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第2章
本殿での初夜3
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顔を覗きこんで問いかけてみれば、カルロはバツが悪いと思ったのか視線を背ける。
返答もなく訪れた静寂は、テリアからの質問への肯定を表しているように感じられた。
「ー・・あのね。怒らないで最後まで私の話を聞いて欲しいの」
「・・・・」
「裏でコソコソ動いて悪かったと思っているわ」
カルロの肩がビクりと揺れた。そして至近距離だからこそわかる程僅かだけ、動揺の色が見てとれた。
やはりカルロはあの件について怒っていたのだ。
「だけど、今回の事は私だけじゃなくてカルロ陛下だって悪いのよ?」
こう言えば、機嫌が悪くなる事は想像がついた。
それでも、私が裏でコソコソ動いてテンペル公爵令嬢とのトキメキメモリアル計画を企てたのは、いつまで経ってもカルロが皇妃の後任選びを後回しにして続けたからだ。
分かって欲しい、あの時これより他に方法が思いつかなかった事を。
まさかあんなにも怒らせてしまう程嫌なことだとは思わなかったのだ。
「わかっている。
俺は今まで、現状に甘んじて何もして来なかった」
カルロの反応を色々と考えていたのだけれど。あっさり受け入れる言葉を口にして来たので肩透かしを食らった気分だ。
ーーともかく、思いの外素直に分かってくれて良かった。
「これからは、(皇妃の後任選びに)ちゃんと向き合ってくれる?」
「ぁあ。もっと近くに居た方が歩み寄れると思ったから。
おまえに本殿へ来いと言ったんだ」
私にじっくりと相談しながら後任選びを進めたかったのね。
この件でそんなに頼りにされていたなんて気付かなかった。でも、考えてみれば不思議な事ではない。
生涯の伴侶とは大事なものだ。それが皇妃ともなると、選定は特に慎重にしなければならない。きっと、釣り書きや条件をチラリと見ただけでは決められないものなんだ。
信用出来る家臣達ばかりなら、色んな都合を加味した上で条件の良い相手を見繕って貰えるので後任の選定は捗るだろうけれど、つい最近までかなり立場の弱かったカルロが信用出来る人に皇妃選びを丸投げして任せるというのは難しいだろう。
今は他にも力を入れなければならない事も沢山あって、数少ない信用出来る人員はそちらに割きたいだろうし・・そうなると必然的に、後任皇妃選びの相談で頼れるのは、どの派閥にも属しておらず、何の利害関係も発生しないこの私だけだ。じっくり私に相談して決めたかったに違いない。
そうとも知らず、私は本殿へ来るのを拒絶していた。あまり近くにいすぎても情が沸いてしまう気がしたから。
カルロなりに考えがあって本殿へと呼ばれていたのに・・私が拒否をしていたから話を前に進めたくても、出来なかったのね…。
それならそうと、早く言ってくれたら良かったのに。
「・・私も今回は悪かったわ。
でも、そう言う事なら早く言ってくれたら、もっと早く此処へ来たのに…」
「…ー本当か?」
「当たり前でしょ。私の問題でもあるのよ?」
「おまえは、俺がちゃんと向き合うのならアネス卿を切れるのか?」
ん?
「何で此処で子爵の話?」
「何でって…まさかー…
アネス卿との愛人関係を俺に 黙認しろと?」
待って。
何でそんな傷ついた顔するのよ。さっきまで上手くまとまりかけていたのに。
「ごめん、待って。
どこからそんな話になったんだっけ?」
「おまえが、言ったんじゃないか。
アネス卿がおまえの愛人だと」
「そうだけど。
それはごめん、嘘なんだよね」
「は?」
「カルロ陛下の怒ってる原因が私と子爵で悪巧みしていると勘違いしてるからだと思って…
え、もしかして。
アネス子爵が私の愛人だと思ってたから、それであんなに怒っていたと言うの?」
返答もなく訪れた静寂は、テリアからの質問への肯定を表しているように感じられた。
「ー・・あのね。怒らないで最後まで私の話を聞いて欲しいの」
「・・・・」
「裏でコソコソ動いて悪かったと思っているわ」
カルロの肩がビクりと揺れた。そして至近距離だからこそわかる程僅かだけ、動揺の色が見てとれた。
やはりカルロはあの件について怒っていたのだ。
「だけど、今回の事は私だけじゃなくてカルロ陛下だって悪いのよ?」
こう言えば、機嫌が悪くなる事は想像がついた。
それでも、私が裏でコソコソ動いてテンペル公爵令嬢とのトキメキメモリアル計画を企てたのは、いつまで経ってもカルロが皇妃の後任選びを後回しにして続けたからだ。
分かって欲しい、あの時これより他に方法が思いつかなかった事を。
まさかあんなにも怒らせてしまう程嫌なことだとは思わなかったのだ。
「わかっている。
俺は今まで、現状に甘んじて何もして来なかった」
カルロの反応を色々と考えていたのだけれど。あっさり受け入れる言葉を口にして来たので肩透かしを食らった気分だ。
ーーともかく、思いの外素直に分かってくれて良かった。
「これからは、(皇妃の後任選びに)ちゃんと向き合ってくれる?」
「ぁあ。もっと近くに居た方が歩み寄れると思ったから。
おまえに本殿へ来いと言ったんだ」
私にじっくりと相談しながら後任選びを進めたかったのね。
この件でそんなに頼りにされていたなんて気付かなかった。でも、考えてみれば不思議な事ではない。
生涯の伴侶とは大事なものだ。それが皇妃ともなると、選定は特に慎重にしなければならない。きっと、釣り書きや条件をチラリと見ただけでは決められないものなんだ。
信用出来る家臣達ばかりなら、色んな都合を加味した上で条件の良い相手を見繕って貰えるので後任の選定は捗るだろうけれど、つい最近までかなり立場の弱かったカルロが信用出来る人に皇妃選びを丸投げして任せるというのは難しいだろう。
今は他にも力を入れなければならない事も沢山あって、数少ない信用出来る人員はそちらに割きたいだろうし・・そうなると必然的に、後任皇妃選びの相談で頼れるのは、どの派閥にも属しておらず、何の利害関係も発生しないこの私だけだ。じっくり私に相談して決めたかったに違いない。
そうとも知らず、私は本殿へ来るのを拒絶していた。あまり近くにいすぎても情が沸いてしまう気がしたから。
カルロなりに考えがあって本殿へと呼ばれていたのに・・私が拒否をしていたから話を前に進めたくても、出来なかったのね…。
それならそうと、早く言ってくれたら良かったのに。
「・・私も今回は悪かったわ。
でも、そう言う事なら早く言ってくれたら、もっと早く此処へ来たのに…」
「…ー本当か?」
「当たり前でしょ。私の問題でもあるのよ?」
「おまえは、俺がちゃんと向き合うのならアネス卿を切れるのか?」
ん?
「何で此処で子爵の話?」
「何でって…まさかー…
アネス卿との愛人関係を俺に 黙認しろと?」
待って。
何でそんな傷ついた顔するのよ。さっきまで上手くまとまりかけていたのに。
「ごめん、待って。
どこからそんな話になったんだっけ?」
「おまえが、言ったんじゃないか。
アネス卿がおまえの愛人だと」
「そうだけど。
それはごめん、嘘なんだよね」
「は?」
「カルロ陛下の怒ってる原因が私と子爵で悪巧みしていると勘違いしてるからだと思って…
え、もしかして。
アネス子爵が私の愛人だと思ってたから、それであんなに怒っていたと言うの?」
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