められて我を忘れて興奮する。
加奈の心はそのヒロインに同調する事を欲しているようなので、さらに同調できるようにこちらから【信号】を送って加奈の裡(なか)のイメージを強化する。加奈が本人が意識していないかもしれないディープな部分で求めているもの、コミックのヒロインが味わっていた絶頂シーンをなるべく、そのまま、再現する。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる