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孤高の皇帝と少女

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それから間も無くして、
長らく相手を決めなかった孤高の皇帝の結婚が報じられる。

そのニュースが広まれば広まるほどに、人々は彼を冷徹な皇帝と呼んだ。

孤高の皇帝は、己が滅ぼした国の生き残りの王女を妃に迎えたとー…。


民は口々に言った。

「きっと深い恨みがあるだろう、何て冷酷な事を…親兄弟を殺した者どころか、国を滅ぼした張本人の嫁ってのは…。なんとも…」

「王女は舌を噛み切ってしまうのではないか?」

「昔我が国へ侵略してきた罰だ。敗戦国はそんなものだ。尊厳すらも奪われて苦渋を舐めるのさ。
俺は妹を殺されたんだぞ。」

人々は口々に思う事を語ります。

けれども、どう憶測をしても、皇帝の心と行動は誰にも理解されないままでした。

いつしか人は、皇帝を、孤高の皇帝と語り継ぐようになりました。

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それから数十年の時が流れ、戦争の形跡は跡形もなく消え
国は益々栄えて皇帝は長い年月の間 
数々の偉業を成し遂げては国を豊かにし

最後には自分が居なくても国が回るよう制度を作りあげました。

それ故に冷徹と恐れられながらも、民には慕われ敬われておりました。




あくる日の朝、皇帝を起こしに来た寵妃の姿がありました。


すぐに寵妃は気がつきました。

眠ったように、皇帝はあの世へと旅立ったのだとー…


「そう…見送ると言うのは
こう言う気持ちなのね、レイシス。」



己をいつでも殺せるように、いつも近くに居られるようにと
私を妃にすると言ったあの時

貴方は本気で言っていたのだろう。

私に貴方を殺せと。

私が生かした貴方を、その手で殺してからあの世へ行けと。

王と言うのは狂った者ばかりだ。おおよそ人には理解されない。
だけど、レイシス、やっぱり私も王だったのよ。


だって、貴方の〝殺す権利を与えに来た〟と言う言葉が、お互いの立場から
 決して口にする事が出来なくなった『愛している。だから生きていて欲しい。』であると理解できてしまったのだから。

 互いに似ていたからこそ、レヴァネル王であった私があの時生きる理由が、他にないって、貴方にはわかっていたでしょう。


あの時、貴方が全てを滅ぼしたとき

 国にいた愛した人々も、憎んだ人々も、それどころか故郷である国も全てを滅ぼされたというのに


悲しい、憎いと裏腹に
私はやっと人になれると、心の何処かで心底安堵していた。
それに気づいた時から私は王になりきれなかった。

貴方という人がいたから。

他の誰でもなく、私の持つ全てを滅ぼしたのが貴方だったから。

 およそ人の心ではない王の私を生かせたのは…王としての役割を放棄させられたのは

 それを超える皇帝たる器である貴方しかいないのでしょうね。

だから

「全てを、背負ってくれたのでしょう。
王であった私の荷物も全て…。

貴方の〝愛している〟は本当に、私にしか伝わらないわよ。」







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