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第3章学園入学
第2王子との因縁1
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ヒロインであるイリンに〝折り入って相談がある〟と手紙で呼ばれ、訪れたお茶会。
伯爵令嬢の邸宅らしい、まるでロイ○ルファミリーが住んでいるかの如く、白を基調とした素敵な邸宅は、物語のヒロインに相応しく可憐な華々が咲き誇る温室庭園があり、お茶会は行われた。
其処へ突如現れた予想だにしていなかった人物に、ライザは暫く無言を貫いた。
深緑の陰りの合間から差し込む光に、黄金色の髪を煌々とさせながら、足を組み、口元には怪し気な弧を描く。
値踏みする視線を前に、ライザはなるべく涼しい顔をして、目の前の人物は眼中にないとばかりに紅茶の表面をただ見つめていた。
イリンから第2王子が気になっているのだとカミングアウトを受けたかと思ったら、突然お茶会に第2王子がイリンの友人として、「やぁ。」とか言いながら参戦してきた。
そして何故か、用事を思い出したとイリンが述べると、颯爽と退出してしまった。
これにより、第2王子とライザの2人きりになってしまい、現在にいたる。
実の兄からもサイコパス王子と言わしめる第2王子、ウルクを前に、ライザは動揺を見せない様、背筋を伸ばして毅然としていた。
そんな状況で話を切り出したのは、ウルクからであった。
「こうして話すのは、久しぶりだね?」
「ーーどう言うつもりですか?」
飄々とした態度のウルクに、苛立ちを滲ませた返答になってしまったが、それはいたって仕方のない事だった。
「どう言うつもりって?」
「惚けないでください、私は、あれ程言いましたよね?
貴方だけは…第2王子だけはヒロインに近寄ってはならないと。」
「僕は攻略対象者だ。ヒロインが僕に惹かれて、僕がヒロインに惹かれるのは仕方がないと思うけど?」
そう言いながら、ウルクはクスクスと面白そうに笑っている。
もし、ウルクが純粋にヒロインであるイリンに惹かれていると言うのならば、仕方ないと思えるかも知れないけれど、彼は明らかに楽しんでいた。
「何を、考えているのですか?」
「何も。そんなに嫌なら前に提案したように、ライザが僕の婚約者になれば良いだろ?」
やれやれ全く我儘なご令嬢だ。と言わんばかりに、こちらを小馬鹿にした様な溜息をわざとらしく吐き、巫山戯た事をポンと漏らしてくるお顔立ちの宜しい王子様に
手元の紅茶をうっかり掛けてしまう所を堪えたのは、やはり腐っても相手がこの国の王子様だからに他ならなかった。
「…で、今日のこのお茶会は何ですか?急にヒロインから相談がしたいって私に言ってきたのは、あん…第2王子のためでしょう?」
「ーーだってさ。
こうでもしないと、学園では皇太子やルイスやらに阻まれて落ち着いて話なんか出来ないだろ?
僕は同じ前世の世界を知る仲間として、ライザと仲良くしたいだけなのにさ。」
「戯言…お戯れはよしてください殿下。私は約束事を初っ端から破る殿方とは仲良くなれないのですが?」
「あははっ。戯れではないよ。僕と君はなかなかお似合いだと思うよ。」
「あら嫌ですわ。何を根拠にそんな事を?」
「では問おう。
君は、ルイス・ネヴァキエルとこのままの関係を続ける気はあるのか?」
こちらを見透かしたように、瞳を細めて小首を傾げるウルクに、ライザは動きをピタリと止めた。
意味深な態度が、ライザの心の奥底にある物を理解していると言わんばかりだ。
ーー冗談じゃない、どうして私が第2王子に理解されなくてはいけないと言うのか。
「貴方に、関係はないでしょう。」
「いいや。あるよ。
だって、ルイス・ネヴァキエルとの婚約がいつか無くなるものであるのなら、そのタイミングは今だ。
その婚約を、此処で無くすべきだ。」
「それは…、私とルイスの問題です。第2王子に関係無い事ですよね?」
「ライザ、君はもう、気付いている筈だ。
最初から知っていた。
いつか終わりが来る事を。
特に、今の彼は悪役令息では無い。
清廉潔白にして、将来有望な若者だ。
気の毒だが君とはー…違う人生を行く。」
「だから何だと言うのですか?
それが第2王子である貴方と、関係がございますか?」
「君に似合いなのは、第2王子であるこの僕だ。違うか?」
ひらり、と。2人の間に音もなく花弁が落ちても、瞬き一つも許されない程に確信を得て王手をかけてこようとする第2王子のこの言動…ーー。
ーーぁあ、この王子が先程から含んだ態度をしているのは、やはりそう言う事だったのだ。
先程から感じていたこの違和感。
彼は、十中八九知っている。
私の、前世を。
「……。私は、前世の事はゲームの事しか話しておりませんが?」
「この世界はファンタジーの世界だよ?しかも僕は曲がりなりにも王子だからね。
少々大変だけど、他人の記憶を覗き見る術は幾つかあるさ。」
「それは、私に対する脅しですか?」
「まさか!
僕はね、君に最高のタイミングで、最良の提案をしに来ただけだよ。」
「……。」
「このまま行くと、ヒロインであるイリンは第2王子ルートだ。
けれど、ライザが僕と婚約し、ルイス・ネヴァキエルとイリンの接触を増やしたらどうだろうか?
