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16、親分の愛
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「あの、親分」
「なんだ、子分」
「赤チン、貸してくれやせんか」
「なんだ、どうしたってんだ」
「転んで両膝怪我しちまったんです」
「大の大人がどうやって転ぶんだ」
「いやあ、ながらスマホしてたら階段で転んじまって」
「バアロウ、お前の目と耳はなんのためについてやがるんだ。どれ、見せてみろ。…こりゃひでえ。膿むかも知れねえぞ。おめえ、保険証は持ってるか」
「へい、他人のならありやす」
「まったく、世話が焼ける奴だ。ほら、赤チンつけて、ちょっと待ってろ」
「へい」
「あ、親分。おかえりなさい」
「ほら、足出せ」
「親分、もしかして薬、買ってきてくれたんですかい。涙が出ちまうなあ」
「ちょっと冷たいぞ」
「へい、そんなの朝飯前です…ん?なんかモゾモゾする…うぎゃあ~!親分、なんですか、コレ!」
「何って、蛆だよ」
「う…ウジ?ひでえ!嫌がらせだ」
「人聞きの悪りぃこと言うない。嫌がらせじゃねえ。これはマゴットセラピーっつって、れっきとした治療だ」
「勘弁してくだせえ、あっしは虫はだめなんです、特に白いのは」
「そうか。じゃ、これはどうだ」
「ん?またモゾモゾ…って、アリじゃねえですか!親分!白がだめなら黒でって、その考え方はいけやせんぜ」
「なにいってやがる、アリは傷口を塞ぐんだ」
「とにかく、虫はだめです」
「バアロウ!虫だ虫だと毛嫌いしやがって。こうなりゃ荒療治だ」
「ちょっとちょっと、筆で何する気です?やめて!ああ、顔が真っ黒になっちまった!」
「いいかおめえ、今夜は一睡もするな。仕上げはこれだ」
(パッパッ)
「へっくしゅん!ああ、コショウまでかけられた!親分、いくらなんでもこの仕打ち、あっしも許しませんぜ」
「バアロウ、これは庚申待だ。命が惜しけりゃ、虫は有難く体の中に飼っとくもんだ」
・・・・・・・・・・・・
〈赤チン〉
ヨードチンキは、ヨウ素(ヨード)の殺菌作用を利用した殺菌薬・消毒薬のことである。
1970年代以前、ヨードチンキはマーキュロクロム液とともに家庭用消毒剤として広く流布していた。特に学童を中心に一般家庭でも、マーキュロクロム液が赤色なので「赤チン」、ヨードチンキを「ヨーチン」と呼び表した。
現在では、ヨードチンキよりもポビドンヨード液の方が多用される。(Wikipediaより抜粋)
〈蛆〉
蛆(うじ)、あるいは蛆虫(うじむし)は、ハエの幼虫である。一般には、餌となる腐肉など生ごみや動物の糞、死体などに発生するものを指す。医療ではマゴット(Maggot)とも呼ばれる。
傷の手当や治療が不十分で、不潔な包帯を放置された場合など、傷口に蛆が湧く場合がある。けが人にとってその感触は極めて不快であるとのことだが、蛆が膿や腐敗した部分を食べることで傷口が清潔になり、むしろ傷の状態が良くなったり、患部を含めた周辺部位まで壊疽が広がることによる切断や切除を免れたりする場合がある。第一次世界大戦中、既に傷口に蛆が発生した負傷兵の生存率が突出して高いことには注目が集まっていたという。(Wikipediaより抜粋)
〈蟻〉
アリ(蟻)は、ハチ目・アリ上科・アリ科に属する昆虫である。
アジア、アフリカ、南米の一部地域では傷口の治療にアリが使用されていた。まず傷口を押さえておき、アリの胴を捕まえて傷に近づけ、かみつかせると同時に指先で頭と胴を切り離す。アリは一度かみつくと離さない習性があるため、アリの身体をねじり取ってしまえば傷口は縫い合わされる。小アジアに位置するスミルナの1896年の記述には、1インチの傷に対して生きたアリ10匹をあてがい、いったんアリが傷にしっかりと噛みついたら、ハサミでアリの身体を切り取り、傷がふさがってきた3日後に残った下顎を取り除くとある。(Wikipediaより抜粋)
〈庚申待〉
庚申待(こうしんまち)は中国の民俗宗教である道教の伝説に基づくものである。
人間の頭と腹と足には三尸(さんし)の虫(彭侯子【上尸】・彭常子【中尸】・命児子【下尸】)がいて、いつもその人の悪事を監視しているという。
三尸の虫は庚申の日の夜の寝ている間に天に登って天帝(「閻魔大王」とも言う)に日頃の行いを報告し、罪状によっては寿命が縮められたり、その人の死後に地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕とされると言われていた。
そこで、三尸の虫が天に登れないようにするため、この夜は村中の人達が集まって神々を祀り、その後、囲炉裏を囲んで寝ずに酒盛りなどをして夜を明かした。これが庚申待である。
庚申待ではとにかくその日は徹夜で過ごさなくてはならないため、眠らないように、顔にスミを塗ったり、胡椒をかけたり、太鼓を叩いたりしたという。また籠城中の兵士達も庚申待を行っており、カフェインが入っている茶を飲んで眠らないようにした。(Wikipediaより抜粋)
