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1、鍾乳床(しょうにゅうしょう)と萬金丹(まんきんたん)
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「やい、子分」
「へい、親分」
「最近、腹が痛くてよ」
「なら医者にいったらどうです」
「令和の大泥棒が、医者に行けるかい」
「親分の顔知ってるやつなんざ、いませんよ」
「バアロウ、これから有名になるんだ」
「じゃあ、薬買ったらどうです」
「薬なんぞに金払えるか。いいか、俺らは令和の大泥棒だ。お前、ハライタに効くお宝を盗んで来い。くれぐれも、ドラッグストアなんかで買うんじゃねえぞ」
「親分、悪いこた言わねえ。現代医学を信用したらどうです」
「阿呆!お宝盗めば気持ちも落ち着いて、ハライタも治るってもんよ。いいか、奈良にとっておきの薬がある。それを盗んで来い」
「奈良?・・・ドラッグストアは徒歩八分なのに・・・わかりましたよ、行きゃいいんでしょ、行きゃ」
トゥルルル、トゥルルル・・・
「(ガラケーを片手に)もしもし、親分?来ましたぜ、正倉院。入り込むのに難儀しましたぜ。で、ブツは、どんな形で、何色なんです」
(「茶色い、尖った石だ」)
「親分、ハライタでおかしくなっちまったんですか。石じゃなくて、薬でしょうが」
(「わからねえやつだな。石が薬だってんだ」)
「ええ?石が薬?」
(「そうだよ、鍾乳洞にあった石で、鍾乳床って名前だ。1300年前の年代物で、聖武天皇も飲んだかもしれない代物だ。とっとと探せ」)
「ええと・・・、あった、ありやしたよ、親分!で、これ、どうやって飲むんです?」
(「知るか!てめえで考えろ」)
「じゃあ、粗めに砕いて」
(「バアロウ、それじゃあ尿管結石になっちまう」)
「じゃあ、塩酸かなんかで溶かしてまるごと」
(「俺を殺す気か!」)
「あっ、誰か来た!親分、ひとまず、ずらかります」
トゥルルル、トゥルルル・・・
「あ、親分?危うく捕まるところでした。でも、あっしは令和の大泥棒。捕まりそうになったのを、ウーバーイーツの配達員のふりして、逃げ切りましたぜ」
(「おう、よくやった。で、ブツは無事なのか」)
「いやあ、それが、ウーバーイーツのリュックの中に、大量の焼き芋を忍ばせてたんですがね、それを正倉院の職員のみなさんに届けたら、どうもその中に石が混じっちまったみたいで。色も形も似通ってたんで気づかなかったんでさぁ」
(「なんだって?てめえ、俺のハライタどうしてくれるんだ」)
「親分、心配ご無用です。こんなこともあろうかと、奈良に来る途中で、別のお宝の情報、仕入れときました」
(「本当だな、手ぶらで帰ってきたら承知しねえぞ!」)
「へいへい、待っててくださいね」
(「手ぇ抜くんじゃねえぞ!」)
ガチャ
「まったく、親分の野郎め。どれどれ、途中で伊勢でもらったこのチラシ…、〝伊勢の丸薬、鼻くそ丸めてまんきんたん〟チラシと一緒に俺の鼻くそ渡せばハライタも治らぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<鍾乳床(しょうにゅうしょう)>
正倉院宝物。種々薬帳に見える薬物。(Webrio辞書より)
<正倉院>
正倉院(しょうそういん)は、奈良県奈良市の東大寺大仏殿の北北西に位置する、校倉造(あぜくらづくり)の大規模な高床式倉庫。聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめとする、天平時代を中心とした多数の美術工芸品を収蔵していた建物で、1997年(平成9年)に国宝に指定され、翌1998年(平成10年)に「古都奈良の文化財」の一部としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。(Wikipediaより)
<萬金丹>
萬金丹(まんきんたん)は伊勢国(三重県伊勢市周辺)で伝統的に製造販売されている漢方薬。「越中富山の反魂丹、鼻くそ丸めて萬金丹」という俗謡にも登場する。(Wikipediaより抜粋)
<ウーバーイーツ>
