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5、トークスクリプト
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「あ、母ちゃん?この前、 友達が高級寿司屋に連れてってくれたんだ。友達の話が面白くて吹き出したら、隣に座ってた強面のおっさんの寿司にツバがかかって。で、そのおっさんに15万円のコースだから弁償しろって言われて…」
「だめだ。次」
「あ、母ちゃん?この間ドブにはまって、両足を骨折したんだよ。動けないから毎食ウーバー頼んで、会社も休んでたら、金が無くなっちまって…」
「お前、なんでそう、スケールのちっちゃいことばっか言いやがるんだ。もっとこう、情に訴えるようなことが言えねえのか」
「じゃあ、こんなんはどうです?母ちゃん、元気?韓国人の友達がいるんだけど、そいつの親戚が北朝鮮にいるらしいんだ。で、知っての通り最近食糧難みたいで、そいつがどうしても親戚を脱北させたいっていうんだよ。で、金貸してくれってせがまれてさ」
「だめだ。いかにも嘘くせぇ」
「いいと思ったんですがねえ…。じゃ、とっておきのを聞いてくださいよ。母ちゃん、聞いてよ。俺、知り合いがみんな先にあの世へ行って、誰も友達がいないっていう爺ちゃんと友達になったんだ。そしたらその爺ちゃん、自分の葬式は人をたくさん集めて、わあわあ泣かせてくれ、って俺に頼むんだよ。で、ついに爺ちゃん死んじまった。友達がいないから、来てくれる奴もいない。だからあっし、海外で〝泣き女“を探して、50人雇って連れてきた。だから金が」
「阿呆!そんなじいさん、一人で死なせろ!それと、あっしってポロっと出ただろ。都会者になりきれっつうんだ」
「あっしは充分シティボーイですぜ。それより親分、早くオレオレ詐欺のトーク考えないと」
「バアロウ、今はオレオレ詐欺とは言わねえ、振り込め詐欺だ。お前のトークじゃあ親心を動かせねえ」
「そこまで言うなら、親分がトーク作って下さいよ」
「しょうがねえな、よく聞いとけよ。…あ、母ちゃん?久しぶり。実は、最近出来た友達の父ちゃんが政治家だったんだ。で、この間家に招待されたの。その父ちゃんと話したら盛り上がって、俺のこと、政治家に向いてるっていうわけ。話すうちに俺もその気になってきて、国民のために力を捧げようと、一大決心しました。その人が協力してくれるっていうから、母ちゃんは何も心配しなくていい。母ちゃん、これは俺の人生で一番の頑張りどころだ。もちろん、応援してくれるだろ?…ありがとう。で、供託金がいるんだ。300万円…」
「押し付けがましさ満載ですね」
「バアロウ、情熱あふれるこのトークの良さがわからねえのか。いいか、こんな風に、最初に小さいYESを取っておくんだよ。そしたら、NOとはいいづらい」
「なるほど、さすが親分。…おーい、入って」
「ん?誰に手ぇ振ってやがる。…おい、おい、おいっ!!なんだこいつら」
「例の、泣き女たちですよ」
「(大げさに手を上下させながら)うわーん、うわーん、うわーん」
「親分、このところ盗みが下手こいてばかりで、ろくに給料もらっていやせんぜ。未払いの300万円、今日こそはきっちり払ってもらいますぜ」
「うわーん、うわーん、うわーん」
「うるさいっ!近所迷惑で通報されるぞ」
「令和の大泥棒が、騒音でしょっ引かれてもいいんですかい」
「なんだって!卑怯なやつめ」
「どうします?300万円払いますか?」
「ちくしょう、わかった、わかったよ」
「(泣き女たちに)お疲れ様。ところで、あなたたちの国で一番人を動かすやり方はどんな方法か、親分に教えてあげて」
「はい。脅しです」
(2022/4/15加筆修正)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<泣き女>
泣き女は、葬式のときに雇われて号泣する女性である。哭き女、哭女とも書く。現在の日本では職業としては存在しないが旧習として存在し、中国、朝鮮半島、台湾、安南をはじめとして、ヨーロッパや中東など世界各地で散見される伝統的な習俗で、かつては職業としても存在した。葬儀の時に、遺族の代わりに故人を悼み、「悲しい」「辛い」「寂しい」などを表現するために大々的に、所によっては独特の節をつけて、一斉にあるいは延々と泣きじゃくることを以って生業(または副業)としたのが泣き女である。涙は死者への馳走であるとされ、一説には、悪霊ばらいや魂呼ばいとしての性格も併せ持つとされる。(Wikipediaより抜粋)
<供託金>
選挙における供託金は、被選挙人(=候補者)が公職選挙に出馬する際、国によっては選挙管理委員会等に対して寄託することが定められている場合に納める金銭もしくは債券などのことである。当選もしくは一定以上の結果を残した場合には供託金は全て返還されるが、有効投票総数に対して一定票(供託金没収点)に達しない場合は没収される。(Wikipediaより抜粋)
