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褒美 辺境伯side
しおりを挟む辺境伯は社交会場内でマーガレットの姿を探しながらも、先程のアーバン夫人との会話が頭の隅に過る。
『でも。困ったわね。
マーガレット様のご意志が通ると言うのが今回裏目に出るかもしれないわ。
あの方の性格からして、大分ご高齢な方の後添いとかを選びそうだからね。』
『…後添い?何故そう思うんだ。』
『マーガレット様は自分が女として魅力があると自覚した事も、女として愛される価値があると考えた事も実感した事もないであろうと思うからよ。』
『まさか、気立ても器量も良いとの評判なお方だぞ?国で1番尊い女性として王子妃に選ばれているんだ。皆から多くの祝福も受けてきた。それなのに?』
『…。幼少期から王子妃であられたあの方が、
心から褒めそやしている周りからの賛辞を全て額面通り受け取るには…
聡く己の客観的価値を理解し、持ち過ぎている人だからよ。
公爵家の後ろ盾、王家の後ろ盾。王子妃であると言う身分。自分の立ち位置。一般感情。』
『……』
『そして貴方の言っていた様に、慈愛に満ち、慈悲深いからこそ。
あのお方は持つ物が大きい割に周りへ配慮し過ぎるの。
自分の挙動により大きな権力を極力誰にも当てず被害を出さない様動かすみたいに。
なら、離縁して落ち着いた頃、今回の件で1番迷惑をかけなさそうな嫁ぎ先を探すでしょう。
社交界を隠居し家督を譲り渡した後の御老人とかね。』
『言われてみれば、この間プロポーズした時、まるでわたしが〝優しいから慰める為プロポーズした〟と勘違いされたな。』
『そう言う女性にはね、時間をかけて愛を伝えて素直な言葉と行動で示さなければ伝わらないの。〝肩書きなど関係ない。貴女だから良いのだ〟と。
伝わったところで、貴方が選ばれるかもわからないし。今回も諦めるしかないのかしらね。辺境伯様?』
その後、急いで会場に居るはずのマーガレットの姿を探したが
この日ついに辺境伯は王子妃の姿を見つけられる事は無かった。
ーーー
ーーーーーーーーー
それから数日後のあくる日、王宮内の一室にて
王は先日に引き続き手柄を立てた辺境伯に褒美として何でも一つ願いを叶えると仰せになった。
すると辺境伯は先日同様「離縁予定の王子妃を賜りたい」と願ったそうだ。
けれどもやはり王は、先日同様残念な面持ちでその願いは聞けないと言った。
「その件は余も悪くないと思い公爵家にも打診してみたが…すまぬな。
王子妃は己と同じく再婚か後添いの方が気兼ねせずに良いと言うのだそうな。
其方の功績を讃えたいが…王子妃にも報いねばならぬ恩がある。
其方には別の褒美をやるしかないようだ。何ぞ、他に望む物はあるか?遠慮はするな。好きな物を申すが良い。」
彼は此処で潔く引くであろうと考えていた王を前に、辺境伯は徐に片膝をつき、一呼吸してから伏せた面をそのままに静かな声色で言った。
「国王陛下、この度は我が願いを考慮し骨を折ってくださいました事、この上なき誉にございます。
ー・その上で尚、ご無礼を承知で重ね望みを。…褒美を望んでも良いと言う事であれば1つだけ…如何しても。御許可を頂きたい事がございます。」
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