「なんだ、子分」
「赤チン、貸してくれやせんか」
「なんだ、どうしたってんだ」
「転んで両膝怪我しちまったんです」
「大の大人がどうやって転ぶんだ」
「いやあ、ながらスマホしてたら階段で転んじまって」
「バアロウ、お前の目と耳はなんのためについてやがるんだ。どれ、見せてみろ。…こりゃひでえ。膿むかも知れねえぞ。おめえ、保険証は持ってるか」
「へい、他人のならありやす」
「まったく、世話が焼ける奴だ。ほら、赤チンつけて、ちょっと待ってろ」
「へい」
「あ、親分。おかえりなさい」
「ほら、足出せ」
「親分、もしかして薬、買ってきてくれたんですかい。涙が出ちまうなあ」
「ちょっと冷たいぞ」
「へい、そんなの朝飯前です…ん?なんかモゾモゾする…うぎゃあ~!親分、なんですか、コレ!」
「何って、蛆だよ」
「う…ウジ?ひでえ!嫌がらせだ」
「人聞きの悪りぃこと言うない。嫌がらせじゃねえ。これはマゴットセラピーっつって、れっきとした治療だ」
「勘弁してくだせえ、あっしは虫はだめなんです、特に白いのは」
「そうか。じゃ、これはどうだ」
「ん?またモゾモゾ…って、アリじゃねえですか!親分!白がだめなら黒でって、その考え方はいけやせんぜ」
「なにいってやがる、アリは傷口を塞ぐんだ」
「とにかく、虫はだめです」
「バアロウ!虫だ虫だと毛嫌いしやがって。こうなりゃ荒療治だ」
「ちょっとちょっと、筆で何する気です?やめて!ああ、顔が真っ黒になっちまった!」
「いいかおめえ、今夜は一睡もするな。仕上げはこれだ」
(パッパッ)
「へっくしゅん!ああ、コショウまでかけられた!親分、いくらなんでもこの仕打ち、あっしも許しませんぜ」
「バアロウ、これは庚申待だ。命が惜しけりゃ、虫は有難く体の中に飼っとくもんだ」
・・・・・・・・・・・・
〈赤チン〉
ヨードチンキは、ヨウ素(ヨード)の殺菌作用を利用した殺菌薬・消毒薬のことである。
1970年代以前、ヨードチンキはマーキュロクロム液とともに家庭用消毒剤として広く流布していた。特に学童を中心に一般家庭でも、マーキュロクロム液が赤色なので「赤チン」、ヨードチンキを「ヨーチン」と呼び表した。
現在では、ヨードチンキよりもポビドンヨード液の方が多用される。(Wikipediaより抜粋)
〈蛆〉
蛆(うじ)、あるいは蛆虫(うじむし)は、ハエの幼虫である。一般には、餌となる腐肉など生ごみや動物の糞、死体などに発生するものを指す。医療ではマゴット(Maggot)とも呼ばれる。
傷の手当や治療が不十分で、不潔な包帯を放置された場合など、傷口に蛆が湧く場合がある。けが人にとってその感触は極めて不快であるとのことだが、蛆が膿や腐敗した部分を食べることで傷口が清潔になり、むしろ傷の状態が良くなったり、患部を含めた周辺部位まで壊疽が広がることによる切断や切除を免れたりする場合がある。第一次世界大戦中、既に傷口に蛆が発生した負傷兵の生存率が突出して高いことには注目が集まっていたという。(Wikipediaより抜粋)
〈蟻〉
アリ(蟻)は、ハチ目・アリ上科・アリ科に属する昆虫である。
アジア、アフリカ、南米の一部地域では傷口の治療にアリが使用されていた。まず傷口を押さえておき、アリの胴を捕まえて傷に近づけ、かみつかせると同時に指先で頭と胴を切り離す。アリは一度かみつくと離さない習性があるため、アリの身体をねじり取ってしまえば傷口は縫い合わされる。小アジアに位置するスミルナの1896年の記述には、1インチの傷に対して生きたアリ10匹をあてがい、いったんアリが傷にしっかりと噛みついたら、ハサミでアリの身体を切り取り、傷がふさがってきた3日後に残った下顎を取り除くとある。(Wikipediaより抜粋)
〈庚申待〉
庚申待(こうしんまち)は中国の民俗宗教である道教の伝説に基づくものである。
人間の頭と腹と足には三尸(さんし)の虫(彭侯子【上尸】・彭常子【中尸】・命児子【下尸】)がいて、いつもその人の悪事を監視しているという。
三尸の虫は庚申の日の夜の寝ている間に天に登って天帝(「閻魔大王」とも言う)に日頃の行いを報告し、罪状によっては寿命が縮められたり、その人の死後に地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕とされると言われていた。
そこで、三尸の虫が天に登れないようにするため、この夜は村中の人達が集まって神々を祀り、その後、囲炉裏を囲んで寝ずに酒盛りなどをして夜を明かした。これが庚申待である。
庚申待ではとにかくその日は徹夜で過ごさなくてはならないため、眠らないように、顔にスミを塗ったり、胡椒をかけたり、太鼓を叩いたりしたという。また籠城中の兵士達も庚申待を行っており、カフェインが入っている茶を飲んで眠らないようにした。(Wikipediaより抜粋)
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