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24、お彼岸

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「やい、子分」

「なんです、親分」

「おめぇ、ずいぶん久しぶりのくせに、しれっと出て来やがって」

「ちょっと待って下せえ、そりゃ作者の黒坂某の都合で、あっしのせいじゃありませんぜ」

「まったく、もっと働けってんだ、作者の野郎め。9月になっちまっただろうが」

「へい、すっかり秋ですねぇ。こないだ蚊取り線香も片付けました。それにしても、あの入れ物はどうして豚の形なんでしょうねぇ」

「昔はな、横に寝かした徳利の中にヨモギやら松葉やらを入れて燃やして、虫除けにしてたんだ。それが豚に見えたのかもしれねえな」

「なるほど。食べてすぐ横になると豚になるっつうのは、そこから来てるんですね」

「バアロウ、そりゃ豚じゃねえ、牛だよ。知ったかぶりするんじゃねえ」

「へい。ところで線香と言えば、もうすぐ彼岸ですねえ。この御時世、墓参りにも行けねえから、家でぼた餅でも食うくらいですけど」

「おめぇはこしあん派か、つぶあん派か?」

「あっしはきな粉派です。毎年御難の餅を食ってるんですよ。親分、御難の餅を知ってますかい?」

「おうよ、おめぇには兄弟がたくさんいるってことだろ」

「五男じゃねぇ、あっしは三男です。昔、偉い坊さんが死刑になる時、尼さんが最後の供養としてゴマときな粉の餅を差し出したら難を逃れたっつう言い伝えがあるんです。親分こそ、知ったかぶりはいけやせんぜ」

「へっ、兄弟がたくさんいるには違えねえじゃねえか。兄弟も墓参りに行けねえのか?」

「そうなんでさ。実はこの間、墓参りの代行サービスを頼んだんでさあ。ところがあっしら兄弟も年に一度行くか行かないかの墓の場所を業者に伝えるのが難しくって。綺麗になった墓の写真を撮って業者が送ってくれたんですがね、それがうちの墓なのかどうなのか、実のところはわからないんでさぁ。親分は墓参りには行くんですかい?」

「墓なんかねえよ」

「ええっ、墓がないんですかい?」

「バアロウ!いいか、仏教の本場タイには仏壇も墓もねえんだ」

「ええっ、親分の先祖はタイ人なんですかい?」

「バアロウ、ものの例えだよ」

「ははあ。あっしはタイと言えばBTSしか知りやせんぜ」

「こいつ、まぁた知ったかぶりしてやがる。BTSは韓国のスターだよ」

「親分、その言葉そっくりお返ししますぜ。BTSはタイのスカイトレインのことですよ」



・・・・・

〈蚊遣り器〉
蚊遣器の形状にブタが用いられるようになった理由には諸説ある。歴史的には蚊取り線香が発明される以前の江戸時代の武家屋敷より徳利を横向きにして豚の形に見立てた陶器が発掘されており、もともと野外で蚊よけのために壺に草木を入れて燻す習慣が存在し、壺が横型になって豚の形にデフォルメされるようになったともいわれる。(Wikipediaより抜粋)

〈ぼたもち〉
1271年9月12日、日蓮が鎌倉の龍ノ口の刑場へ引き立てられていった。急を聞いた桟敷の尼が、何か最後のご供養をと考えたが、餡を作る時間がなく、きな粉とゴマをまぶして牡丹餅を作り日蓮に献上したという。日蓮は難を免れ、佐渡に流罪となった。この故事にちなみ、日蓮宗では陰暦9月12日に、「御難の餅」というゴマのぼたもちを作って供える。(Wikipediaより抜粋)

〈バンコク・スカイトレイン〉
正式名称を和訳すると「国王陛下ご生誕6周支(72歳)記念高架鉄道」といったものになるが、一般にタイでは運営会社の「Bangkok Mass Transit System Public Company Limited.(バンコク大衆輸送システム社)」の頭文字を取ってBTS(บี.ที.เอส)と呼ばれている。(Wikipediaより抜粋)
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