賢い君なら、わかるだろう?」
「…。」
「此処が引き際だと、教えてあげに来たんだ。
君は分かっている筈だ。」
「……。」
「裁かれなかったからと言って、犯した罪は消えはしないと言う事を。」
伯爵令嬢の邸宅らしい、まるでロイ○ルファミリーが住んでいるかの如く、白を基調とした素敵な邸宅は、物語のヒロインに相応しく可憐な華々が咲き誇る温室庭園があり、お茶会は行われた。
其処へ突如現れた予想だにしていなかった人物に、ライザは暫く無言を貫いた。
深緑の陰りの合間から差し込む光に、黄金色の髪を煌々とさせながら、足を組み、口元には怪し気な弧を描く。
値踏みする視線を前に、ライザはなるべく涼しい顔をして、目の前の人物は眼中にないとばかりに紅茶の表面をただ見つめていた。
イリンから第2王子が気になっているのだとカミングアウトを受けたかと思ったら、突然お茶会に第2王子がイリンの友人として、「やぁ。」とか言いながら参戦してきた。
そして何故か、用事を思い出したとイリンが述べると、颯爽と退出してしまった。
これにより、第2王子とライザの2人きりになってしまい、現在にいたる。
実の兄からもサイコパス王子と言わしめる第2王子、ウルクを前に、ライザは動揺を見せない様、背筋を伸ばして毅然としていた。
そんな状況で話を切り出したのは、ウルクからであった。
「こうして話すのは、久しぶりだね?」
「ーーどう言うつもりですか?」
飄々とした態度のウルクに、苛立ちを滲ませた返答になってしまったが、それはいたって仕方のない事だった。
「どう言うつもりって?」
「惚けないでください、私は、あれ程言いましたよね?
貴方だけは…第2王子だけはヒロインに近寄ってはならないと。」
「僕は攻略対象者だ。ヒロインが僕に惹かれて、僕がヒロインに惹かれるのは仕方がないと思うけど?」
そう言いながら、ウルクはクスクスと面白そうに笑っている。
もし、ウルクが純粋にヒロインであるイリンに惹かれていると言うのならば、仕方ないと思えるかも知れないけれど、彼は明らかに楽しんでいた。
「何を、考えているのですか?」
「何も。そんなに嫌なら前に提案したように、ライザが僕の婚約者になれば良いだろ?」
やれやれ全く我儘なご令嬢だ。と言わんばかりに、こちらを小馬鹿にした様な溜息をわざとらしく吐き、巫山戯た事をポンと漏らしてくるお顔立ちの宜しい王子様に
手元の紅茶をうっかり掛けてしまう所を堪えたのは、やはり腐っても相手がこの国の王子様だからに他ならなかった。
「…で、今日のこのお茶会は何ですか?急にヒロインから相談がしたいって私に言ってきたのは、あん…第2王子のためでしょう?」
「ーーだってさ。
こうでもしないと、学園では皇太子やルイスやらに阻まれて落ち着いて話なんか出来ないだろ?
僕は同じ前世の世界を知る仲間として、ライザと仲良くしたいだけなのにさ。」
「戯言…お戯れはよしてください殿下。私は約束事を初っ端から破る殿方とは仲良くなれないのですが?」
「あははっ。戯れではないよ。僕と君はなかなかお似合いだと思うよ。」
「あら嫌ですわ。何を根拠にそんな事を?」
「では問おう。
君は、ルイス・ネヴァキエルとこのままの関係を続ける気はあるのか?」
こちらを見透かしたように、瞳を細めて小首を傾げるウルクに、ライザは動きをピタリと止めた。
意味深な態度が、ライザの心の奥底にある物を理解していると言わんばかりだ。
ーー冗談じゃない、どうして私が第2王子に理解されなくてはいけないと言うのか。
「貴方に、関係はないでしょう。」
「いいや。あるよ。
だって、ルイス・ネヴァキエルとの婚約がいつか無くなるものであるのなら、そのタイミングは今だ。
その婚約を、此処で無くすべきだ。」
「それは…、私とルイスの問題です。第2王子に関係無い事ですよね?」
「ライザ、君はもう、気付いている筈だ。
最初から知っていた。
いつか終わりが来る事を。
特に、今の彼は悪役令息では無い。
清廉潔白にして、将来有望な若者だ。
気の毒だが君とはー…違う人生を行く。」
「だから何だと言うのですか?
それが第2王子である貴方と、関係がございますか?」
「君に似合いなのは、第2王子であるこの僕だ。違うか?」
ひらり、と。2人の間に音もなく花弁が落ちても、瞬き一つも許されない程に確信を得て王手をかけてこようとする第2王子のこの言動…ーー。
ーーぁあ、この王子が先程から含んだ態度をしているのは、やはりそう言う事だったのだ。
先程から感じていたこの違和感。
彼は、十中八九知っている。
私の、前世を。
「……。私は、前世の事はゲームの事しか話しておりませんが?」
「この世界はファンタジーの世界だよ?しかも僕は曲がりなりにも王子だからね。
少々大変だけど、他人の記憶を覗き見る術は幾つかあるさ。」
「それは、私に対する脅しですか?」
「まさか!
僕はね、君に最高のタイミングで、最良の提案をしに来ただけだよ。」
「……。」
「このまま行くと、ヒロインであるイリンは第2王子ルートだ。
けれど、ライザが僕と婚約し、ルイス・ネヴァキエルとイリンの接触を増やしたらどうだろうか?
賢い君なら、わかるだろう?」
「…。」
「此処が引き際だと、教えてあげに来たんだ。
君は分かっている筈だ。」
「……。」
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