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ヒロインは盗み聞きした
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ユリシアは、ヴォーレンとマーガレットの話をこっそり聞いていた。
正直、途中良い雰囲気で、もう終わったと涙ながらに去ろうかと思ってたけど。
マーガレット様が自分は王子のものとか言い切るし、この地を去るとか言うし、ヴォーレンと主従の誓いをしているしで、展開についていけない中。
さらに頭を混乱させる事を語り始めた。
医院長…あれ元気付けるための方便だったの?
いや、実際私は小説の世界に転生した。
願いに願った、来世は小説のヒロインにしてくれと。
でも、まさか。おねぇちゃんを本当に巻き込んでいるとは思わなかった。
だってこう言うのって、願った本人はともかく、人の命巻き込むもの?
前世のマーガレット様、おねぇちゃんとは病院で知り合った。
同室にいる優しくて、綺麗なおねぇちゃんが私は凄く好きだった。
髪の結い方を教えてくれたり、あや取りをしてくれたりした。
私は生まれてからずっと、病院にいた。
家に居たのは数える程で、両親はとても辛そうだった。
10歳になったとき、おねぇちゃんが面白かったと言っていた本を両親にねだって買ってもらった。
言ってた通り面白かった。私も小説のような恋がしたくて、もしも退院したら思う存分恋をしようと思った。
だけど11歳と少ししてきた頃、私はふと、自分が永くない事を悟った。
そうなると、今まで禁止されていたお菓子が食べたくなって、両親に言ってみたけれど、両親は医者の許可が得られないからと与えてはくれなかった。
両親からしてみれば、まだ私には寿命があると思ったんだと思う。
でも私はわかった、理屈はない。でも私はもう永くはない。
その時、同室だったおねぇちゃんが私にお菓子を1つだけくれた。
『昨日、お家に帰れたからつくったの。
良く噛んで食べるのよ?』
いつも、決まりを守って、正しかったおねぇちゃんはこの時、病院の決まりを破った。
おねぇちゃんは何か、私の様子の変化に気付いていたんだと思う。
何故か不思議と、それを察する事の出来る人だった。
私は、初めて食べたお菓子を直ぐに全部食べ終わった。それで体調を崩す事もなく、モヤモヤしていた物が晴れて寧ろ元気になった気もする。
何かお礼がしたかったけれど手持ちの物の中でおねぇちゃんが好きな物は思い浮かばなくて。
だから、私の持っている物の中で1番大切な宝物をあげた。
来世に向けての夢と期待と希望がつまった大切な本。
医院長先生に病院の伝説を聞いてから毎日かかさず、来世はこの本の世界で
どーかヒロインにしてくださいと願った。
そしておねぇちゃんに本をあげてから、良い事を思い付いた。
どうせなら、おねぇちゃんも同じ世界に転生しないかな?って。
丁度この小説でおねぇちゃんがおねぇちゃんらしい性格のままでいられる役柄があった。
それが、マーガレットというキャラクターだった。
(だけど、ついでみたいに祈ってたから…)
(え?たまたまじゃなくて、神様が私の願いを本当に聴いてたの?私を物語の通りの恋愛させる為に?
じゃあ私、王子にいつか、恋をするの??)
心に王子を思い浮かべてみたけれど、
あの絶対零度で見下ろす世にも恐ろしい笑顔が思い浮かんで身震いした。
(ー…いやムリ。絶対ありえない。私ドMじゃないから、人生で1番恐怖を感じる対象と生きていけない。)
でもここでマーガレット様がどっか行ったら、強制力働いちゃうの?
そう言えば、小説に書いてるみたいなタイミングでばったりしまくったよ。
互いに1ミリも、ときめかなかったけどね?
ー・そうだよ、おかしいよ。本当に強制力で人の心が操れるならー…
私は自分が身を潜めていた事を忘れて飛び出して声を張り上げた。
「マーガレット様!違います!勘違いしてます!違うんです!」
2人がめっちゃ驚いてる顔してこっちを向いた。
「「!?」」
初めに反応を示したのは、ヴォーレンだった。
「ユリシア…何してるんだ?そこで。」
「今そんな事どーだって良いでしょ!ヴォーレンはちょっと黙ってて!!」
一喝して、私はマーガレット様の所までズンズン歩いていく。
そして、腕をがしりと掴んで上を向いた。
「おねぇちゃ…マーガレット様、聞いてください。私、ヴォーレンを愛してるんです!」
「「え?」」
何か、ヴォーレンまで反応したけど此処は無視しておく。
「それで、私あの悪…王子の事が全くもって好きになれないと言うか、寧ろ一緒の空間にいるのが恐ろしいです!」
「…え?」
「最初のお茶会で、私、ヴォーレンに近寄らないでって言おうと思って誘いました。下らない理由ですみませんでした。」
「おまっ。何しようとしてるんだよ?」
ヴォーレンが叱ろうとすると、ユリシアはキッと睨みつけて言った。
「だって、ヴォーレンがマーガレット様に取られるのが嫌だったんだもの。
私はヴォーレンがずっとずっと、好きだっていつも言ってるのに相手にしてくれないから。だから、仕方ないじゃない!」
ボロボロ泣きながら言うユリシアに、ヴォーレンは気圧されて戸惑っている。
「いや…おまえでも…相手が……」
そこで、やっとマーガレットが口を開いた。
「けれど…」
「?」
「私、何度かユリシア様と、王子が親密そうにしているのを…」
「ありえません!勘違いです!天地がひっくり返っても、あの王子とは仲良くなりません!」
「けれど、あの場所は小説で…ー」
「それだよ、おねぇちゃんが間違えて解釈してるの。」
「え?」
「確かに、小説通りのシュチュエーションも、ばったりもありました。でもぜんっぜん中身が伴わなくて、トキメキゼロのお互い最悪なやつとかまでありました。
だから、確かに起こる出来事は干渉できるのかもしれないです。
だけど、人の心は誰にも操れはしなかったんです。
王子のあの私を見る眼差しを見たら一目瞭然です!!あの眼差しを向けられて恋したら私はドMですよ、命の危険ギリギリレベルの!
だから、それが神様が用意した世界の中でも、心は自分だけの物でしかないんです。
私達は、感情の無いキャラクターじゃなくて、自分で生きて考えて感じているから。」
『他人の心は変えられない
変えられるのは自分の気持ちだけ。』
ナーディアの言った言葉がこの時、いつもと違って聞こえた。
「じゃあ…。」
マーガレットは呟くように、口を開いた。
「じゃあ…えっと。ユリシア様が王子を好きじゃないから、私は恋の障害になれなくて??えっと…」
「いや、マーガレット様ちゃんと恋の障害やってましたよ!ヴォーレン狙いかと思ってたから、私どんなに涙したか!」
「ええと、じゃあ私は恋の障害にはなるけど、王子は私を……」
グルグルと頭の中が混乱しているマーガレットを見兼ねてヴォーレンが声をかけた。
「落ち着いてください。マーガレット様。深呼吸をした方が…」
「でも、じゃあ私は王子の側に居ても…いいの?」
ユリシアは、マーガレットの言葉にぎょっとした。
「寧ろマーガレット様でないと御せません!私は嫌です。無理です。絶対無理です。だから居なくならないでください~」
勢い良くしがみつき、泣きついてきたユリシア。
されるがままのマーガレットの頬に、一筋の涙が伝う。その滴は次々と瞳から溢れ出して止まらなかった。
混乱している中で確かにわかったのは
誰にも王子の心を変える事は出来ない。
それは、神様にも。
それを理解すると、途端に頭がズキリと痛んだ。
ずっと、苦しかった物が流れ出てくるみたいに涙はとまらず、あまりの急展開に頭がついて行かないようで。
遠のく意識の中で、王子の声が聞こえた気がした。
『愛しているよ、マーガレット。』
早く、王子と話したい。
話さなくちゃいけないのに。
マーガレットの意識は此処で途絶えた。
正直、途中良い雰囲気で、もう終わったと涙ながらに去ろうかと思ってたけど。
マーガレット様が自分は王子のものとか言い切るし、この地を去るとか言うし、ヴォーレンと主従の誓いをしているしで、展開についていけない中。
さらに頭を混乱させる事を語り始めた。
医院長…あれ元気付けるための方便だったの?
