令和の大泥棒～嘘大百科～

23、おうち時間

「親分」

「…」

「親分？」

「うるせえな、今、大河ドラマの再放送見てんだ、静かにしろってんだ」

「へい。親分、おうち時間を満喫してますねえ。…あ、これ、天下の梟雄きょうゆう、松永久秀でしょう？この俳優さん好きだなあ。ところで親分、梟雄の梟って、ふくろうのことですよね？梟雄といえば残忍なイメージなのに、どうしてふくろうなんて言うんでしょうねえ」

「知らねえのか。ふくろうはな、親を食うって言われてるんだ」

「そりゃ意外だなあ。あんなに可愛らしいのに。ところで親分、みんな衣装が華やかですねぇ。ああいう着物、昔はどうやって洗濯してたんでしょうね」

「知らねえのか。昔はな、着物の糸を全部解いて、反物の状態に戻してから洗ってたんだ」

「そりゃ大変だ」

「さらに、布を染める時は、綺麗に色が出るからって人骨まで使ったらしい」

「ひええ、すげえこだわりようだ。…あっ、イロハ太夫だ。色っぽいですねえ」

「俺は、岡太夫のほうが好きだな」

「岡太夫？どこの誰ですか」

「知らねえのか。岡太夫といえば、わらび餅のことだ。わらび餅に感動した天皇が、そういう名前を付けたんだよ」

「ははあ。名前だけ聞くと、なんのことやらさっぱりですね。隠語みてえだ」

「隠語といえば、マグロとか、白馬とか、知らざる言葉が山ほどあらあ」

「白馬？オリンピックやった場所ですかい？」

「違う。酒だ、どぶろくのことだよ」

「なるほど、密造がばれないようにってわけですね」

「そういえば、俺は令和の大泥棒なのに、オリジナルの隠語がねえ。お前、なにか作れ」

「ずいぶん急ですねぇ。うーん…あ、そうだ」

「思いついたか」

「へい。〝上品なハエ〟です」

「上品なハエ？どんな時に使う隠語だ」

「お宝が無かった時ですよ。たからない、ってね」

「バアロウ」

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〈洗張〉
洗張は、和服（呉服）専門の洗濯方法の一つである。着物など、縫い合わされて衣服の形状をなしているものから糸を抜き、一枚布の形状に解き離しての洗浄を行う。一般家庭で行う場合は、布団や綿入れ半纏なども含む家中のきものの「解きもの」を春に始めたという。(Wikipediaより抜粋)

〈わらび餅〉
醍醐天皇が好物としており太夫の位を授けたという言い伝えがあり、そこからわらび餅の異名を岡大夫とも言う。(Wikipediaより抜粋)

〈マグロ〉
マグロとは、鉄道職員の間で、触車事故による轢死体を指す俗語。いずれも部内での業界用語、隠語であるとされる。死者に対する礼を失することから、どの鉄道会社においてもこの用語の使用を公には認めていない。(Wikipediaより抜粋)

〈刺股〉
刺股（さすまた）は、相手の動きを封じ込める武具及び捕具。U字形の金具に2-3メートルの柄がついており、金具の部分で相手の首や腕などを壁や地面に押しつけて捕らえる。
現代では、柄が木製からアルミや強化プラスチック製になり軽量化され、警察でも使用されている。(Wikipediaより抜粋)

〈紺屋〉
紺屋（こうや/こんや）とは江戸時代に染め物屋をさした言葉。柳田国男の『毛坊主考』によると、昔は藍染めの発色をよくするために人骨を使ったことから、紺屋は墓場を仕事場とする非人と関係を結んでいた。(Wikipediaより抜粋)