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第3章
大司教と対面1
しおりを挟む皇妃は皇宮と神殿の交流を図ると言う重要な公務がある。
皇后となる異世界の聖女が訪れた時のことを考えると、同じ夫を持つ妻として皇后の補佐をする皇妃が、神殿と友好な関係を築いていた方が他方面に都合が良いからだそうな。
いつ訪れるかもわからない異世界の聖女を何時でも迎えられるように、これだけはどの時代も変わることのない重要かつ不可侵の公務となっていた。
とはいえ、初めは簡単な食事会のみらしい。これは私がこの任に着くのは初めてだからこその配慮だった。
皇妃教育をしていた皇太子妃時代は、カルロを皇帝にさせる気が無かった前皇妃の配慮(?)により、神殿の偉い方々と話すのは初めてである。
今日は大司教と名乗る中年の男が、テリアの前に座り、食事をすることになった。
食事をする相手は日によって違うようで、位の高い人から低い人の順番でローテーションになっているのだとか。
そんな話、前皇妃から全く聞いていなかった。
本当は皇妃から皇太子妃に伝承してゆくそうなのだが、皇妃となった経緯が特殊なだけに、事情を知る神殿は私が無知でも何の咎め立てもされなかった。
大司教曰く、これは、親睦を深める意味もあるのだとか。暫く談笑をした後に、神殿でしか知らない聖女の話を聞いていた。
資料館もあると言うので、今後何かの役に立つかもしれないので、見ておこうかなと考えていた。
「実は、私には皇妃様と同い年の姪がおりましてな」
「そうなんですね」
「ぇえ。兄の子で、良く私の家に遊びに来るのですよ。ですから、皇妃様は姪の様にも思えましてなぁ、どうぞ楽にしてください」
大司教の目と口がニッコリと笑うので、テリアも合わせる様に、ニ…ニコッとぎこちない笑で返した。
神殿のお偉いさん相手に楽には出来無いけれども、感じの良さそうな人…なのかもしれない。
「姪御様は、シスターなのですか?」
「いいえ、貴族令嬢です。兄は宮殿で財務大臣をやっております」
なんたる壮々たる親戚の顔ぶれ…1人は国の大臣で、1人は神殿の大司教……。
本来であればそんな所の令嬢が、カルロの皇妃として選ばれていたんだろうな。
ん?財務大臣と言うと…もしかしなくても。
「お兄様って、もしかしてケスラー公爵ですか?」
「そうです、姪はリリィ・ケスラー。第2皇子が生まれる前は、カルロ陛下の婚約者最有力候補でございました」
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