いや、実際私は小説の世界に転生した。
願いに願った、来世は小説のヒロインにしてくれと。
でも、まさか。おねぇちゃんを本当に巻き込んでいるとは思わなかった。
だってこう言うのって、願った本人はともかく、人の命巻き込むもの?
前世のマーガレット様、おねぇちゃんとは病院で知り合った。
同室にいる優しくて、綺麗なおねぇちゃんが私は凄く好きだった。
髪の結い方を教えてくれたり、あや取りをしてくれたりした。
私は生まれてからずっと、病院にいた。
家に居たのは数える程で、両親はとても辛そうだった。
10歳になったとき、おねぇちゃんが面白かったと言っていた本を両親にねだって買ってもらった。
言ってた通り面白かった。私も小説のような恋がしたくて、もしも退院したら思う存分恋をしようと思った。
だけど11歳と少ししてきた頃、私はふと、自分が永くない事を悟った。
そうなると、今まで禁止されていたお菓子が食べたくなって、両親に言ってみたけれど、両親は医者の許可が得られないからと与えてはくれなかった。
両親からしてみれば、まだ私には寿命があると思ったんだと思う。
でも私はわかった、理屈はない。でも私はもう永くはない。
その時、同室だったおねぇちゃんが私にお菓子を1つだけくれた。
『昨日、お家に帰れたからつくったの。
良く噛んで食べるのよ?』
いつも、決まりを守って、正しかったおねぇちゃんはこの時、病院の決まりを破った。
おねぇちゃんは何か、私の様子の変化に気付いていたんだと思う。
何故か不思議と、それを察する事の出来る人だった。
私は、初めて食べたお菓子を直ぐに全部食べ終わった。それで体調を崩す事もなく、モヤモヤしていた物が晴れて寧ろ元気になった気もする。
何かお礼がしたかったけれど手持ちの物の中でおねぇちゃんが好きな物は思い浮かばなくて。
だから、私の持っている物の中で1番大切な宝物をあげた。
来世に向けての夢と期待と希望がつまった大切な本。
医院長先生に病院の伝説を聞いてから毎日かかさず、来世はこの本の世界で
どーかヒロインにしてくださいと願った。
そしておねぇちゃんに本をあげてから、良い事を思い付いた。
どうせなら、おねぇちゃんも同じ世界に転生しないかな?って。
丁度この小説でおねぇちゃんがおねぇちゃんらしい性格のままでいられる役柄があった。
それが、マーガレットというキャラクターだった。
(だけど、ついでみたいに祈ってたから…)
(え?たまたまじゃなくて、神様が私の願いを本当に聴いてたの?私を物語の通りの恋愛させる為に?
じゃあ私、王子にいつか、恋をするの??)
心に王子を思い浮かべてみたけれど、
あの絶対零度で見下ろす世にも恐ろしい笑顔が思い浮かんで身震いした。
(ー…いやムリ。絶対ありえない。私ドMじゃないから、人生で1番恐怖を感じる対象と生きていけない。)
でもここでマーガレット様がどっか行ったら、強制力働いちゃうの?
そう言えば、小説に書いてるみたいなタイミングでばったりしまくったよ。
互いに1ミリも、ときめかなかったけどね?
