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10、丸っ子ちゃん
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「やい、子分」
「へい、親分」
「おめえ、静岡に行って、石を盗んで来い」
「また石ですか?この前は海の中で、その前は奈良で、石ばっかりじゃねえですか」
「待て。今回のはただの石じゃねえ。下手したら、すごい儲けがでるぜ」
「儲け、ねえ・・・。で、どんな石なんです?」
「夜泣き石だ」
「夜泣き石?つまり、夜になると泣く石ですかい?」
「そうだ。そいつを手に入れて、泣かせて見世物にすれば、がっぽがっぽ儲かるぞ」
「そりゃあ、本当に泣けばの話でしょうよ」
「だから、泣かせてみせろってんだ」
「そんな、ホトトギスじゃああるまいし。あっしはご免ですよ」
「なんだとォ?おめえ、親分のいうことが聞けねえのか」
「ああ、聞けませんね。そんな雲をつかむような話にゃあ、やすやすと乗っかれません。確実に泣くっていうんなら、考えないでもないですがね。親分がまず石の所へ行って、泣くことを証明して下せえ」
「あァ?どうやって泣かすんだ」
「それを考えるのが、親分の仕事でしょうよ。さ、行った行った」
(山を登りながら)
「ハア、ハア・・・、ああ、骨が折れるや。何のための親分だ、まったく。大儲けしてもあいつにはびた一文やらねえぞ。こうなりゃ絶対に石を泣かしてやる。おっ・・・あったあった、あれが夜泣き石か。デカいが、丸っこくてかわいらしい奴だ。どれ・・・(石を撫でながら)おお、よしよし、おめえは泣くに決まってるよな?よし、まずは夜になるのを待つか」
(ホウ、ホウ・・・・キイーッ!バタバタバタ・・・)
「ああ、夜中は冷えるな。さっきからずっと、聞こえるのは森の生き物の声ばかりで、おめえにしがみついて耳をくっつけても、何も聞こえねえじゃねえか」
(おにゃあ、おにゃあ)
「ありゃ、タヌキか?赤ん坊みたいな声だ。昔の奴らが、タヌキの声を石だと思い込んだんじゃねえのか。うーん、やっぱりおめえさんは、泣かねえなあ。こうなると、どうやってイカサマするか」
(ガサガサッ)
「誰だっ!・・・なんだ、鹿か・・・、でけえから物音も大きいや。うう、小便小便、くそう、丸っ子ちゃんのそばを離れたくねえなあ・・・」
(すぐ近くの茂みで用を足して)
「はァ、怖かった・・・丸っ子ちゃん、戻ってきたぜ。おめえは温けえなあ。おめえが俺を守ってくれるのか・・・。ところで、どうやっておめえを泣かすか・・・グウ・・・グウ・・・」
「親分、親分!起きて下せえよ!」
「うん・・・?丸っ子ちゃん?」
「丸っ子ちゃん?親分、ダッコちゃん人形みたいに石にしがみついて、そんな恰好でよく寝られますねえ。ところで、石は泣きましたか」
「泣かねえよ」
「やっぱりね。あれから調べたんですがねえ、昔、親分と同じように、夜泣き石を見世物にしようと東京に持ち帰ろうとした輩がいるらしいんですよ。でも失敗して、焼津に置き去りにしたらしいですぜ。あっしらは同じ轍を踏まねえように、うまく細工をして、泣いてるように見せかけねえと」
「こいつを泣かせることなんかできるか!!」
「・・・親分?」
「いいか、泣かせるのは駄目だ。こいつは一晩中俺を守ってくれた、ありがたーい丸っ子様だ。泣かせたら罰が当たらあ。よし、子分、おめえ、代わりに笑わせてみろ。夜泣き石じゃなくて、笑い石だ」
「ええっ?!笑かすのは、もっと難しいですぜ」
「そこを考えるのが、おめえの仕事だろうが。俺ァちょっと用を足して来るから、それまでに考えとけ」
「結局全部、あっしがやるんですかい・・・」
(用を足し終わって)
「どうでい子分、笑わせられたか」
「へい親分、ばっちりです」
「なんだ、丸っ子様にぎっしり絵が描いてあるじゃねえか。なんの絵だ。こりゃあ、しっぽか」
