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7シャルロットの憂鬱なお茶会①

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シャルロット・ダックワーズ公爵令嬢は王宮の廊下を侍女に先導されて歩きながらため息をついた。
ショコラは王子妃とはいえ公爵夫人となることが決まっている上に元々神童と言われていたという優秀さだ。必要な王子妃の課程は全て終えているらしい。
王太子妃の自分とは学ばなければならないことの量も内容も雲泥の差ではあるので、今まではショコラがいないことに対して何も感じなかったが同郷と分かり話をするようになってからはなんだか寂しく感じる。
せめてこの妃教育後の王太子殿下との逢瀬お茶会さえなければ、気持ちだけは楽なのにと思わずにはいられない。
今日のお茶会は中庭でとのことだったのでそちらに向かうと、既に王太子殿下が席に着いていた。
「やあ。私のシャル。会いたかったよ相変わらず美しいね」
殿下はそう言いながら立ち上がった。
「遅れて申し訳ありません、殿下」
お詫びの言葉を言っていると、殿下にその手を取られ手の甲に殿下の唇の感触を感じた。
(ぃっ!)
「気にしないで、私が君に早く会いたかっただけだから。それに君が私の元に嫁いでくれる為に妃教育に励んでくれているのだと思うと、とても嬉しいんだ」
金髪碧眼でザ・王子様なフォンダン・オランジェット王太子殿下と初めて会ったのはこの中庭、王宮主催のお茶会だった。
シャルロットにはそのお茶会が二人の王子殿下の婚約者を決めるためのものだったことはもちろん、自分が最有力候補であることも知らされていなかった。
記憶が戻る前であったこともあり、王子様と同じテーブルの令嬢達と普通にお友だち気分で楽しんでいたのだが、気が付くと第一王子殿下の婚約者になっていた。
第一王子殿下が強く望まれ、お茶会での様子も仲睦まじいようであったというのが理由らしかった。
はじめはお茶会での楽しかった想い出と、かっこよくて、いつも優しくシャルロットをお姫様扱いしてくれる王子様に好意も持っていたが、前世の記憶を思い出してからはどうしても受け入れられなくなってしまったのである。
「今日は以前から君に見せたいと言っていた花が咲いたので庭にお茶の用意をしてもらってるんだ」
王太子殿下はそう言うと、キラキラ笑顔で微笑んでシャルロットをエスコートする為に腕を出した。
「それは楽しみですわ」
シャルロットは王妃教育で培った笑顔の仮面を被り、その腕に自分の手をそえた。
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