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第3章

どんでん返し

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翌朝、内ケ島の軍勢が正論寺へとやってきた。

堅く閉ざされた門を破ろうと、内ケ島軍は一斉に掛け声を上げて、破城槌はじょうついを掲げた。

門が破られたのと同時に、ものの毛は、

「引けーー!!」

と大音声で叫び、門弟らとともに裏門から外へと走り出た。

塩屋との計画通り、荒れ地へと内ケ島軍をおびき寄せる手筈だった。

荒れ地では、残りの門弟が弓を引き、内ケ島軍を待ち構えていた。

太鼓の音が響く。

内ケ島軍がものの毛たちに襲い掛かろうとしたその時、内ケ島軍の背後、そして右手から、

隠れていた塩屋の兵たちが、一斉に飛び出した。

驚いた内ケ島軍は総崩れとなった。

が、塩屋は逃さない。

壊滅状態になるまで、内ケ島軍を打ちのめすつもりであった。


荒れ地には、百五十もの内ケ島兵の遺骸が横たわった。

「さあ、早う帰雲城に」

「内ケ島のご領主の首を取りましょう」

と、門弟たちが騒ぎ立てた。

そこへ、白旗を掲げた降伏の使者が、帰雲城からやってきた。


「えい、えい、オー」

ものの毛の軍勢は生まれて初めて勝どきをあげ、興奮に酔いしれた。

子弟たちは次々に塩屋に駆け寄って、

「本当に、あなた様のおかげです」

「塩屋様は、天の使いじゃ」

と涙ながらに言った。

ものの毛もかぶとを脱いで、塩屋のもとへと進んだ。

「皆の言う通りじゃ。まことに、塩屋様は天の使い。このご恩は生涯忘れぬ」

頭を下げた。

すると塩屋は、おもむろに無言で両手を振り上げ、ものの毛の頭めがけて、刀を振り下ろした。

ものの毛の首が、塩屋の足元に転げ落ちた。

農民たちは騒然となった。

「塩屋様、何をなさる」

「気でも触れたか」

塩屋はものの毛の髻をつかみ、高々と天に掲げた。

「者ども、わしがおらねば、お主らはとっくにこの世にはおらぬ。向後こうごは命を懸けて、わしにその恩を返すように。
今日から白川郷は、わしのものじゃ」

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