「へい・・・絵が尾、えがおでいっぱいにしておきやした」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<夜泣き石(小夜の中山)>
夜泣き石(よなきいし)は、静岡県(旧遠江国)掛川市佐夜鹿の小夜の中山(さよのなかやま)峠にある石。夜になると泣くという伝説があり、遠州七不思議のひとつに数えられる。
曲亭馬琴の『石言遺響』(1805年)によれば、その昔、お石という身重の女が小夜の中山に住んでいた。ある日お石がふもとの菊川の里(現・静岡県菊川市菊川)で仕事をして帰る途中、中山の丸石の松の根元で陣痛に見舞われ苦しんでいた。そこを通りがかった轟業右衛門という男がしばらく介抱していたのだが、お石が金を持っていることを知ると斬り殺して金を奪い逃げ去った。
その時お石の傷口から子供が生まれた。そばにあった丸石にお石の霊が乗り移って夜毎に泣いたため、里の者はその石を『夜泣き石』と呼んでおそれた。生まれた子は夜泣き石のおかげで近くにある久延寺の和尚に発見され、音八と名付けられて飴で育てられた。音八は成長すると、大和の国の刀研師の弟子となり、すぐに評判の刀研師となった。
そんなある日、音八は客の持ってきた刀を見て「いい刀だが、刃こぼれしているのが実に残念だ」というと、客は「去る十数年前、小夜の中山の丸石の附近で妊婦を切り捨てた時に石にあたったのだ」と言ったため、音八はこの客が母の仇と知り、名乗りをあげて恨みをはらしたということである。(Wikipediaから抜粋)
<だっこちゃん>
ダッコちゃん、だっこちゃんは、1960年に発売されたビニール製の空気で膨らませる人形の愛称。後に製造元のタカラ(→タカラトミー)もこの名称を使うようになった。
真っ黒な人型をした本商品は両手足が輪状になっており、木にしがみつくコアラのようなポーズをとっている。「ダッコちゃん」の名前の通り、腕などに抱きつくようにぶら下げることが可能だった。発売当初の販売価格は180円。腰蓑をつけた黒人のように見えるその姿は極限までディフォルメされており、非常にシンプルな形状だった。(Wikipediaから抜粋)
「へい、親分」
「おめえ、静岡に行って、石を盗んで来い」
「また石ですか?この前は海の中で、その前は奈良で、石ばっかりじゃねえですか」
「待て。今回のはただの石じゃねえ。下手したら、すごい儲けがでるぜ」
「儲け、ねえ・・・。で、どんな石なんです?」
「夜泣き石だ」
「夜泣き石?つまり、夜になると泣く石ですかい?」
「そうだ。そいつを手に入れて、泣かせて見世物にすれば、がっぽがっぽ儲かるぞ」
「そりゃあ、本当に泣けばの話でしょうよ」
「だから、泣かせてみせろってんだ」
「そんな、ホトトギスじゃああるまいし。あっしはご免ですよ」
「なんだとォ?おめえ、親分のいうことが聞けねえのか」
「ああ、聞けませんね。そんな雲をつかむような話にゃあ、やすやすと乗っかれません。確実に泣くっていうんなら、考えないでもないですがね。親分がまず石の所へ行って、泣くことを証明して下せえ」
「あァ?どうやって泣かすんだ」
「それを考えるのが、親分の仕事でしょうよ。さ、行った行った」
(山を登りながら)
「ハア、ハア・・・、ああ、骨が折れるや。何のための親分だ、まったく。大儲けしてもあいつにはびた一文やらねえぞ。こうなりゃ絶対に石を泣かしてやる。おっ・・・あったあった、あれが夜泣き石か。デカいが、丸っこくてかわいらしい奴だ。どれ・・・(石を撫でながら)おお、よしよし、おめえは泣くに決まってるよな?よし、まずは夜になるのを待つか」
(ホウ、ホウ・・・・キイーッ!バタバタバタ・・・)
「ああ、夜中は冷えるな。さっきからずっと、聞こえるのは森の生き物の声ばかりで、おめえにしがみついて耳をくっつけても、何も聞こえねえじゃねえか」
(おにゃあ、おにゃあ)
「ありゃ、タヌキか?赤ん坊みたいな声だ。昔の奴らが、タヌキの声を石だと思い込んだんじゃねえのか。うーん、やっぱりおめえさんは、泣かねえなあ。こうなると、どうやってイカサマするか」