オンラインフードデリバリーサービス。モバイルアプリケーションを使って、対応している飲食店に出前を注文できる。(Wikipediaより抜粋)
「へい、親分」
「最近、腹が痛くてよ」
「なら医者にいったらどうです」
「令和の大泥棒が、医者に行けるかい」
「親分の顔知ってるやつなんざ、いませんよ」
「バアロウ、これから有名になるんだ」
「じゃあ、薬買ったらどうです」
「薬なんぞに金払えるか。いいか、俺らは令和の大泥棒だ。お前、ハライタに効くお宝を盗んで来い。くれぐれも、ドラッグストアなんかで買うんじゃねえぞ」
「親分、悪いこた言わねえ。現代医学を信用したらどうです」
「阿呆!お宝盗めば気持ちも落ち着いて、ハライタも治るってもんよ。いいか、奈良にとっておきの薬がある。それを盗んで来い」
「奈良?・・・ドラッグストアは徒歩八分なのに・・・わかりましたよ、行きゃいいんでしょ、行きゃ」
トゥルルル、トゥルルル・・・
「(ガラケーを片手に)もしもし、親分?来ましたぜ、正倉院。入り込むのに難儀しましたぜ。で、ブツは、どんな形で、何色なんです」
(「茶色い、尖った石だ」)
「親分、ハライタでおかしくなっちまったんですか。石じゃなくて、薬でしょうが」
(「わからねえやつだな。石が薬だってんだ」)
「ええ?石が薬?」
(「そうだよ、鍾乳洞にあった石で、鍾乳床って名前だ。1300年前の年代物で、聖武天皇も飲んだかもしれない代物だ。とっとと探せ」)
「ええと・・・、あった、ありやしたよ、親分!で、これ、どうやって飲むんです?」
(「知るか!てめえで考えろ」)
「じゃあ、粗めに砕いて」
(「バアロウ、それじゃあ尿管結石になっちまう」)
「じゃあ、塩酸かなんかで溶かしてまるごと」
(「俺を殺す気か!」)
「あっ、誰か来た!親分、ひとまず、ずらかります」
トゥルルル、トゥルルル・・・
「あ、親分?危うく捕まるところでした。でも、あっしは令和の大泥棒。捕まりそうになったのを、ウーバーイーツの配達員のふりして、逃げ切りましたぜ」
(「おう、よくやった。で、ブツは無事なのか」)
「いやあ、それが、ウーバーイーツのリュックの中に、大量の焼き芋を忍ばせてたんですがね、それを正倉院の職員のみなさんに届けたら、どうもその中に石が混じっちまったみたいで。色も形も似通ってたんで気づかなかったんでさぁ」
(「なんだって?てめえ、俺のハライタどうしてくれるんだ」)
「親分、心配ご無用です。こんなこともあろうかと、奈良に来る途中で、別のお宝の情報、仕入れときました」
(「本当だな、手ぶらで帰ってきたら承知しねえぞ!」)
「へいへい、待っててくださいね」
(「手ぇ抜くんじゃねえぞ!」)
ガチャ
「まったく、親分の野郎め。どれどれ、途中で伊勢でもらったこのチラシ…、〝伊勢の丸薬、鼻くそ丸めてまんきんたん〟チラシと一緒に俺の鼻くそ渡せばハライタも治らぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<鍾乳床(しょうにゅうしょう)>
正倉院宝物。種々薬帳に見える薬物。(Webrio辞書より)
<正倉院>
正倉院(しょうそういん)は、奈良県奈良市の東大寺大仏殿の北北西に位置する、校倉造(あぜくらづくり)の大規模な高床式倉庫。聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめとする、天平時代を中心とした多数の美術工芸品を収蔵していた建物で、1997年(平成9年)に国宝に指定され、翌1998年(平成10年)に「古都奈良の文化財」の一部としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。(Wikipediaより)
<萬金丹>
萬金丹(まんきんたん)は伊勢国(三重県伊勢市周辺)で伝統的に製造販売されている漢方薬。「越中富山の反魂丹、鼻くそ丸めて萬金丹」という俗謡にも登場する。(Wikipediaより抜粋)
<ウーバーイーツ>
オンラインフードデリバリーサービス。モバイルアプリケーションを使って、対応している飲食店に出前を注文できる。(Wikipediaより抜粋)
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