ー・そうだよ、おかしいよ。本当に強制力で人の心が操れるならー…
私は自分が身を潜めていた事を忘れて飛び出して声を張り上げた。
「マーガレット様!違います!勘違いしてます!違うんです!」
2人がめっちゃ驚いてる顔してこっちを向いた。
「「!?」」
初めに反応を示したのは、ヴォーレンだった。
「ユリシア…何してるんだ?そこで。」
「今そんな事どーだって良いでしょ!ヴォーレンはちょっと黙ってて!!」
一喝して、私はマーガレット様の所までズンズン歩いていく。
そして、腕をがしりと掴んで上を向いた。
「おねぇちゃ…マーガレット様、聞いてください。私、ヴォーレンを愛してるんです!」
「「え?」」
何か、ヴォーレンまで反応したけど此処は無視しておく。
「それで、私あの悪…王子の事が全くもって好きになれないと言うか、寧ろ一緒の空間にいるのが恐ろしいです!」
「…え?」
「最初のお茶会で、私、ヴォーレンに近寄らないでって言おうと思って誘いました。下らない理由ですみませんでした。」
「おまっ。何しようとしてるんだよ?」
ヴォーレンが叱ろうとすると、ユリシアはキッと睨みつけて言った。
「だって、ヴォーレンがマーガレット様に取られるのが嫌だったんだもの。
私はヴォーレンがずっとずっと、好きだっていつも言ってるのに相手にしてくれないから。だから、仕方ないじゃない!」
ボロボロ泣きながら言うユリシアに、ヴォーレンは気圧されて戸惑っている。
「いや…おまえでも…相手が……」
そこで、やっとマーガレットが口を開いた。
「けれど…」
「?」
「私、何度かユリシア様と、王子が親密そうにしているのを…」
「ありえません!勘違いです!天地がひっくり返っても、あの王子とは仲良くなりません!」
「けれど、あの場所は小説で…ー」
「それだよ、おねぇちゃんが間違えて解釈してるの。」
「え?」
「確かに、小説通りのシュチュエーションも、ばったりもありました。でもぜんっぜん中身が伴わなくて、トキメキゼロのお互い最悪なやつとかまでありました。
だから、確かに起こる出来事は干渉できるのかもしれないです。
だけど、人の心は誰にも操れはしなかったんです。
王子のあの私を見る眼差しを見たら一目瞭然です!!あの眼差しを向けられて恋したら私はドMですよ、命の危険ギリギリレベルの!
だから、それが神様が用意した世界の中でも、心は自分だけの物でしかないんです。
私達は、感情の無いキャラクターじゃなくて、自分で生きて考えて感じているから。」
『他人の心は変えられない
変えられるのは自分の気持ちだけ。』
ナーディアの言った言葉がこの時、いつもと違って聞こえた。
「じゃあ…。」
マーガレットは呟くように、口を開いた。
「じゃあ…えっと。ユリシア様が王子を好きじゃないから、私は恋の障害になれなくて??えっと…」
「いや、マーガレット様ちゃんと恋の障害やってましたよ!ヴォーレン狙いかと思ってたから、私どんなに涙したか!」
「ええと、じゃあ私は恋の障害にはなるけど、王子は私を……」
グルグルと頭の中が混乱しているマーガレットを見兼ねてヴォーレンが声をかけた。
「落ち着いてください。マーガレット様。深呼吸をした方が…」
「でも、じゃあ私は王子の側に居ても…いいの?」
ユリシアは、マーガレットの言葉にぎょっとした。
「寧ろマーガレット様でないと御せません!私は嫌です。無理です。絶対無理です。だから居なくならないでください~」
勢い良くしがみつき、泣きついてきたユリシア。
されるがままのマーガレットの頬に、一筋の涙が伝う。その滴は次々と瞳から溢れ出して止まらなかった。
混乱している中で確かにわかったのは
誰にも王子の心を変える事は出来ない。
それは、神様にも。
それを理解すると、途端に頭がズキリと痛んだ。
ずっと、苦しかった物が流れ出てくるみたいに涙はとまらず、あまりの急展開に頭がついて行かないようで。
遠のく意識の中で、王子の声が聞こえた気がした。
『愛しているよ、マーガレット。』
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話さなくちゃいけないのに。
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