(ガサガサッ)
「誰だっ!・・・なんだ、鹿か・・・、でけえから物音も大きいや。うう、小便小便、くそう、丸っ子ちゃんのそばを離れたくねえなあ・・・」
(すぐ近くの茂みで用を足して)
「はァ、怖かった・・・丸っ子ちゃん、戻ってきたぜ。おめえは温けえなあ。おめえが俺を守ってくれるのか・・・。ところで、どうやっておめえを泣かすか・・・グウ・・・グウ・・・」
「親分、親分!起きて下せえよ!」
「うん・・・?丸っ子ちゃん?」
「丸っ子ちゃん?親分、ダッコちゃん人形みたいに石にしがみついて、そんな恰好でよく寝られますねえ。ところで、石は泣きましたか」
「泣かねえよ」
「やっぱりね。あれから調べたんですがねえ、昔、親分と同じように、夜泣き石を見世物にしようと東京に持ち帰ろうとした輩がいるらしいんですよ。でも失敗して、焼津に置き去りにしたらしいですぜ。あっしらは同じ轍を踏まねえように、うまく細工をして、泣いてるように見せかけねえと」
「こいつを泣かせることなんかできるか!!」
「・・・親分?」
「いいか、泣かせるのは駄目だ。こいつは一晩中俺を守ってくれた、ありがたーい丸っ子様だ。泣かせたら罰が当たらあ。よし、子分、おめえ、代わりに笑わせてみろ。夜泣き石じゃなくて、笑い石だ」
「ええっ?!笑かすのは、もっと難しいですぜ」
「そこを考えるのが、おめえの仕事だろうが。俺ァちょっと用を足して来るから、それまでに考えとけ」
「結局全部、あっしがやるんですかい・・・」
(用を足し終わって)
「どうでい子分、笑わせられたか」
「へい親分、ばっちりです」
「なんだ、丸っ子様にぎっしり絵が描いてあるじゃねえか。なんの絵だ。こりゃあ、しっぽか」
「へい・・・絵が尾、えがおでいっぱいにしておきやした」
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<夜泣き石(小夜の中山)>
夜泣き石(よなきいし)は、静岡県(旧遠江国)掛川市佐夜鹿の小夜の中山(さよのなかやま)峠にある石。夜になると泣くという伝説があり、遠州七不思議のひとつに数えられる。
曲亭馬琴の『石言遺響』(1805年)によれば、その昔、お石という身重の女が小夜の中山に住んでいた。ある日お石がふもとの菊川の里(現・静岡県菊川市菊川)で仕事をして帰る途中、中山の丸石の松の根元で陣痛に見舞われ苦しんでいた。そこを通りがかった轟業右衛門という男がしばらく介抱していたのだが、お石が金を持っていることを知ると斬り殺して金を奪い逃げ去った。
その時お石の傷口から子供が生まれた。そばにあった丸石にお石の霊が乗り移って夜毎に泣いたため、里の者はその石を『夜泣き石』と呼んでおそれた。生まれた子は夜泣き石のおかげで近くにある久延寺の和尚に発見され、音八と名付けられて飴で育てられた。音八は成長すると、大和の国の刀研師の弟子となり、すぐに評判の刀研師となった。
そんなある日、音八は客の持ってきた刀を見て「いい刀だが、刃こぼれしているのが実に残念だ」というと、客は「去る十数年前、小夜の中山の丸石の附近で妊婦を切り捨てた時に石にあたったのだ」と言ったため、音八はこの客が母の仇と知り、名乗りをあげて恨みをはらしたということである。(Wikipediaから抜粋)
<だっこちゃん>
ダッコちゃん、だっこちゃんは、1960年に発売されたビニール製の空気で膨らませる人形の愛称。後に製造元のタカラ(→タカラトミー)もこの名称を使うようになった。
真っ黒な人型をした本商品は両手足が輪状になっており、木にしがみつくコアラのようなポーズをとっている。「ダッコちゃん」の名前の通り、腕などに抱きつくようにぶら下げることが可能だった。発売当初の販売価格は180円。腰蓑をつけた黒人のように見えるその姿は極限までディフォルメされており、非常にシンプルな形状だった。(Wikipediaから抜粋)
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