「だめだ。次」
「あ、母ちゃん?この間ドブにはまって、両足を骨折したんだよ。動けないから毎食ウーバー頼んで、会社も休んでたら、金が無くなっちまって…」
「お前、なんでそう、スケールのちっちゃいことばっか言いやがるんだ。もっとこう、情に訴えるようなことが言えねえのか」
「じゃあ、こんなんはどうです?母ちゃん、元気?韓国人の友達がいるんだけど、そいつの親戚が北朝鮮にいるらしいんだ。で、知っての通り最近食糧難みたいで、そいつがどうしても親戚を脱北させたいっていうんだよ。で、金貸してくれってせがまれてさ」
「だめだ。いかにも嘘くせぇ」
「いいと思ったんですがねえ…。じゃ、とっておきのを聞いてくださいよ。母ちゃん、聞いてよ。俺、知り合いがみんな先にあの世へ行って、誰も友達がいないっていう爺ちゃんと友達になったんだ。そしたらその爺ちゃん、自分の葬式は人をたくさん集めて、わあわあ泣かせてくれ、って俺に頼むんだよ。で、ついに爺ちゃん死んじまった。友達がいないから、来てくれる奴もいない。だからあっし、海外で〝泣き女“を探して、50人雇って連れてきた。だから金が」
「阿呆!そんなじいさん、一人で死なせろ!それと、あっしってポロっと出ただろ。都会者になりきれっつうんだ」
「あっしは充分シティボーイですぜ。それより親分、早くオレオレ詐欺のトーク考えないと」
「バアロウ、今はオレオレ詐欺とは言わねえ、振り込め詐欺だ。お前のトークじゃあ親心を動かせねえ」
「そこまで言うなら、親分がトーク作って下さいよ」
「しょうがねえな、よく聞いとけよ。…あ、母ちゃん?久しぶり。実は、最近出来た友達の父ちゃんが政治家だったんだ。で、この間家に招待されたの。その父ちゃんと話したら盛り上がって、俺のこと、政治家に向いてるっていうわけ。話すうちに俺もその気になってきて、国民のために力を捧げようと、一大決心しました。その人が協力してくれるっていうから、母ちゃんは何も心配しなくていい。母ちゃん、これは俺の人生で一番の頑張りどころだ。もちろん、応援してくれるだろ?…ありがとう。で、供託金がいるんだ。300万円…」
「押し付けがましさ満載ですね」
「バアロウ、情熱あふれるこのトークの良さがわからねえのか。いいか、こんな風に、最初に小さいYESを取っておくんだよ。そしたら、NOとはいいづらい」
「なるほど、さすが親分。…おーい、入って」
「ん?誰に手ぇ振ってやがる。…おい、おい、おいっ!!なんだこいつら」
「例の、泣き女たちですよ」
「(大げさに手を上下させながら)うわーん、うわーん、うわーん」
「親分、このところ盗みが下手こいてばかりで、ろくに給料もらっていやせんぜ。未払いの300万円、今日こそはきっちり払ってもらいますぜ」
「うわーん、うわーん、うわーん」
「うるさいっ!近所迷惑で通報されるぞ」
「令和の大泥棒が、騒音でしょっ引かれてもいいんですかい」
「なんだって!卑怯なやつめ」
「どうします?300万円払いますか?」
「ちくしょう、わかった、わかったよ」
「(泣き女たちに)お疲れ様。ところで、あなたたちの国で一番人を動かすやり方はどんな方法か、親分に教えてあげて」
「はい。脅しです」
(2022/4/15加筆修正)
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<泣き女>
泣き女は、葬式のときに雇われて号泣する女性である。哭き女、哭女とも書く。現在の日本では職業としては存在しないが旧習として存在し、中国、朝鮮半島、台湾、安南をはじめとして、ヨーロッパや中東など世界各地で散見される伝統的な習俗で、かつては職業としても存在した。葬儀の時に、遺族の代わりに故人を悼み、「悲しい」「辛い」「寂しい」などを表現するために大々的に、所によっては独特の節をつけて、一斉にあるいは延々と泣きじゃくることを以って生業(または副業)としたのが泣き女である。涙は死者への馳走であるとされ、一説には、悪霊ばらいや魂呼ばいとしての性格も併せ持つとされる。(Wikipediaより抜粋)
<供託金>
選挙における供託金は、被選挙人(=候補者)が公職選挙に出馬する際、国によっては選挙管理委員会等に対して寄託することが定められている場合に納める金銭もしくは債券などのことである。当選もしくは一定以上の結果を残した場合には供託金は全て返還されるが、有効投票総数に対して一定票(供託金没収点)に達しない場合は没収される。(Wikipediaより抜粋)
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