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18、不老不死

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「やい、子分」

「へい、親分」

「人魚の肉を盗んで来い」

「人魚の肉?そんなもの盗んで、どうする気です」

「食うらしい」

「正気ですかい?人魚なんていねえし、いたとしても不味まずいに決まってます」

「バアロウ!おめえ、八尾比丘尼の伝説を知らねえのか」

「やおびくに・・・?」

「人魚の肉を食べた八尾比丘尼は、八百年生きたっていう話だ」

「そんなもん、出鱈目でたらめですよ」

「出鱈目でも欲しがる奴はいるんだ」

「アマビエの絵ならよく見ますがねえ」

「アマビエじゃねえ。人魚だ、人魚。とっとと探してこい」

「へいへい、いつものパターンだ。まずは、検索、検索っ・・・と」


(お寺の戸を開けながら)

「こんちわ。すみませーん」

「はいはい」

「どうも、ご住職ですかい。ここに、人魚のミイラがあるって聞いたんですがね。見せてもらえませんかい」

「あいにく、数年前の火事で、焼けてしまいまして」

「焼けた?ひとかけらも、残ってないんですかい」

「ええ、残念ですが。聖徳太子が出会ったという、由緒正しいミイラだったんですがね」

「そりゃあ困った。ご住職、他に人魚に縁のある所を知りませんかね」

「それなら九州の寺に行けばよろしい」


(お寺の戸を開けながら)

「こんちわ。すみませーん」

「はいはい」

「どうも、ご住職ですかい。ここに、人魚のミイラがあるって聞いたんですがね。見せてもらえませんかい」

「あいにく、ここには骨が埋まってるだけでして」

「骨?肉はないんですかい」

「肉?・・・さては、八尾比丘尼になろうとお思いではないでしょうな」

「ぎくっ。まさか。あっしは男ですから、八尾比丘尼にはなれませんよ」

「珍しい魚が見たいなら、女人禁制の大鳥池おおとりいけにでも行けばよろしい」

「大鳥池?そこには何がいるんです」

「タキタロウという、幻の魚ですよ」

「ははあ。女人禁制だから、魚もタロウか。そいつを人魚と偽って、魚拓ぎょたくを取って、うろこも取って、干物にして売れば三度おいしい。さっそく行ってみよう」


(大鳥池でつり竿を持ちながら)

「ああ~暇だ。ちっとも釣れやしねえ。・・・おおっ?引いた、引いてるぞ!重い、重い・・・そりゃ~!上がった!!なんだ、こりゃあ・・・?丸っこくて茶色い、こりゃ・・・木魚もくぎょだ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<八百比丘尼>
八百比丘尼(やおびくに)は、日本の伝説上の人物。特別なもの(人魚の肉など)を食べたことで不老長寿を獲得した比丘尼である。地方により伝説の細かな部分は異なるが大筋では以下の通りである。  ある男が、見知らぬ男などに誘われて家に招待され供応を受ける。その日は庚申講などの講の夜が多く、場所は竜宮や島などの異界であることが多い。そこで男は偶然、人魚の肉が料理されているのを見てしまう。その後、ご馳走として人魚の肉が出されるが、男は気味悪がって食べず、土産として持ち帰るなどする。その人魚の肉を、男の娘または妻が知らずに食べてしまう。それ以来その女は不老長寿を得る。(Wikipediaより抜粋)

<観音正寺>
観音正寺(かんのんしょうじ)は、滋賀県近江八幡市安土町石寺にある仏教寺院。
伝承によれば、605年に聖徳太子がこの地を訪れ、聖徳太子がこの地を訪れた際に出会った「人魚」の願いにより、一寺を建立したというものである。その人魚は、前世が漁師であり殺生を業としていたために人魚に生まれ変わってしまい苦しんでいた。そこで聖徳太子に自身を成仏させてほしいと懇願したのである。こうして聖徳太子はその願いを受けて当寺を建立し、自ら千手観音像を作って本尊としたというものである。当寺にはその人魚のミイラと称するものが伝えられていたが、1993年に火災で焼失した。(Wikipediaより抜粋)

<龍宮寺>
龍宮寺(りゅうぐうじ)は、福岡県福岡市博多区冷泉町にある浄土宗鎮西派の寺院。
当初は袖の湊の海辺に建立されたが、潮が満ちると寺内まで潮に浸かることから浮御堂と称したという。1222年に博多津に人魚が出現した際にこれを寺内に埋葬して寺号を龍宮寺と改めた。(Wikipediaより抜粋)

<大鳥池>
大鳥池(おおとりいけ)は、山形県鶴岡市にある湖。大鳥池は古くから女人禁制とされ、非常に神秘的な湖であった。タキタロウという巨大魚が生息しているとされる。NHKや山形放送などの調査取材も行われ、巨大魚の生息は確認されたが、実物は未確認の生物である。(Wikipediaより抜粋)

<魚拓>
魚拓(ぎょたく)とは、釣りで釣った魚の像を、墨や絵の具を使って紙などに転写したもの。 釣り上げた魚の原寸大の記録を残すために行われる。(Wikipediaより抜粋)

<木魚>
木魚(もくぎょ、杢魚とも)とは、仏具・楽器の一種である。
木魚は、読経をするときに打ち鳴らすことで、リズムを整える。また、眠気覚ましの意味もあり、木魚が魚を模しているのは、眠るときも目を閉じない魚がかつて眠らないものだと信じられていたことに由来する。自らの尾を食う魚や、2匹の魚や龍が珠を争う姿などを図案化した鈴のような形をしている。表面には魚の鱗が彫刻されている。木魚の原型は禅寺で使われていた「魚板」(魚鼓)である。これは黄檗宗の本山である黄檗山萬福寺や護国山東光寺、韓国の寺院などで見る事ができる。 魚板とはその名の通り魚の形をした板であり、現在午前11時45分にだけ鳴らされている。魚の形をしているのは、魚は日夜を問わず目を閉じないことから、寝る間を惜しんで修行に精進しなさいという意味である。そして、口にくわえた丸いものは煩悩を表し、魚の背をたたくことで煩悩を吐き出させる、という意味合いが有る。
(Wikipediaより抜粋)

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