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19正ヒロインの推理
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「私、エクレール男爵令嬢を探しに行ってきます」
そう言ってドレスのまま会場を出ていったミルクの後をグランが追った。
もう暗くなっているが今夜は満月であるため足元は明るい。
「ガレット子爵令嬢!ちょっと待って」
グランは呼び止めるがミルクは歩を緩めはしたが、足は止めない。
「探すって、どこに行くつもり?」
「先日の件ですが、エクレール男爵令嬢は突き落とされたのではないかと考えています」
階段に差し掛かったミルクが下を向いたまま答える。そうでないと慣れないドレスとヒールで転びそうである。グランがさりげなく手を差し出した。
「ありがとうございます」戸惑いながらも背に腹は代えられないと、ミルクはその手を取った。
「なぜ、そう思うの?」
グランもフリュイも同じ見解だが、あえて尋ねる。
「私は現場にはいなかったのですが、あの日サントノーレ様はあの場へ呼び出されていたのです。 あのタイミングでのあの事故、アイラさんを狙っているというより、サントノーレ様に罪を着せるのが目的だったのではと思います。サントノーレ様自身を狙わなかったのは、犯人の目的がサントノーレ様自身では無くサントノーレ様の名誉を傷つけて婚約破棄を狙っているからではないかと推察します。まぁ、サントノーレ様はそれを期待して乗った様にも思っていますけど」ミルクの言葉にグランは「恐らくその通りだろうなぁ」と思う。
「エクレール男爵令嬢の言動はフリュイ殿下の婚約者の座を狙う令嬢からしたら目障りだったのではと思っています」
その為ミルクは今回もその人物によってアイラはどこかに閉じ込められているのではないか、その人物がパーティーでショコラになにか仕掛けてくるのではと思っていた。
「犯人はサントノーレ様に成り代われる自信のある自意識過剰で自己愛の強い高位の令嬢です。
あまり人望がなく、詰めが甘く、行き当たりばったりで、短絡的な人物だと思っています。
おそらく信用して使える手駒もなく、他の者に知られないために自分の手で事を行っています。
そして今日もあまり考えずに行動している・・・こういったことに慣れていないと言いましょうか・・・その為エクレール男爵令嬢は適当な部屋に閉じ込められていると思っています──」
「あ~流石にそこまでは・・・」
グランはこの子見た目と違って辛辣なことを言うなぁと思った。そして、意外と良く喋る。
なぜ僕の周りには強い女性しかいないのだろうとも。
「え、だって呼び出しの手紙、差出人不明とはいえ直筆で書く令嬢ですよ」
「え、そうなのか?」
「はい。サントノーレ様は読むなり捨てていましたけど」
「え、姉さん証拠の品を捨てたのかよ」
「と、言われると思って拾っておきました。普段はそのようなことはしないのですが、人目につく読書室に捨てていましたしサントノーレ様の為になると思いましたので」
そうミルクが言ってバッグに入れていた手紙を出してグランに渡した。
丁度その時、二つの校舎を結ぶ渡り廊下の横、木々の奥から人の声が聞こえてきた。
「神様、もう自分をヒロインだとは思っていません。モブで十分です。なので平穏な生活をあたしに下さい」
月の光と声を便りに進むと、そこには扉の開いた用具室の横のベンチに腰かけ神に祈るアイラの姿があった。
そう言ってドレスのまま会場を出ていったミルクの後をグランが追った。
もう暗くなっているが今夜は満月であるため足元は明るい。
「ガレット子爵令嬢!ちょっと待って」
グランは呼び止めるがミルクは歩を緩めはしたが、足は止めない。
「探すって、どこに行くつもり?」
「先日の件ですが、エクレール男爵令嬢は突き落とされたのではないかと考えています」
階段に差し掛かったミルクが下を向いたまま答える。そうでないと慣れないドレスとヒールで転びそうである。グランがさりげなく手を差し出した。
「ありがとうございます」戸惑いながらも背に腹は代えられないと、ミルクはその手を取った。
「なぜ、そう思うの?」
グランもフリュイも同じ見解だが、あえて尋ねる。
「私は現場にはいなかったのですが、あの日サントノーレ様はあの場へ呼び出されていたのです。 あのタイミングでのあの事故、アイラさんを狙っているというより、サントノーレ様に罪を着せるのが目的だったのではと思います。サントノーレ様自身を狙わなかったのは、犯人の目的がサントノーレ様自身では無くサントノーレ様の名誉を傷つけて婚約破棄を狙っているからではないかと推察します。まぁ、サントノーレ様はそれを期待して乗った様にも思っていますけど」ミルクの言葉にグランは「恐らくその通りだろうなぁ」と思う。
「エクレール男爵令嬢の言動はフリュイ殿下の婚約者の座を狙う令嬢からしたら目障りだったのではと思っています」
その為ミルクは今回もその人物によってアイラはどこかに閉じ込められているのではないか、その人物がパーティーでショコラになにか仕掛けてくるのではと思っていた。
「犯人はサントノーレ様に成り代われる自信のある自意識過剰で自己愛の強い高位の令嬢です。
あまり人望がなく、詰めが甘く、行き当たりばったりで、短絡的な人物だと思っています。
おそらく信用して使える手駒もなく、他の者に知られないために自分の手で事を行っています。
そして今日もあまり考えずに行動している・・・こういったことに慣れていないと言いましょうか・・・その為エクレール男爵令嬢は適当な部屋に閉じ込められていると思っています──」
「あ~流石にそこまでは・・・」
グランはこの子見た目と違って辛辣なことを言うなぁと思った。そして、意外と良く喋る。
なぜ僕の周りには強い女性しかいないのだろうとも。
「え、だって呼び出しの手紙、差出人不明とはいえ直筆で書く令嬢ですよ」
「え、そうなのか?」
「はい。サントノーレ様は読むなり捨てていましたけど」
「え、姉さん証拠の品を捨てたのかよ」
「と、言われると思って拾っておきました。普段はそのようなことはしないのですが、人目につく読書室に捨てていましたしサントノーレ様の為になると思いましたので」
そうミルクが言ってバッグに入れていた手紙を出してグランに渡した。
丁度その時、二つの校舎を結ぶ渡り廊下の横、木々の奥から人の声が聞こえてきた。
「神様、もう自分をヒロインだとは思っていません。モブで十分です。なので平穏な生活をあたしに下さい」
月の光と声を便りに進むと、そこには扉の開いた用具室の横のベンチに腰かけ神に祈るアイラの姿があった。
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